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財務省・永安主査 公的財源の活用「費用対効果は絶対不可欠」 医薬品の薬事承認後即収載は「特権的」

公開日時 2026/05/21 06:00
財務省主計局厚生労働第三係の永安俊介主査は、日本保険薬局協会(NPhA)の定時総会で講演し、「一般的な意味での費用対効果の活用は、公的な財源でファイナンスされている以上、絶対不可欠というのが我々の基本的な議論の出発点だ」と話した。日本では薬事承認された医薬品は費用対効果の検討を経ずに、無条件で収載されていることに問題意識を表明。新幹線や道路など社会インフラを担う公共事業については費用対効果が議論されていることを紹介したうえで、「(医薬品や医療技術は)特権的だと当事者の皆さんにご認識いただくことが重要だ」との考えを示した。27年度薬価改定については、“完全実施”の必要性を改めて強調した。

永安主査は、新幹線や道路など社会インフラを担う公共事業は、予算が定められていることから、費用対効果に基づき事業内容が決定されていることを説明。日本では、医薬品は承認されれば無条件で原則60日以内に収載され、財政影響は予算統制の枠外となっている。永安主査は、「医薬品や医療技術にはそういった(費用対効果)議論がなく、有効性・安全性が確認されれば、薬事承認される。これは特権的だということを当事者の皆さんにご認識いただくことが重要だ」と述べた。

◎“薬事承認即、薬価収載”のスタートは制限診療の撤廃 医療費増大

“薬事承認即、薬価収載”は1980年代の日米MOSS協議が根拠との見方も強いが、「実際は、日本医師会の強い要請を受けて、1962年に制限診療の撤廃が実現したことが歴史的にはある」と指摘。1960年当時は、療養担当規則で医薬品の使用基準が規定されていたが、制限診療が撤廃され、抗生物質や抗がん剤、副腎皮質ホルモンなどの使用が認可された。こうした中で、医療費が大きく伸びたことも指摘されている。永安主査は、「当時の保険局は、制限診療撤廃と医療費増加の関係について、相当甘い見通しを立てていた。こういった歴史に思いをはせながら、費用対効果評価について議論せねばならないと思っている」と述べた。

今後、高額薬剤のさらなる登場が予測される中で、費用対効果評価制度の一層の活用を含めた薬価制度上の対応の必要性を強調した。また、高額薬剤については、「民間保険の活用」を検討する必要性を指摘した。生活習慣病薬についても、「費用対効果も加味した処方ルール」を設定する必要性を指摘。「患者本位の治療という観点、医療保険財政の観点から考えれば当然のこと」と述べ、医療従事者の理解を求めた。

地域フォーミュラリの普及・促進の必要性も指摘した。地域フォーミュラリは、「経済性を踏まえてという部分もあるが、より根本的な標準治療を実現しませんか、という提案」と説明。調剤薬局にとっては服薬指導・管理の質向上と効率化、効率的・計画的な薬剤購入と在庫管理などにもつながるとメリットを説き、「最初は相当負担もあると思うが、部分最適ではなく、将来を見据えて全体最適を達成するという観点から、皆様のご協力をお願いしたい」と呼びかけた。

◎実勢価改定を“マイナス改定”と表現「業界独特の言い回しだと認識を」 予算制約内執行に驚き

薬価改定をめぐる議論にも問題意識を投げかけた。薬価改定は市場実勢価格に基づき価格を引下げる仕組みであることから改定率がマイナスとなる一方、新薬の上市や、医師の処方権などを背景に総額が伸びている。永安主査は、「国の予算や保険料財源が予算の制約なく執行されていることに驚いた」と話した。そのうえで、「既存薬剤の価格を実勢価に基づいてリバイスするということをもって予算が削られた含意のあるマイナス改定だとおっしゃることには相当違和感がある。この業界独特の言い回しだということはご認識いただいてもいいのではないか」とクギを刺した。

薬価改定については革新的な新薬を評価する重要性を認めたうえで、長期収載品などを適正化することで、長期収載品依存から脱却して革新的新薬を生み出すインセンティブにつながると説明。27年度薬価改定については、奇数年度に当たるが、「国民負担の軽減という重要な観点もある」として、対象品目や算定ルールを限定しない、「完全実施」を改めて指摘した。なお、前回の奇数年改定に当たる25年度改定では市場拡大再算定や長期収載品の薬価改定が実施されていない。

◎調剤薬局「量的規制の導入を真剣に考える時」 小規模乱立の構造に問題意識

調剤技術料をめぐり、処方箋1枚当たりの技術料の伸びが過去の報酬改定を上回って伸びていることを問題視。「調剤報酬の予算については、大臣折衝の約束を反故にする形で執行され続けていると言っても過言ではない」と指摘した。

調剤薬局をめぐっては、「旧薬事法による薬局取引規制の違憲判決の存在を金科玉条とすることなく、小規模乱立の薬局の提供体制や業界構造を変えるため、量的規制の導入を真剣に考える時がきているのではないか」と問題提起した。「憲法上の営業の自由は、保障されるべき。開業そのものへの規制も難しい面があるかもしれないが、例えば医療保険の財政運営の効率化の観点から、保険調剤としての敷居のハードルを上げるなど、一定の参入規制を導入することはあり得るのではないか」と続けた。

26年度調剤報酬改定では「門前薬局等立地依存減算」が新設されたことを「一つの大きな変化」と受け止めたうえで、焦点となった調剤基本料1を取得するような小規模薬局について「特段の問題意識を持っている」と言及した。過去の改定では、大規模調剤チェーンを狙い撃ちした改定が行われてきたことに触れながら、「利益が出ているからということで、ガリガリ効率化をやってきたという保険局のやり方は、果たして保険財政の効率的な活用という観点で合理的かということについて、一部疑問がある」との見方も示した。

永安主査は、「大規模な薬局なのか、パパママ薬局なのか、門前なのかそうでないかにわらず、都市部で薬局が乱立していること自体、日本の貴重な人材とか資源を有効活用するという観点から課題意識が根本にある」とも述べた。

◎処方箋料「28年度改定に向け、財政当局としては引き続き主張」

26年度診療報酬改定に向けて主張してきた、処方箋料の適正化についても言及した。「財政当局の目線で見ると、すでに医薬分業は相当な進捗を見せており、100%になるということはおそらくないのではないか」と指摘、薬価差も縮小していることから、「28年度改定に向けて、財政当局としては引き続き主張していきたい」とも述べた。

◎医療のトリレンマ 医療制度改革を議論する前提に

医療制度改革の視点として、“医療政策のトリレンマ”を財政制度等審議会財政制度分科会で示したことも説明した。医療政策のトリレンマとは、医療資源が限られる中で、医療の質の確保、患者アクセスの保障、医療提供のための負担の抑制の3つを同時に達成することは極めて困難というもの。永安主査は、「医療は社会共通基盤であることは間違いないが、財政当局としては、投入できる資源は決して無限ではない。人材面でも資金面でも一定の制約があるという事実を強く認識をする必要がある」と指摘。「3つ全てを完全な達成することは難しいということについては、現実的な医療政策を議論する上での前提条件として、全ての人が認識しておくべき」と述べた。

日本の医療制度については、日本は医療の質と患者アクセスの確保を特に重視し、医療財政の持続可能性が課題になっていると指摘。保険給付範囲のあり方の見直しや、保険給付の効率的な提供に不断に取り組む必要があるとしている。
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