米トランプ大統領 ファイザー製品の薬価引下げ合意 700億ドル追加投資で3年間の関税猶予 ファイザー
公開日時 2025/10/02 04:52

米トランプ大統領は9月30日(現地時間)、ファイザーの医薬品価格を他の先進国が支払う最低価格 (最恵国待遇価格)と同等に引き下げることで同社と合意したと発表した。今回の合意を受け、米政府は、全州のメディケイドプログラムで使用するファイザー製品に最恵国待遇価格が適応されるとし、数百万ドルの医薬品コスト削減につながると強調した。一方、ファイザーは同日、米国内の研究開発および資本プロジェクトに700億ドルを追加投資することを明らかにし、トランプ大統領の医薬品関税で3年間の猶予を得たと明かした。
◎トランプ大統領「我々は医薬品に関して他国より時に十倍以上の金額を支払っている」
トランプ大統領はホワイトハウスで行ったメディアブリーフで、「世界最大級で、世界最高の製薬会社の一つファイザーが、今年初めに私たちが制定した最恵国待遇の医薬品価格ルールに基づき、アメリカで処方薬を大幅に割引して提供することに合意した」と興奮気味に話し始めた。続けてトランプ大統領は、「医薬品に関してアメリカは他国より時に十倍以上の金額を支払っている。この状況は何年も、何十年も続いてきた。これ以上現状を維持することはできない。最低価格を適用する優遇国制度により、アメリカの納税者と消費者の負担が軽減されるだろう」と合意の成果を強調した。この日、ホワイトハウスにはファイザーのアルバート・ブーラ会長兼CEOの姿もあった。
◎最大85%、平均50%の割引価格に 「TrumpRx.gov」を通じて提供
米政府の発表によると、今回の合意でファイザー製品は、消費者に医薬品を直接販売するサイト「TrumpRx.gov」を通じて提供される。米政府によると、アトピー性皮膚炎の外用軟膏「EUCRISA(ユークリサ)」は、直接購入する患者に80%の割引価格。関節リウマチ、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎の治療に広く使用される経口薬・ゼルヤンツは、直接購入する患者に40%の割引価格で提供される。片頭痛の治療に広く使用されている「ZAVZPRET(ザブズプレト)」は50%割引で患者に直接販売される。
一方、ファイザー側は契約の具体的な条件は開示しないものの、「プライマリケア製品の大部分と一部の専門ブランドは最大85%、平均50%の割引で提供される」としている。
◎ブーラ会長兼CEO 「イノベーションへの世界的な負担を背負っていた時代を終わらせる」
今回の合意を受けてファイザーは同日、米国の研究開発および資本プロジェクトに700億ドルの追加投資を発表した。これは、同社が2018年から2024年にかけて米国のバイオテクノロジーイノベーションに830億ドル以上を投資してきたことに基づくもの。同社は、「先駆的なブレークスルーの追求を通じて医療の未来を形作り、米国が医療の進歩と人々の生活向上における世界的な拠点であり続けることを確実にすることで、この重要な局面において私たちのコミットメントを強化していることを示している」とコメントしている。
アルバート・ブーラ会長兼CEOは、「トランプ政権と緊密に協力することで、イノベーションへの世界的な負担を背負っていた時代を終わらせ、患者負担を軽減し、米国のバイオ医薬品エコシステムへの投資拡大を可能にする。すべての患者を第一に考え、アメリカが医療のブレークスルーを牽引する世界的リーダーであり続けることを保証するものだ」と強調した。
◎PhRMA「他国は医薬品を過小評価し、最新の治療薬にアクセスできないようにしている」
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のスティーブン・J・ユーブル会長兼CEOも同日、政府合意について声明を発表した。声明では、「米国における価格高騰の真の要因に対処するには不十分。PBM(医薬品製造販売業者)は、患者に正規価格を請求しながら、医薬品を大幅に割引価格で提供している」と指摘した。さらに、「トランプ政権がアメリカのイノベーションに便乗している諸外国に焦点を当てるのは正しい」としながらも、「トランプ政権は海外における不公平な慣行に対処するために、より多くのことを行う必要がある」と強調した。
また、米国以外の他国は日常的に医薬品を過小評価し、国民が最新の治療薬にアクセスできないようにしているとし、「同じ価格を米国に持ち込む最恵国待遇政策は、治療や治療法へのアクセスを狭め、製造業や研究開発への投資を減少させる結果をもたらすだろう。欧州で実際に起こった。私たちは、米国で同じことが起きてほしくありません」と訴えた。