【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

スズケン・浅野社長 新中計発表 「機能によるフィービジネスに挑戦」 データやデジタル基盤を対価に

公開日時 2026/05/18 04:53
スズケンの浅野茂代表取締役社長は5月15日の2025年度決算・新中期経営計画(26~28年度)説明会で、「従来のマージンビジネスに加え、機能によるフィービジネスに挑戦する」と表明した。スズケングループは、患者との会話からAIがカルテや薬歴を自動作成するツールや、医療者・介護者がワンストップで各種デジタルサービスを利用できる医療DX総合プラットフォーム「コラボポータル」などを運営・提供している。これらを通じて得られる匿名加工データの二次利用や、ユーザー認証機能(コラボID)の提携企業などでの利活用を進め、新たな収益とする構想だ。浅野社長は、「機能を事業化し、対価をいただく次世代卸へ進化する」と述べた。

こうした構造改革へ舵を切る背景には、医薬品卸が直面する厳しい経営環境がある。浅野社長は、医薬品卸特有の構造的な課題として、「インフレ時代において増加するコストを容易に価格転嫁できず、加えて、(流通マージンを減らしたい)製薬企業と、(安く仕入れたい)医療機関のはざまで厳しい状況に置かれている」と指摘した。さらに製品カテゴリーの変化にも触れ、同社の取扱製品の場合、25年度にスペシャリティ医薬品を含むPMP品の金額シェアは62%に対し数量シェアは4%、一方で、後発品は同10%に対し43%になったという。

浅野社長は、こうした今の構造を打破するため、「従来のマージンビジネスに依存する事業モデルから、機能の事業化を進めることで、『マージンフィー + フィー・フォーサービス』の新たな事業モデルへと挑戦する」と述べ、収益構造の多様化と付加価値創出を図る考えを示した。安定的な収益の確保は、平時・有事の社会インフラとしての医薬品卸の安定供給機能の維持に不可欠と訴え、医薬品卸社員が活躍するための処遇維持・改善にも必要だと強調した。処遇改善は業界団体を挙げて政府や国会議員に働きかけが行われているが、浅野社長は「そこに頼るだけではなく、自らも新しい収益を自ら獲得し、グループ社員を幸せにするチャレンジも必要と覚悟を持っている」と話した。

◎新中計の重要施策 1番目に“次世代卸への進化”

新中計のスローガンは、「Change makes Challege. Challenge makes Change 環境の変化を成長のチャンスと捉え、積極的に挑戦し続ける。その挑戦が、スズケングループの未来を切り拓く」とした。浅野社長は、「今まで蒔いてきた挑戦の種を具体的な事業、成果へと結びつける3年間と位置付ける」と述べた。

新中計は、(1)次世代卸への進化、(2)事業ポートフォリオの再設計、(3)経営基盤の強化――の3つの重点施策で構成する。次世代卸への進化では機能の事業化を、事業ポートフォリオの再設計では既存事業の進化と外部企業とのアライアンスを通じた事業構造の進化に取り組む。経営基盤の強化では、次世代の経営を担う人材の計画的な育成や、DX人材の育成・確保を強化する。

このうち「次世代卸への進化」に向け、同社は前中計期間に注力してきたコラボポータルの基盤をフルに活用する。現在約45万IDに拡大した医療・介護者の会員数を、28年度には100万IDに引き上げる計画だ。このコラボIDの認証機能を基盤とした機能利用料収入をはじめ、コラボポータルやコラボIDを用いた多職種連携コミュニケーションツール「メディカルケアステーション(MCS)」の利用で得られた匿名加工データを利活用した情報ビジネス、さらには医療・介護者向けリサーチ代行の収益化などを展開していく。

すでに、南江堂との間で、南江堂が開発した医学書をもとに回答を自動生成するAIチャットツール「メドシルAI」へのコラボIDの提供が決まっており、コラボポータルやMCSからシームレスにメドシルAIを利用できるようになる(記事はこちら。機能の事業化が具体的に動き出している。

◎会話からカルテ・薬歴を生成するAIツール「medimo」 情報分析ニーズ「既にある」

データビジネスの核のひとつとして高い期待を寄せるのが、今年2月に完全子会社化したmedimo(メディモ)社だ。同社は患者との会話から約5秒でカルテや薬歴を自動作成するAIツール「medimo」を展開しており、医療従事者の業務効率化や働き方改革に貢献している。現在の1000軒以上の導入実績を、今期中に1万軒、28年度には1万5000軒を目指す。

浅野社長は「既にmedimoの仕組みを導入している先の情報を分析してほしいというニーズがメーカーからある」と明かし、「大変可能性を秘めた領域」と強調した。さらに、medimoと、スペシャリティ医薬品トータルトレーサビリティシステム「キュービックス」を組み合わせた新たな価値創出にも意欲をみせた。

◎MS、バックヤード、AI-MSでマルチチャネル型情報提供を展開 「利益を頂戴できる体制に」

また、製薬企業からのマージン圧縮やニーズの多様化に対応するため、「次世代の営業体制の構築」にも着手し、新たな収益源とする考え。具体的には「MS」、メディカルコールセンターや営業サポート部門などの「バックヤード機能」、コラボポータル内のバーチャル空間でAIアバターとして情報提供活動を行う「AI-MS」を組み合わせたマルチチャネル型情報提供を展開していく。コールセンター機能は、約500人の有資格者を配置するEPファーマラインとの協業を強化する。

田中博文取締役専務執行役員は、「マルチチャネルによる新たな価値をしっかり生み出し、フィーという利益をしっかり頂戴できる体制を整えたい」と意気込みを語り、新体制によるマネタイズに自信をみせた。

スズケンは、他にも様々なソリューションの創出とフィービジネスを実現するため、4月1日付でデジタルCoE統括部を新設した。浅野社長は、「デジタル機能の内製化に向けた新体制」だといい、medimo社にはスズケングループの生成AI機能の内製化への貢献も期待していると述べた。

◎28年度目標 売上2.7兆円以上 ROE7.0%以上 医薬品卸売事業は経常利益320億円以上

こうした施策などの積み上げにより、新中計の最終年度となる28年度には、売上高2.7兆円以上、ROE7.0%以上、経常利益率1.5%以上(卸売事業セグメントは1.0%以上)――の達成を目指す。投資計画は3カ年累計で600億円以上とし、M&Aや戦略投資は機動的に実施する。

また、26年度からはセグメント変更を行い、次世代ビジネスの輪郭を明確にする。28年度の事業セグメント別の経常利益目標は、主力の医薬品卸売事業が320億円以上、新設する「デジタルビジネス」は30億円以上、「ロジスティクス」は20億円以上――などと設定した。デジタルビジネスでは28年度に、medimoは1万5000軒、コラボポータルは100万ID、キュービックスは1000台(現在740台)――へと導入拡大を目指す。

◎25年度は増収減益 営業利益率0.07pt悪化の1.31% 仕入価格上昇やインフレの費用増で

同社の25年度連結業績は、売上高が前年度比3.6%増の2兆4866億円、営業利益は2.0%減の363億円だった。

医薬品卸売事業は、売上高は3.8%増の2兆4010億1300万円、売上総利益は1.2%増の1429億400万円、売上総利益率は0.15ポイント悪化の5.95%、販管費は1.9%増の1114億3700万円、営業利益は1.4%減の314億6700万円、営業利益率は0.07ポイント悪化の1.31%――だった。コロナ関連商材の売上縮小の影響はあったものの、抗がん剤の市場拡大やスペシャリティ医薬品等の新薬の寄与により増収を確保した。営業利益は、仕入価格の上昇や、外部委託費などインフレ傾向に起因する営業費の増加により減益となった。

ただし、コロナ関連商材の影響を除いても増収・増益、営業利益率1.15%と1%台をキープ。同社は「基礎収益力は着実に改善している」と話している。スペシャリティ医薬品の受託社数及び品目数は40社81品目(24年度:39社70品目)に伸びた。

26年度の医薬品卸売事業セグメントは、市場伸長やスペシャリティ医薬品の寄与を踏まえ、売上高は2兆4680億円を見込む。売上総利益は増益を見込むものの、賃金・物価や委託費の値上げ対応などによるコスト増で、営業利益は283億円、営業利益率1.15%、経常利益317億円を見込む。26年度からセグメントを変更し、スペシャリティ医薬品流通受託事業を医薬品卸売事業セグメントに新たに取り込んだため前期比は明らかにしていないが、同社は増収減益予想だとしている。
プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(9)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

「Chugai Value Delivery Principles」が描く姿
 

中外製薬 バリュー・デリバリー3本部の挑戦(前編)

2026/04/01
中外製薬は2025年12月に、営業(MR)、メディカルアフェアーズ、医薬安全性の3本部連携による行動指針「Chugai Value Delivery Principles」を策定した。
LSD(エルエスディ)戦略の基本:三十二「絶対に勝つ戦略」
ドリームクロス 夏山栄敏

「勝つ戦略」 vs 「負けない戦略」

2026/01/01
Monthlyミクス12月号では、ウォシュレットで米国を中心に海外戦略を進めるTOTOの戦略について取り上げました。今号は、不動産会社で最高益を更新続けるヒューリックの戦略を考えます。
【MixOnline】関連(推奨)記事
ボタン追加
【MixOnline】記事ログ
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー