卸連・会員社24年度業績 営業利益率は1.11% 販管費率は再び5%超え、人件費や外部委託費が増加
公開日時 2025/09/26 04:51

日本医薬品卸売業連合会(卸連)は9月25日、会員企業の2024年度経営概況の速報値を発表した。営業利益率は前年度から0.11ポイント改善して1.11%となった。新型コロナワクチン(一般流通品)や抗腫瘍剤の売上の伸長、粘り強い価格交渉で利益を押し上げた。ただ、販管費は3.34%伸び、販管費率は再び5%を超えた。政府の賃上げ要請や物価高騰などを背景に、会員企業の従業員数は引き続き減ったものの人件費は増え、配送などの外部委託費も増えたことが大きく影響した。
◎宮田会長 「営業利益率は何とか1%を確保した状況」 会員企業の「粘り強い価格交渉」で
卸連の宮田浩美会長は同日の会見で、医薬品卸業界の販管費率や営業利益率について所見を述べた。
24年度の販管費率は前年度比0.05ポイント増の5.04%となった。宮田会長は、会員企業従業員数は17年度から減少傾向にあり、効率化できるところは「かなり進めている」なかで、24年度は▽物価・エネルギー価格の上昇、▽賃金アップ、▽配送などパートナー企業の賃上げを含む外部委託費の増加――といったコスト増の影響が大きく、「我々を取り巻く環境は大変厳しい状況にある」との認識を示した。24年度はトップライン(売上高)は伸びたものの、コストも増え、「(販管費率は)やっと23年度に5%を切ったと思ったが、24年度はやはり5%を超えてしまった」と振り返った。
それでも24年度の営業利益率は前年度比0.11ポイント改善の1.11%となった。宮田会長は、薬価改定や賃上げ・物価高騰といった減益要因を、「各企業が大変な努力をして、粘り強い価格交渉をしていただいた」ことでカバーし、「営業利益率は何とか1%を確保した状況」と強調した。“粘り強い価格交渉”の証左として、25年度の平均乖離率(24年9月取引分)が過去最少の約5.2%だったことを挙げた。
さらに宮田会長は、医薬品卸では、コロナ以前となる19年度頃までは営業外収益に計上していた「情報提供料」を、現在は売上総利益に含める会計処理を行っていると説明。営業利益率に与えるインパクトは「0.3~0.4%ある」とし、「(営業利益率は)実際には1%まで回復していない。これが今いまの医薬品卸の営業利益率の実情」とも訴えた。
◎総売上高は2.35%増 売上総利益率6.15%、0.16ポイント上昇
調査は25年4月に、直近の決算数値(25年3月期など)を対象として、会員会社68社に対し実施した。回答社数は52社、回答率は76.47%。
52社の24年度の総売上高は前年度比2.35%増の11兆4547億円で、このうち医療用医薬品売上は9兆7475億円だった。薬価改定の影響はあったが、新型コロナワクチン(一般流通品)や抗腫瘍剤の伸長などにより増収となった。
売上総利益率は6.15%で、前年度から0.16ポイント上昇した。卸連は、「メーカーのアロワンスやリベートが減少したものの、流通改善に向けた医療機関との粘り強い価格交渉を続けたことが主な要因」と説明している。
◎月商ベースの販売生産性 初めて2000万円超え 売上増と従業員減少が要因
販管費は3.34%伸び、販管費率は0.05ポイント増の5.04%となった。ウエートの大きい人件費は、従業員数が1.89%減となるなか、人件費は0.42%伸びた。さらに、“物流の2024問題”によるコスト上昇が、医薬品卸に価格転嫁され、配送などの外部委託費が増えた。これも24年度の販管費の上昇要因となった。
月商ベースの販売生産性は4.42%増の2009万円となり、初めて2000万円を超えた。販売生産性は4年連続の増加。卸連は、「売上増の一方で、従業員数が減少したため」と分析している。