厚労省・薬価制度抜本改革案 長期収載品の薬価引下げ方針示す MRなど営業コストにメス

公開日時 2017/11/20 03:52
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厚生労働省は11月17日までに、薬価制度の抜本改革案をめぐり、製薬業界との水面下での調整に着手した。同省の改革原案によると、長期収載品については、後発品参入から10年が経過した時点でさらに薬価を引下げる新たなルールを導入する。後発医薬品の置き換え比率が高い品目の市場からの撤退も認める。国内マーケットは依然として、長期収載品比率が高い。長期収載品をめぐっては、MRなどの販管費や流通施策などを通じ、薬価の高止まりの存在が指摘されていた。今回の改革案は、これまで聖域としたMRなどの営業コストをはじめ、製薬業界の高コスト体質にメスが入る格好だ。これにより新薬メーカーの長期収載品の他社への売却やAGへの転換の加速化など、製薬業界の産業構造改革がドラスティックに進む可能性が高い。

同省は今週22日に開かれる中医協に改革原案を提示する。その後、製薬業界側からのヒアリングなどを踏まえ、年末までに改革案を固める方針だ。

長期収載品の薬価は、2年に1回の薬価改定での引下げに加え、後発品収載から5年後に適用されるZ2(後発医薬品の置き換え率が60%未満の先発品の置き換えに応じた特例的な引下げ)により薬価が引き下げられてきた。抜本改革案では、Z2ルールを適応して5年が経過、つまり後発品収載から10年間経過した時点で、後発品の置き換え率が80%以上(G1)、80%未満(G2)にわけ、いずれも後発品の薬価を基準に段階的に薬価を引き下げる。

置き換え率の高いG1に該当する品目は後発品参入から10年時点で後発品の2.5倍、12年後に2倍、14年後に1.5倍、16年後には後発品の水準まで段階的に薬価を引き下げる。該当品目は市場からの撤退も認める。一方で、G2品目は後発品参入から後発品の2.5倍とし、その後2年ごとに10年間かけて、薬価を後発品の1.5倍まで引き下げる。いずれに該当しる場合も、引き下げ率が大きい場合には、一定の配慮も行う。ただし、長期収載品の中でも、2016年度薬価・診療報酬改定で導入された基礎的医薬品については、生薬、軟膏基剤、歯科用局所麻酔剤などへと対象を拡大する。

後発品は初収載の薬価は現行の0.5掛けを維持。安定供給の観点から、参入から10年間を“増産準備期間”に位置付け、この間の体制整備も求めた。価格帯は現在の3価格帯から、発売後12年が経過した時点で原則1価格帯にする。ただし、先発企業が撤退したG1品目については、供給の増産を行った後発品については、他の企業と異なる価格帯を認める考えで、2価格帯となる。


◎新薬創出加算は有用性・革新性に着目、対象品目を絞り込み



新薬創出・適応外薬解消等促進加算は、有用性・革新性に着目し、企業要件などの達成度合いで段階的な評価とする。具体的には、類似薬効比較方式で画期性加算・有用性加算を取得した品目や、原価計算方式で営業利益率を補整した品目、希少疾病用医薬品、新規作用機序の医薬品などに絞り込む。一方で、医療用配合剤やラセミ体医薬品、類似薬効比較方式Ⅱで算定された医薬品などは対象から外す方針。

企業要件も、①革新的新薬創出、②ドラッグ・ラグ解消、③世界に先駆けた新薬開発―を指標とし、達成度・充足度に応じて製薬企業を3段階に区分し、加算率に差をつける。ただ、医療系ベンチャーについては、企業指標にかかわらず加算率を設定する。

一方で、効能追加などに伴って市場規模が拡大する製品ヘの対策としては、市場規模が350億円超の製品については、年4回の新薬収載の機会を活用して市場拡大再算定を実施、最大25%の薬価引き下げを行う。レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を利用して販売数量を把握する方針。


【製薬産業に構造転換を促す薬価制度改革案 MRの役割・機能にメス】



「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換するため、革新的バイオ医薬品及びバイオシミラーの研究開発支援方策等の拡充を検討するとともに、ベンチャー企業への支援、後発医薬品企業の市場での競争促進を検討し、結論を得る」-。2016年12月に4大臣で合意された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を具体化する厚労省の抜本改革案が製薬業界に示された。

今回の改革原案の内容は、まさにこれを実現するための施策を示したものにほかならない。特に注目すべきは、「薬価の高止まり」を是正する目的で、長期収載品の薬価を段階的に引き下げ、最後は後発品と同水準とする考え方だ。財務省もMRの生産性に着目し、製薬産業の費用構造にメスを入れる方針を示していた。言うなれば、これまで製薬業界の聖域だった「MRによるプロモーション」の無力化まで狙ったものと言える。

製薬企業にとって、長期収載品はこれまでも収益源となっていたが、今回の改革案を導入することで、長期収載品マーケットでの営業活動もローコストオペレーションへの転換が迫られることになる。MRを含む営業コストの見直しは避けられない。加えて言えば、薬価制度改革以外の施策として、2018年度からスタートする新たな医療費適正化計画や都道府県の保健ガバナンスの強化、さらには18年度診療報酬改定などを通じ、着実に「地域包括ケアシステム」が動き出す。残薬や重複投薬を解消する施策もさらに推進される見通しだ。薬剤使用の総量規制が強まることは間違いない。すでに医薬品の共同購入やフォーミュラリの導入も地域やエリア単位で検討が始まっている。

一部の製薬企業からは、自社の長期収載医薬品や後発品を他社に売却する動きが見え始めている。改革原案を見る限り、今後の国内医薬品マーケットは、革新的新薬市場とエッセンシャル市場とに2極化する流れが明確だ。新薬メーカーとしては、革新的新薬の研究・開発に注力するか、あるいは徹底したローコストオペレーションを実現した上で、後発品を多数品揃えしたプロダクトパッケージ型のビジネスに転換するか、いずれかの道を選択することを迫られることになる。

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