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厚労省 多発性骨髄腫に対する初のADC・ブーレンレップなど新薬2製品承認 8製品の適応追加等承認も

公開日時 2025/05/20 04:49
厚生労働省は5月19日、新有効成分含有医薬品2製品および適応追加など8製品を承認した。このうち新有効成分含有医薬品は、グラクソ・スミスクライン(GSK)の再発・難治性多発性骨髄腫(MM)に対する国内初の抗体薬物複合体(ADC)・ブーレンレップ点滴静注用と、モデルナ・ジャパンのRSウイルスRNAワクチン・エムレスビア筋注となる。

適応追加など8製品の中には、ノバルティス ファーマのセムブリックス錠の慢性骨髄性白血病(CML)1次治療の追加や、MSDのキイトルーダ点滴静注の悪性胸膜中皮腫の追加などが含まれる。

承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。

バビースモ硝子体内注射液120mg/mL、同硝子体内注射用キット120mg/mL(ファリシマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「脈絡膜新生血管を伴う網膜色素線条」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類131。

抗VEGF/抗Ang-2二重特異性抗体。網膜色素線条は、網膜の一部が断裂し、眼底に特徴的な線状の色調変化(色素線条)が見られる疾患。脈絡膜新生血管が黄斑部に及んだ場合には、無治療では視力予後が不良。バビースモは網膜色素線条に対する日本で初めて薬事承認を取得した治療薬となる。

スリンダ錠28(ドロスピレノン、あすか製薬):「避妊」を効能・効果とする新効能・新用量・その他の医薬品。再審査期間は4年。薬効分類254。

単剤型プロゲスチン(黄体ホルモン)製剤(POP)。現在、国内では、合成エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチンの2種類の女性ホルモンが含有された混合型経口避妊薬(COC)が使用されている。COCには、頻度は少ないものの、エストロゲンに由来する血栓症のリスクがあり、POPには血栓症リスク低減が期待されている。

あすか製薬では、25年6月下旬の発売を予定している。

ファビハルタカプセル200mg(イプタコパン塩酸塩水和物、ノバルティスファーマ):「C3腎症」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類399。

補体B因子阻害剤。適応とするC3腎症は、免疫系の一部である補体第二経路の過剰活性化により、腎糸球体にC3というたんぱく質が沈着し、炎症および糸球体損傷が誘発され、たんぱく尿、血尿および腎機能低下が引き起こされる。非常に稀な腎疾患であり、主に若年成人で診断され、腎不全に進行することが多い。

ファビハルタは、C3腎症に対して初めて承認された治療薬で、C3腎症の根本原因と考えられる補体第二経路の過剰活性化を阻害する。

ノバルティス ファーマのジョンポール・プリシーノ代表取締役社長は「今回の承認はC3腎症における治療パラダイムを大きく転換し、患者さんの人生に希望をもたらすだけでなく、当社の腎臓領域における画期的なパイプラインの展開にとって歴史的な第一歩となる」と話している。

ブーレンレップ点滴静注用100mg(ベランタマブマホドチン(遺伝子組換え)、グラクソ・スミスクライン):「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。

抗BCMA抗体薬物複合体(ADC)。再発・難治性の多発性骨髄腫(MM)に対する国内初のADCとなる。

2つの第3相試験(DREAMM-7、同-8)において、ブーレンレップの併用療法は標準治療と比較して無増悪生存期間(PFS)で統計学的有意差を示し、DREAMM-7試験では全生存期間(OS)の延長が認められている。両試験において眼に関する副作用発現時には投与間隔の延長や減量等を行い、治療中止率はいずれも約9%だった。

GSKのヘシャム・アブドラ氏(R&Dオンコロジー部門グローバルヘッド、シニアバイスプレジデント)は「患者さんは初回再発以降に、標準治療と比較して寛解および生存期間を延長するさらなる治療選択肢を必要とされている。ブーレンレップの併用療法は2つの第3相試験で示された優れた有効性に基づき、治療のあり方を変える可能性があり、専門医療機関と地域の医療機関の両方で治療を受けられるという利点がある」と話している。

タグリッソ錠40mg、同錠80mg(オシメルチニブメシル酸塩、アストラゼネカ):「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」を効能・効果とする新効能医薬品。薬効分類429。

第3世代EGFR阻害剤。非小細胞肺がん(NSCLC)患者の20~30%は診断時にステージ3であり、そのうち60~90%は切除不能とされている。ステージ3の切除不能NSCLC患者に対しては根治的化学放射線療法が標準治療となっているが、多くの患者で治療後に病勢進行が認められるという。

AZの大津智子取締役研究開発本部長は「今回の承認により、タグリッソは切除不能なステージ3のEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対して日本で初めて承認された分子標的薬となり、これまで化学放射線療法後、早期に進行を経験してきた患者さんに新たな標準治療を提供できるようになる」とコメントしている。

キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」を効能・効果とする新効能医薬品。薬効分類429。

抗PD-1抗体。悪性中皮腫は胸部、腹部、心臓、精巣など体の特定の部位を覆う膜に発生するがん。追加適応とする肺あるいは胸腔を覆う膜に発生する悪性胸膜中皮腫は、悪性中皮腫の中で最も多く、80~90%弱を占める。悪性中皮腫発生の主な原因としては、アスベスト(石綿)の曝露が知られている。

日本では、1950年代から70年代にかけての高度経済成長期にアスベストが大量に使用されており、アスベスト曝露開始から発症までの潜伏期間が25~50年とされていることから、日本における悪性中皮腫の発生ピークは2030年頃で、罹患者数は年間3000人に及ぶと予測されているという。

なお、国内で同じ抗PD-1抗体のオプジーボは、「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」および「悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)」の適応を持っている。

セムブリックス錠20mg、同錠40mg(アシミニブ塩酸塩、ノバルティス ファーマ):「慢性骨髄性白血病」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(令和14年3月27日まで)。薬効分類429。

ABLミリストイルポケット結合型阻害剤。これまで慢性骨髄性白血病(CML)3次治療での使用となっていたが、今回、未治療の患者に1次治療から使用できるようになる。国際共同第3相試験(J12301/ASC4FIRST試験)は、初発のCML成人患者を対象として、第二世代TKIを含む標準治療TKIと比較した初めての試験であり、初発のCMLの治療体系・実態を反映した対照群(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ)である医師選択TKIに対するセムブリックスの優越性が検証された。

今回の効能追加に伴い、用法・用量は40 mg 1日2回投与から、80 mg 1日1回投与に変更することが承認された。ノバルティス ファーマのジョンポール・プリシーノ代表取締役社長は「これにより、治療ラインを問わず、空腹時投与であるセムブリックスの利便性と治療アドヒランスの向上が期待される」と指摘している。

ライブリバント点滴静注350mg(アミバンタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余(令和14年9月23日まで)。薬効分類429。

EGFR及びMETを標的とする二重特異性抗体。EGFR-TKIによる治療後に増悪した患者に対する新たな治療選択肢を提供するもの。J&J Innovative Medicine Japanの關口修平代表取締役社長は「今回の承認取得により、ライブリバントは、ラズクルーズとの併用療法で、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんの1次治療としてだけではなく、化学療法との併用療法として、EGFR-TKI単剤による治療後のアンメットニーズに対しても治療選択肢をもたらすことができるようになる」としている。

エムレスビア筋注シリンジ(RSウイルスの融合前安定化F糖タンパク質をコードするmRNA、モデルナ・ジャパン):「RSウイルスによる感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類631。

RSウイルスRNAワクチン。60歳以上の成人を対象としたRSウイルスによる感染症の予防を目的とする。なお、国内では、RSVワクチンとして、既にGSKのアレックスビー、ファイザーのアブリスボが承認されており、いずれも60歳以上の者に対する適応を持っている。

モデルナにとって、エムレスビアは新型コロナに対するmRNAワクチン・スパイクバックスに続く2つ目の承認取得製品となる。

スパイクバックス筋注(SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードするmRNA、モデルナ・ジャパン):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。再審査期間は残余(令和11年5月20日まで)。薬効分類631。

mRNAワクチン。生後6カ月以上4歳以下を対象とした追加免疫に関する一変承認を取得したもの。同社では、これにより生後6カ月以上のあらゆる世代の方が接種歴の有無を問わず、スパイクバックスが接種可能になることで、COVID-19の発症および重症化リスクの軽減に貢献できるとしている。
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