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自民党創薬力強化PT 経済対策に向けた緊急提言を大筋了承「市場成長や物価上昇念頭に適切な対応を」

公開日時 2025/11/04 04:51
自民党社会保障制度調査会の「創薬力の強化育成等に関するプロジェクトチーム」(大野敬太郎座長)は10月31日、「経済対策に向けた創薬力強化に関する緊急提言」を大筋了承した。緊急提言案では、医薬品産業を成長産業とするために、国内に投資を呼び込む必要性に言及。「イノベーションが適切に評価されるとともに、市場の成長や物価の上昇も念頭に置いた適切な対応を検討すべき」と強調した。再生医療等に関するCDMOを育成する必要性も指摘し、バイオなど新規モダリティに対応する人材の育成についても盛り込んだ。医薬品安定供給の観点から、流通コスト上昇局面においても「医薬品卸による持続可能な流通体制の実現を目指すべき」と盛り込んだ。今後、文言修正を経て、厚生労働部会に提出し、経済対策策定に反映することを目指す。

◎医薬品産業を「成長産業」として支援することは「危機管理投資」でもある

緊急提言案では、健康安全保障を確保し、医薬品産業を「成長産業」として支援していくことは、「危機管理投資」でもあると指摘。世界で活躍するグローバルファーマが投資を決定するのに際し、「他国と比較して有利な条件であるかどうかが必須であり、日本市場が、新薬に係る投資回収ができ、予見可能性の高いものである必要がある」と強調した。その上で、「他国と比して日本市場が劣らないよう、各種施策において、イノベーションが適切に評価されるとともに、市場の成長や物価の上昇も念頭に置いた適切な対応を検討すべき」と提言した。

研究開発税制など税制改正にも言及した。「医薬品産業の売上高に対する研究開発比率は他業種に比しても高く、日本の医薬品産業の研究開発費は、近年大きく増加しており、医薬品産業において研究開発を支援することの重要性は大きい」と指摘。「米国の医薬品産業の研究開発費と比較すると、依然として歴然とした差があり、イノベーション創出への投資を一層強く後押しする長期安定的で予見可能性の高い研究開発支援が講じられるべきである。研究開発税制などの税制改正に当たっては、創薬に関係する我が国のイノベーションを促進する観点から適切な措置が講じられるべきである」と主張した。

◎創薬スタートアップへの支援やAMEDによる出口戦略強化 積極投資にアクセル

相対的に研究力の低下が指摘されるなかで、スタートアップ支援やAMEDによる出口支援の強化も盛り込んだ。スタートアップ支援としては、薬機法改正で造成された「革新的医薬品等実用化支援基金を基に、継続的に創薬スタートアップから革新的新薬を生み出す創薬基盤・インフラを強化し、創薬スタートアップへの継続的な資金供給と技術・事業支援を一体的に推進すべき」とした。あわせて、海外の創薬エコシステムとのネットワーク強化を図るとともに、継続的に生み出される創薬シーズから1つでも多くの成功事例を創出するべく、創薬ベンチャーエコシステム強化事業による基盤技術の育成を含む企業価値向上に向けた支援や、事業期間の延長を含む中長期的な支援体制を確保すべき」と提言した。

◎再生・細胞医療・遺伝子治療製品に関するサプライチェーン強靭化も

“健康医療安全保障”の視点の必要性も強調。「再生・細胞医療・遺伝子治療製品に関するサプライチェーンを強靭化するため、これらの製品を受託製造する拠点を整備するとともに、再生・細胞医療・遺伝子治療製品の次世代製造に必要な自動化装置や品質管理システム等の導入を促進すべき」と主張した。あわせて、「細胞治療については、自動化などによる製造の効率化に対する研究開発を推進するべき」、「抗体薬物複合体(ADC)などの次世代抗体を中心とするバイオ医薬品について、連続生産等の製造効率化を図る研究開発を推進しつつ、適切な国産化が進むよう、規制の在り方も含めて検討を進めるべき」と踏み込んだ。また、新規モダリティにも対応できる製造人材の育成についても言及。「引き続き、製薬業界のニーズに即した製造人材の育成が進められるべき。特に、薬学部の学部レベルや高等専門学校の課程から製造人材の育成を進めるべき」と指摘した。

◎後発品業界の再編へ 生産性向上への製造設備投資や事業再編経費の助成を

医薬品の安定供給の必要性が指摘されるなかで、ジェネリック業界が「品目統合やコンソーシアム形成といった動きが顕在化している」として、「引き続き、これらの取組を促すとともに、中長期的目線に立ってさらなる強力な措置を検討すべき」とした。

そのうえで、「後発医薬品企業の生産性向上や品質管理体制の大規模化、企業間連携の推進に伴う一定のコスト負担を考慮すると、政府の支援が欠かせない」として、「後発医薬品製造基盤整備基金により、品目統合・事業再編等の計画を認定した企業に対し、生産性向上に向けた製造設備投資や事業再編経費への助成を進めるべき」と提案した。

また、安定供給に向けて、「時期的な目標を掲げた上で、医薬品の安定供給体制の整備を進めるべき」と指摘。特に、「需要の予測が難しい感染症関連の医薬品や医療上の必要性が高い医薬品等については、製薬企業において在庫の積み増しが図られるよう、国においても財政支援を行うなど、必要な支援策を講ずる必要がある」とした。

バイオシミラーの使用促進に向けて、「バイオ後続品の開発・製造に取り組む企業に対しては、新規製造工場や先端設備導入に必要な投資を包括的に支援する助成を継続する必要がある」と明記した。

安定供給に絡めて流通にも言及。「後発医薬品を含め、医薬品は、流通コストの上昇局面においても、継続して安定的に供給されることが求められるため、医薬品卸による持続可能な流通体制の実現を目指すべ」とした。

今回の緊急提言案では中間年改定など年末の予算編成過程に向けて焦点となる項目は盛り込まず、あくまで補正予算を見据えた経済対策に特化した内容となっている。この日、出席した議員からは▽アカデミアなども含めた人材の流動化▽原料や原薬の調達、あるいはサプライチェーンの強靭化▽政府系金融機関も含めた資金供給の充実▽厚労省のみならず文科省部分も含めてしっかり取り組むこと▽イノベーションの評価についてしっかりメリハリをつけてやっていくべき―などの意見があがり、こうした意見も最終案に反映する方針。

◎田村調査会長「PTでの提言をしっかりと補正予算に盛り込む」

田村憲久社会保障制度調査会長は会議冒頭で、「PTでの提言をしっかりと補正予算に盛り込む意味で、さらに高市内閣の支持率を引き上げ、国民の生活をしっかり安定的なものに持っていかないといけない」と意欲をみせた。そのうえで、創薬力向上のための官民協議会ワーキンググループが議論に触れ、新薬の評価や費用対効果評価、市場拡大再算定などについて、「製薬企業には色々な声があるので、よくよく話を聞いていかなければいけない」と表明した。

◎大野PT座長「しっかりと経済対策の弾を込めないといけない」

大野敬太郎PT座長は、「先週、総理から経済対策が出された。しっかりと経済対策の弾を込めないといけない」と強調。一方で、「市場拡大再算定であるとか、費用対効果であるとか、ジェネリックのあり方であるとか、薬価も含めて、産業政策として構造をどうやって最適にしていくのかというところに主眼がある。この提言の後には、しっかりと本質的な課題に取り組んでいきたい」と意欲をみせた。



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