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第一三共の抗TROP2 ADC・ダトロウェイ点滴静注用など新薬10製品を審議へ 12月6日の第二部会で

公開日時 2024/11/25 04:48
厚生労働省は12月6日に薬事審議会・医薬品第二部会を開き、HR陽性かつHER2陰性乳がんを対象疾患とする第一三共の抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)・ダトロウェイ点滴静注用(一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え))など新薬10製品を審議する。この中には、濾胞性リンパ腫に対する中外製薬の抗CD20/CD3二重特異性抗体・ルンスミオ点滴静注(モスネツズマブ(遺伝子組換え))や、多発性骨髄腫に対するヤンセンファーマの抗BCMA/CD3二重特異性抗体・テクベイリ皮下注(テクリスタマブ(遺伝子組換え))が含まれる。

また、審議品目には、アフリカを中心に感染が拡大しているエムポックス(サル痘)などに対する治療薬である日本バイオテクノファーマのテポックスカプセル(テコビリマト水和物)もある。日本でも散発的な患者の発生が報告されており、「感染症対策上、必要ということ」(厚労省担当者)で、この日の部会で審議することになった。

報告品目は4製品で、小野薬品のオプジーボに根治切除不能な尿路上皮がんの効能を追加することや、MSDのキイトルーダに進行・再発の子宮体がん(1次治療)を追加することなどがある。

【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

エフルエルダ筋注(高用量インフルエンザHAワクチン、サノフィ):「インフルエンザの予防」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

高用量4価インフルエンザワクチン(QIV-HD)。今回の申請は65歳以上の米国及びカナダの健康成人を対象とした海外第3b/4相のFIM12試験、60歳以上の日本人成人を対象とした国内第3相QHD00010試験の結果に基づく。

高齢者では、主として免疫老化、フレイル及び併存する合併症の増加により、標準用量インフルエンザワクチンに対する免疫応答は、健康な若年成人と比較して十分ではない。ワクチン中の1株当たりの抗原量を増やすことは高齢者の予防効果を高める方法のひとつとなるため、60歳以上の成人を対象として、1株当たり標準用量の約4倍(60μg)の抗原量を含むQIV-HDが開発された。

ハイキュービア10%皮下注5セット5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注)/ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、武田薬品):「無又は低ガンマグロブリン血症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

皮下注用人免疫グロブリン10%製剤(SCIG10%)および遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼPH20製剤(rHuPH20)から構成される皮下注用の組み合わせ製剤。2バイアルが同梱されている。rHuPH20を投与し皮下組織の透過性を一時的に高め、その後同じ部位にSCIG10%を投与することで、SCIG10%の拡散と吸収が促進され、大量投与が可能になる。大量投与により投与頻度が従来の皮下注用製品に比べて少ない3週又は4週間隔となり、患者の負担の軽減が期待される。

現在、日本で承認されている無又は低ガンマグロブリン血症患者のための皮下投与製剤は週1回または2週間に1回の投与が必要で、静脈投与製剤と比較して頻回の投与が必要になっている。

ヒムペブジ皮下注150mgペン(マルスタシマブ(遺伝子組換え)、ファイザー):「血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

抗TFPIモノクローナル抗体。外因系血液凝固カスケードの主要な阻害因子である組織因子経路インヒビター(TFPI)を阻害する。血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビター保有または非保有の血友病Aまたは血友病B患者における出血傾向を抑制するために定期投与する、薬剤調製が不要な固定用量の皮下投与製剤として開発された。

▽①ファセンラ皮下注30mgシリンジ、②同皮下注30mgペン(ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」を対象疾患とする①新効能・新用量医薬品、②新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。

抗IL-5受容体α抗体。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は稀な免疫介在性血管炎で、複数の臓器の障害を引き起こす可能性があり、治療を行わないと死亡に至ることもある。

既承認の30mgシリンジ製剤は現在、「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」を効能・効果としており、EGPAが承認されれば、2つ目の適応取得となる。30mgペン製剤は、承認されれば、30mgシリンジ製剤と同様の適応を持つことになる。

テポックスカプセル200mg(テコビリマト水和物、日本バイオテクノファーマ):「痘そう、エムポックス、牛痘、痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

ウイルス由来p37蛋白を標的としてエンベロープ形成を阻害する。WHOは今年8月、エムポックス(サル痘)について、コンゴをはじめとするおよびアフリカの多くの国で急増しているのを受け、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。日本でも散発的な患者の発生が報告されており、厚労省は国内の感染対策上の必要性からテポックスを部会で審議することになったとしている。

エムポックスは、水ぶくれを伴う発疹に加え、多くの場合、発熱、寒気、倦怠感、リンパ節の腫れなどの症状が現れる。多くの場合2~4週間ほど症状が続いた後、自然に回復するが、稀に重症化する。潜伏期間は通常7~14日(短い場合5日、長い場合21日のこともある)とされている。

また、テポックスの対象疾患の天然痘(痘そう)は、WHOにより撲滅が宣言されている。ただ、日本バイオテクノファーマは、日本では1976年に定期種痘が中止されたとした上で、「現在では50歳未満の多くの方が天然痘に対して免疫を持っておらず、今後、生物テロ等による天然痘ウイルスの再出現によるアウトブレイクが発生した場合には、抗ウイルス療法を含む医学的対策が極めて重要」だとテポックスを市場投入する意義を説明している。

カビゲイル注射液300mg(シパビバルト(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「SARS-CoV-2による感染症の発症抑制」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

COVID-19に対する長時間作用型モノクローナル抗体(LAAB)。スパイクタンパク質と宿主受容体ACE2との相互作用を中和することで、オミクロン株や従来株に対して幅広く効果を発揮するようデザインされている。SARS-CoV-2感染後の回復期患者により提供されたB細胞に由来する。

アストラゼネカは免疫不全患者に対するCOVID-19の曝露前発症抑制を目的として開発した。今回の申請は第3相SUPERNOVA試験の結果に基づき、被験者の免疫不全患者集団には血液がん患者、臓器移植レシピエント、透析を要する末期腎不全患者、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者、免疫抑制剤を使用中の患者――が含まれる。

ダトロウェイ点滴静注用100mg(ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共):「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。がん細胞の細胞膜上に高発現する抗原TROP2と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体と薬物(ペイロード)をリンカーを介して結合したADC。ペイロードはトポイソメラーゼI阻害薬で、膜透過性を有するという特性により周辺のがん細胞も殺傷する。第一三共はホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の転移性乳がんに係る2次/3次治療を対象疾患に承認申請した。

抗TROP2 ADCとしては、ギリアド・サイエンシズのトロデルビ点滴静注用(一般名:サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え))が24年9月に承認されている。ダトロウェイは承認されれば抗TROP2 ADCとして2番手となる。なお、トロデルビの適応はいわゆるトリプルネガティブ乳がん(HR陰性かつHER2陰性)となっている。

ルンスミオ点滴静注1mg、同30mg(モスネツズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

B細胞上のCD20とT細胞上のCD3を標的とするように設計されたCD20/CD3に対するT細胞誘導バイスペシフィック抗体(抗CD20/CD3二重特異性抗体)。細胞傷害性T細胞を介した免疫を活性化し、CD20を有する腫瘍細胞に対して抗腫瘍効果をもたらすことが期待されている。

中外製薬は過去に2レジメン以上の全身療法を受けたことがある再発又は難治性の濾胞性リンパ腫を対象疾患に承認申請した。

イムデトラ点滴静注用1mg、同10mg(タルラタマブ(遺伝子組換え)、アムジェン):「がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。

半減期延長型BiTE(二重特異性T細胞誘導)免疫腫瘍療法。T細胞上のCD3と小細胞肺がん(SCLC)細胞上のデルタ様リガンド3(DLL3)の両方に結合することで、患者自身のT細胞をSCLC細胞の近くに誘導する。これにより、免疫シナプスが形成され、がん細胞が溶解される。約85%~96%の患者はSCLC細胞の表面にDLL3を発現しており、正常細胞での発現はごくわずかであることから、DLL3はSCLC患者にとって有望な治療標的とされている。

テクベイリ皮下注153mg、同皮下注30mg(テクリスタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。

B細胞成熟抗原(BCMA)及びCD3を標的とするT細胞リダイレクト二重特異性抗体(抗BCMA/CD3二重特異性抗体)。骨髄腫細胞のBCMAおよびT細胞のCD3に結合し、T細胞による細胞傷害性を活性化することで骨髄腫細胞の細胞死を誘導する。

抗BCMA/CD3二重特異性抗体としてはファイザーのエルレフィオ皮下注(一般名:エルラナタマブ(遺伝子組換え))が「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果に24年3月に承認されている。テクベイリは、承認されれば、抗BCMA/CD3二重特異性抗体として2番手となる。

【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg、同点滴静注120mg、同点滴静注240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「根治切除不能な尿路上皮がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。

ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。今回、尿路上皮がんの1次治療(化学療法を併用)の効能追加を報告する。現在、尿路上皮がんに係る適応として、「尿路上皮癌における術後補助療法」を持っている。

ランダ注10mg/20mL、同注25mg/50mL、同注50mg/100mL(シスプラチン、日本化薬):「尿路上皮がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。

報告予定品目のオプジーボと併用するための効能追加。

ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「YD」(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続2]、陽進堂):「既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、乾癬性関節炎」を対象疾患とするバイオ後続品。

ステラーラのバイオシミラー(BS)。承認されれば、富士製薬のステラーラBSに続く2剤目となる。

キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「進行・再発の子宮体がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。今回、子宮体がんの1次治療(化学療法を併用)の効能追加を報告する。現在、子宮体がんに係る効能・効果として「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体がん」が承認されている。これはレンビマと併用し、2次治療以降の選択肢となっている。
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