厚労省 デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療薬・エレビジスなど2製品を承認
公開日時 2025/05/14 04:48
厚生労働省は5月13日、中外製薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する遺伝子治療薬・エレビジス点滴静注(一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク)など再生医療等製品2製品を承認した。エレビジスの投与対象はDMDのうち、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な患者で、条件及び期限付承認された。期限は3年。
もう1製品は、ジャパン・ティッシュエンジニアリングの自家培養軟骨・ジャックで、「変形性膝関節症(膝OA)」の適応拡大となる。ジャックの膝OAの投与対象は、運動療法等の保存療法により臨床症状が改善せず、かつ軟骨欠損面積が2cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限ることとなる。
【承認品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽エレビジス点滴静注(デランジストロゲン モキセパルボベク、中外製薬):「デュシェンヌ型筋ジストロフィー。ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。▽抗AAVrh74抗体が陰性の患者▽歩行可能な患者▽3歳以上8歳未満の患者」を効能・効果又は性能とする再生医療等製品。希少疾病用再生医療等製品。条件及び期限付承認(期限は3年)。
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースの遺伝子治療薬。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、筋肉にかかわるタンパク質であるジストロフィンの産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する。エレビジスは、標的とする骨格筋、呼吸筋及び心筋において、短縮型ジストロフィンの発現を介し、DMDの原因に働きかけるようデザインされている。静脈内に単回投与する。再投与はしない。
投与対象は、DMDのうち、エクソン8及び/又はエクソン9の一部又は全体の欠失変異を有さず、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な患者。投与前に実施する抗AAVrh74抗体陰性の確認には、エクルーシス試薬Anti-AAVrh74が使用できる。同試薬はロシュ・ダイアグノスティックスがエレビジスのDMDの適応判定を補助するコンパニオン診断薬として、3月5日に承認を取得している。
今回、条件及び期限付承認に該当すると判断された(期限3年)。条件及び期限付承認後に改めて行う製造販売承認申請までの期間中は、長期の有効性及び安全性の確認を目的とした臨床試験並びに使用する全症例を対象とした製造販売後調査により製造販売後承認条件評価を行う。
海外でエレビジスは、米国などで承認されている。なお、米国では、第3相EMBARK試験等の結果に基づき、歩行状態に関係なく4歳以上の患者に投与可能(歩行可能はフル承認、歩行不能は迅速承認)となっている。
▽ジャック(ヒト(自己)軟骨由来組織、ジャパン・ティッシュエンジニアリング):「変形性膝関節症に対する臨床症状の改善。ただし、運動療法等の保存療法により臨床症状が改善せず、かつ軟骨欠損面積が2cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る」を効能・効果又は性能とする再生医療等製品。効能追加。再審査期間は4年。
自家培養軟骨。国内で実施された変形性膝関節症(膝OA)患者に対するヒアルロン酸ナトリウム製剤による関節内注射治療との比較臨床試験により、培養軟骨移植によって膝OAの軟骨欠損部が硝子軟骨様組織で修復され、膝OAの臨床症状が改善したことが確認された。
ジャックはこれまでに「膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和。ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る」を効能、効果又は性能で承認されている。