中医協 再生医療等製品・エレビジスは薬価収載へ 長期経過で「有効性確認可能と合理的に予想」
公開日時 2026/01/15 05:59
中医協総会は1月14日、再生医療等製品・エレビジス点滴静注について、医薬品として保険収載の検討を進めることを了承した。エレビジスについては第3相試験段階では主要評価項目の統計学的有意差を示せなかったが、厚労省は「長期の経過を確認することにより、有効性の確認が可能な状況になることが合理的に予想される」などと説明。保険適用の手続きを進めることを提案し、大筋で了承された。ただ、欧州では日本と同様の適応で申請されたものの、有効性が十分に証明されていないとして不承認になっていることに対する懸念の声もあがった。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が「少なくとも安全性についてはしっかりと担保されていることが最低条件」とクギを刺すなど、指摘が相次いだ。
エレビジスをめぐっては、エレビジス点滴静注をめぐっては、歩行可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を適応症として、5月13 日に条件・期限付き承認を受けた。一方で、海外で歩行不能な患者で致死的な経過を辿った急性肝不全が2例報告された。このため、中医協では保険適用に向け、過去3回にわたり議論を実施。有効性・安全性ともに薬事上の観点から情報収集を行い、専門的知見に基づく検討を求める声があがっていた。
◎有効性推定 301試験の副次評価項目の結果で 長期間追跡で有意差も
厚労省医薬局医療機器審査管理課は有効性について、第3相試験である301試験では、主要評価項目のNSAA総スコアでプラセボ群に比べ、優越性は示せなかった。一方で、副次評価項目の床上起き上がり時間や10m歩行/歩行時間などは一定の運動機能の改善または運動機能低下の抑制が期待できる結果が得られた。NSAA総スコアの改善には比較的時間がかかることが指摘される一方、副次評価項目に据えた指標は「疾患進行に伴う微細な変化をより早期に捉えやすい」として、条件・期限付き承認の“有効性推定”の根拠の一つとして評価したと説明した。
試験対象とされた4~7歳は、筋肉の成長に伴う機能向上と疾患進行による機能低下が拮抗する時期で、効果がマスクされ、群間差が現れにくかった可能性があることから、「成長期が終わる時期までの長期追跡により、自然歴と比較して本品の効果がより明瞭に観察されることが合理的に予測されると判断した」と指摘。製造販売後の有効性の検証として、301試験で投与された患者について、本品投与後3年間のデータを引き続き収集することで有効性の検証を行う計画は妥当であると判断したと説明した。また、301試験の投与対象を追跡したデータでは、プラセボ群に対して統計学的な有意差を示したことも報告した。
◎EUではCMA不承認 有効性が十分に証明されていない
一方で、国内の条件・期限付き承認後の25年9月、欧州委員会(EC)は、有効性が十分に証明されていないという見解から、Conditional Marketing Authorization(CMA)を不承認とする最終判断が行われた。製造販売業者のるロシュ社が欧州医薬品庁(EMA)の見解を得るための当局相談を実施する計画であるとしている。
また、エレビジスは、「再生医療等製品に係る条件及び期限付承認並びにその後の有効性評価計画策定に関するガイダンス」に基づいて承認審査を行ったことも報告。過去に条件及び期限付き承認がなされた後に保険適用から削除された2製品(ハートシート、コラテジェン)と比べ、「条件及び期限付承認についてより確度の高い運用が行われている」と説明。製造販売後調査においても、301試験に登録した患者を対象に引き続きデータ取得し評価を行う予定としていることから、「より確実に製造販売後の有効性評価を行うことができる」と強調した。
◎安全性 肝機能検査の実施や肝機能障害発現時の連携体制など明確化
安全性をめぐっては、11月27日に薬事審議会医療機器・再生医療等製品安全対策調査会を開催。添付文書改訂を踏まえた関連資材の改訂や肝機能障害について安全対策を講じる上での関係学会との協力体制について議論を行ったことを報告した。日本小児神経学会、日本肝臓学会の専門家の意見を踏まえ、適正使用ガイドで、投与前の肝機能検査の実施及び本品の投与可否の判断のための手順を明確化するほか、肝機能障害が発現した場合の相談に応じるエキスパートパネルや連携体制の整備についても明確化。日本小児神経学会及び日本肝臓学会宛に通知を発出するなど、安全対策の徹底を図っていると報告した。
同剤の有効性・安全性を踏まえ、厚労省保険局は同剤が米国ですでに本承認されていること、また、「長期の経過を確認することにより、有効性の確認が可能な状況になることが合理的に予想され、先行する米国と同様の判断になり得ると期待される」と説明。改めて同剤の保険適用に向けた手続きを進めることを議題に上げた。投与方法などを踏まえて医薬品として薬価収載を検討することを提案した。
◎診療側・江澤委員「条件・期限付き承認の存続にかかわる問題」 厚労省に取組み促す
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「今回お示しいただいた一連の資料で、疾患の特性上限られた内容ではあるものの、一定の有効性と安全性が示唆され、また過去の事例とは異なり、本承認に至る可能性も一定程度見込まれると厚生労働省としてご説明いただいたと受け止めている」と表明した。そのうえで、「本来であればこうしたことは中医協で議論するものではなく、薬事の段階でしっかりと議論されるべきことだ」と指摘。「投与対象の患者さんが3~7歳で、可能性のある医薬品に少しでも早くアクセスしたいという、患者さんやご両親のお気持ちは十分に理解するところだが、少なくとも安全性についてはしっかりと担保されていることが最低条件だ。死亡例の報告もなされたところであり、薬事の段階で安全性を確実に担保できていなければ、お子様である患者さんやご家族に大きな悲しみを与えることにもなりかねない」と続けた。江澤委員は、「このことは、条件および期限付き承認制度の存続にもかかわる問題だ。“薬事承認に際して条件及び期限付き承認後における計画が有効性及び安全性の評価が合理的かつ実施可能となっていることを前提”とされているので、今回の件を踏まえ、より一層の取り組みをお願いしたいと強く要望する」と述べた。
診療側の小阪真二委員(全国自治体病院協議会副会長)は、欧州が不承認する中で懸念を表明。申請データとなった301試験に登録された対象群を追跡調査する形で製造販売後調査を行うことに対して「かなり危惧がある」との見解を表明。「治験で有効であれば、その群をそのまま製造販売後の有効性の判定に使うというのは、製造販売後、有効性の判定という文言からしてもちょっとおかしいのではないか。やはり製造販売後に投与されたものの分析をしなければならないのではないか」と問題提起した。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は安全性を担保する必要性を指摘。「関係者が協力して安全対策を実施していくことが不可欠だ。未知のリスクを既知化すること、既知のリスクに関しては最小化するよう、リスク対応への徹底が求められる」と述べた。薬剤師としても「医師と連携してしっかりと取り組んでいきたい」と要望。「今後は、企業から薬局へも適正使用等に関しての情報をいただけるようお願いをしたい」と述べた。
◎支払側・松本委員「リスクを上回るベネフィットが見込まれる」
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は有効性について「過去に本承認に至らなかった2製品と比べ、有効性の確からしさは相当程度高いと期待をするものだ」と表明。一方で、安全性については「肝機能障害にかかる安全対策を徹底して、リスクを最小化できるものと受け止めている」として、「患者にとってリスクを上回るベネフィットが見込まれる」との見解を示し、事務局案を了承した。「今後の薬価算定作業を進め中で新たな情報が発生した場合には、速やかに中医協に報告していただくことも事務局にお願いをしたい」とも要望した。