報告品目・新キット製品26品目を官報告示 21日収載 ウゴービの4回分充填製剤、ステラーラBSなど
公開日時 2025/05/20 04:48
厚生労働省は5月20日、新剤形、新規格などの報告品目・新キット製品17成分26品目の薬価収載を官報告示した。21日に収載する。この中には陽進堂及びセルトリオン・ヘルスケア・ジャパンのステラーラBSがあるほか、ノボ ノルディスク ファーマの肥満症に対するGLP-1受容体作動薬・ウゴービ皮下注の新剤形で、週1回の投与に必要な薬液が4回分あらかじめ充填されている「ウゴービ皮下注MD」がある。東和薬品の週2回貼付タイプのアルツハイマー型認知症薬・リバルエンLAパッチもあり、リバルエンLAは有用性加算(II)(A=5%)が適用されて薬価は25.92mg1枚215.30円、51.84mg1枚329.00円となった。
◎カルケンス錠 消化管のpH条件に関わらず薬物溶出、「胃酸分泌抑制剤などとの併用可」
アストラゼネカ(AZ)の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)を対象とするBTK阻害薬・カルケンス錠100mgも収載される。
AZによると、現行のカルケンスのカプセル剤は、pH4を超える条件下では溶解性が低いことに関連して、国内添付文書では、▽PPIとの併用は可能な限り避けること、▽H2受容体拮抗剤及び制酸剤との併用では投与間隔を2時間以上あけて投与すること――が注意喚起されている。
一方、今回収載される錠剤は、消化管のpH条件に関わらず薬物が全て溶出するように改善した溶解性プロファイルを有するフィルムコーティング錠となる。このためAZは、「胃酸分泌抑制剤などとの併用が可能になり、患者と医師の選択肢が拡大」するとしている。なお、錠剤1錠の薬価は1万2921.90円で、1カプセルと同額。
5月21日付で収載される報告品目・新キット製品は以下の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類及び投与経路順に記載。
▽エブリスディ錠5mg(リスジプラム、中外製薬)
薬効分類:内119(その他の中枢神経系用薬)
効能・効果:脊髄性筋萎縮症
薬価:5mg1錠 7万3831.90円
補正加算等:新薬創出等加算
中枢神経系及び全身のSMNタンパクレベルを増加させるように創製されたSMN2スプライシング修飾薬。脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬で初の錠剤。現行のドライシロップは年齢や体重に関わらず服用可能だが、剤形追加となる錠剤は2歳以上かつ体重20kg以上のSMAの新たな選択肢となる。
▽メラトベル錠小児用1mg、同2mg(メラトニン、ノーベルファーマ)
薬効分類:内119(その他の中枢神経系用薬)
効能・効果:小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善
薬価:1mg1錠103.90円
2mg1錠155.90円
補正加算等:新薬創出等加算
メラトニン受容体作動性入眠改善薬。治療対象の小児期の神経発達症の一部の患者では、その特性として味覚・触覚過敏を有することがあり、現行の顆粒の性状が服薬拒否の要因となる場合がある。この課題に対応するため新剤形として錠剤を開発した。
▽カルケンス錠100mg(アカラブルチニブマレイン酸塩水和物、アストラゼネカ)
薬効分類:内429(その他の腫瘍用薬)
効能・効果:慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
薬価:100mg1錠 1万2921.90円
補正加算等:なし
第2世代選択的BTK阻害薬。現行のカプセル剤は、pH4を超える条件下では溶解性が低いことに関連して、国内添付文書では、プロトンポンプ阻害剤(PPI)との併用は可能な限り避けること、並びにH2受容体拮抗剤及び制酸剤との併用では投与間隔を2時間以上あけて投与することについて注意喚起している。アストラゼネカによると、血液がん患者の20~40%は、胃内pHを変化させる薬物の投与を受けていると推定されており、カルケンスカプセルの使用は制限されている。
今回追加する錠剤は、消化管のpH条件に関わらず薬物が全て溶出するように改善した溶解性プロファイルを有するアカラブルチニブマレイン酸塩水和物100mg(遊離塩基換算)フィルムコーティング錠となる。同社の大津智子研究開発本部長は、「がん患者さんは多剤併用する場合が多く、胃内pHを変化させる薬物も一般的に投与されている」とした上で、「カルケンス錠がPPI等の胃酸分泌抑制剤とともに服用できるようになったことは服薬レジメンの簡素化につながり、より多くのCLL/SLL患者さんに本剤によるベネフィットをもたらすことが期待できる」とコメントしている。
▽ラゲブリオ錠400mg(モルヌピラビル、MSD)
薬効分類:内625(抗ウイルス剤)
効能・効果:SARS-CoV-2による感染症
薬価:400mg1錠 4329.80円
補正加算等:新薬創出等加算
経口新型コロナ治療薬。現行のラゲブリオカプセル200mgに対し、今回は錠剤の剤形追加となり、カプセル剤と比べて大きさが小さい。また、1錠に含まれる有効成分が400mgと2倍量となっている。このため1回あたりの服用数を現在の4カプセルから2錠に減らすことができる。
▽アイリーア8mg硝子体内注射用キット114.3mg/mL(アフリベルセプト(遺伝子組換え)、バイエル薬品)
薬効分類:注131(眼科用剤)
効能・効果:中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫
薬価:8mg0.07mL1筒 14万6286円
補正加算等:なし
眼科用VEGF阻害薬。キット製剤の追加。
▽バビースモ硝子体内注射用キット120mg/mL(ファリシマブ(遺伝子組換え)、中外製薬)
薬効分類:注131(眼科用剤)
効能・効果:中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、脈絡膜新生血管を伴う網膜色素線条
薬価:6mg0.05mL1筒 13万1892円
補正加算等:なし
抗VEGF/抗Ang-2ヒト化二重特異性モノクローナル抗体。キット製剤の追加。
▽オンボー皮下注200mgオートインジェクター、同皮下注200mgシリンジ(ミリキズマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー)
薬効分類:注239(その他の消化器官用薬)
効能・効果:中等症から重症の活動期クローン病の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)
薬価:200mg2mL1キット 24万2888円
200mg2mL1筒24万2888円
補正加算等:新薬創出等加算
抗IL-23p19抗体。クローン病の適応追加に合わせて200mg製剤の新剤形が追加された。
▽ウゴービ皮下注0.25mgペン1.0MD、同皮下注0.5mgペン2.0MD、同皮下注1.0mgペン4.0MD、同皮下注1.7mgペン6.8MD、同皮下注2.4mgペン9.6MD(セマグルチド(遺伝子組換え)、ノボ ノルディスク ファーマ)
薬効分類:注249(その他のホルモン剤)
効能・効果:肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上
薬価:
1mg1.5mL1キット 6525円
2mg1.5mL1キット 1万1477円
4mg3mL1キット 2万703円
6.8mg3mL1キット 3万2853円
9.6mg3mL1キット 4万4485円
補正加算等:費用対効果評価(H5)、新薬創出等加算
週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬。今回収載されるウゴービ皮下注MDは、用量ごとに週1回の投与に必要な薬液が4回分あらかじめ充填されているペン型注入器。MDはMultiple Doseを表し、現行のSD(Single Dose)と比べて1本の注入器で複数回投与できる。
▽トルリシティ皮下注1.5mgアテオス(デュラグルチド(遺伝子組換え)、日本イーライリリー)
薬効分類:注249(その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む。))
効能・効果:2型糖尿病
薬価:1.5mg0.5mL1キット 5498円
補正加算等:なし
週1回投与のGLP-1受容体作動薬。現行の0.75mg製剤に対し、今回1.5mg製剤の剤形追加となる。トルリシティの用法・用量は、「通常、成人には、デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75mgを週に1回、皮下注射する。なお、患者の状態に応じて1.5mgを週に1回投与に増量できる」。
▽カーボスター透析剤2号・L(人工透析液、陽進堂)
▽カーボスター透析剤2号・P(人工透析液、陽進堂)
薬効分類:注341(人工腎臓透析用剤)
効能・効果:慢性腎不全における透析型人工腎臓の灌流液として、以下の要因を持つものに用いる。
・無糖の透析液では、血糖値管理の困難な場合
・カルシウム濃度の高い透析液では、高カルシウム血症を起こすおそれのある場合
薬価:
カーボスター透析剤2号・L
6L1瓶(炭酸水素ナトリウム液付) 2597円
9L1瓶(炭酸水素ナトリウム液付) 3479円
カーボスター透析剤2号・P
2袋1組 1908円
2瓶1組 1908円
補正加算等:なし
既存製品からカリウム濃度、塩化物濃度等の濃度を高めたもの。
▽ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「CT」(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続3]、セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン)
▽ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「YD」(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続2]、陽進堂)
薬効分類:注399(他に分類されない代謝性医薬品)
効能・効果:既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、乾癬性関節炎
薬価:45mg0.5mL1筒13万9002円
補正加算等:なし
いずれもステラーラのバイオシミラー(BS)。24年5月発売の一番手の富士製薬のステラーラBSに次ぐBSで、薬価は富士製薬のBSと同じ。また、BSの効能・効果は「既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、関節症性乾癬」で、先発品の皮下注製剤が持つ活動期クローン病の維持療法や潰瘍性大腸炎の維持療法の適応はBSにはない。
▽ビンゼレックス皮下注320mgオートインジェクター(ビメキズマブ(遺伝子組換え)、ユーシービージャパン)
薬効分類:注399(他に分類されない代謝性医薬品)
効能・効果:既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症。化膿性汗腺炎。
薬価:320mg 2mL1キット 30万3466円
補正加算等:新薬創出等加算
ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体。これまでは1回320mgの投与に対し、ビンゼレックス皮下注160mgシリンジまたは皮下注160mgオートインジェクターを2本使用して投与する必要があった。皮下注320mgオートインジェクターの使用により、それを1本で行うことができる。
▽ランマークHI皮下注120mgシリンジ1.0mL(デノスマブ(遺伝子組換え)、第一三共)
薬効分類:注399(他に分類されない代謝性医薬品)
効能・効果:多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変、骨巨細胞腫
薬価:120mg1mL1筒 4万4390円
補正加算等:新薬創出等加算
ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体。同剤は高濃度化により、注射液量を1.0mLに減少させたプレフィルドシリンジ製剤。これにより現行のバイアル製剤で必要とされる調剤業務の負担は軽減され、利便性の向上につながることが期待される。針カバーにはラテックスフリーのゴムを使用。
▽リバルエンLAパッチ25.92mgリバルエンLAパッチ51.84mg(リバスチグミン、東和薬品)
薬効分類:外119(その他の中枢神経用薬)
効能・効果:軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
薬価:25.92mg1枚215.30円
51.84mg1枚329.00円
補正加算等:有用性加算(II)(A=5%)
持続放出性リバスチグミン経皮吸収型製剤。既存のリバスチグミン製剤は1日1回の貼付が必要であり、今回、週2回の貼付とすることで、患者・家族、介護者の精神的・身体的負担軽減が期待されている。
▽ベピオウォッシュゲル5%(過酸化ベンゾイル、マルホ)
薬効分類:外269(その他の外皮用薬)
効能・効果:尋常性ざ瘡
薬価:5%1g 99.60円
補正加算等:小児加算(A=5%)、新薬創出等加算
これまでベピオゲル2.5%/ベピオローション2.5%があり、今回5%が承認された。効能・効果は既存の2.5%と同じ。用法・用量は既存製剤が「1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布する」なのに対し、ウォッシュゲル5%は「1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布し、5~10分後に洗い流す」となっている。