中医協・薬価専門部会 消費増税に伴う薬価2段階改定に反対意見 財務省が揺さぶり

公開日時 2018/11/01 03:52
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中医協薬価専門部会が10月31日開かれ、2019年10月に予定される消費増税に伴う薬価改定の議論を本格化させた。焦点の薬価改定の時期について、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が2019年4月と増税を実施する10月の2段階改定を提案したのに対し、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「(2段階改定は)非常に事務負担が大きい」と反論。「19年度は10月の消費税に伴う改定のみとすべきだ」と述べた。ただ、こうした議論の応酬を見る背景には、財務省がここにきて社会保障費の自然増を5000億円に圧縮する方策として薬価の臨時引き下げをちらつかせたことがある。年末の19年度予算編成の焦点となる社会保障費の抑制論議に消費増税改定が絡むことで、関係者間の協議は複雑な様相を呈してきた。

この日の薬価専門部会は消費税率10%引き上げに伴う薬価改定の取り扱いが議論となった。前回10月17日には日米欧の製薬業界団体からヒアリングを行い、業界側は消費税率の引き上げが行われる19年10月に薬価改定を実施すべきと主張していた。厚労省側もこの日示した論点の中で、「19年10月に実勢価を踏まえた上で上乗せすることが自然」との見解を示す一方で、2020年4月の通常改定に直近の市場実勢価を反映できないなどの課題があることを指摘し、各側に意見を求めていた。

支払側の幸野委員は、「(2019年)4月か5月に市場実勢価に基づく薬価改定を行い、再度2020年度の薬価改定に向けて薬価調査をやって決めるほうが精緻なやり方になる」と主張した。消費税の2%が上乗せすることでの「大きな変動」が、国民負担に影響を及ぼすとの考えからだ。19年4月の薬価改定については、すでに実施した18年9月取引分の薬価調査を反映した薬価改定を行い、10月の増税改定を挟んで、19年9月取引分の薬価調査の結果は、2020年4月の薬価通常改定に反映させることを念頭においている。

これに対し診療側の松本委員は、19年4月と10月の2段階改定は「非常に事務負担が大きい」とし、「明確に反対」と表明、真っ向から対立した。松本委員の主張は、単年度に複数回もの薬価改定を行うことは、事務作業が煩雑になり、事実上難しいとの認識を示したものだ。松本委員は「(19年)10月の消費増税に伴う改定のみとすべきだ」と述べた。2020年4月の診療報酬改定の重要性を強調し、「通常の薬価改定と異なる臨時的な薬価改定となる」と強調した。

この日の中医協では、支払側の意見も割れ、「通常の改定と異なる消費税改定での臨時の位置づけだということを明確にするのであれば、現行の薬価制度のルールに則った対応をすべきだということは正論だ」(吉森俊和委員・全国健康保険協会理事)、「今回の薬価改定はあくまで消費税の対応の位置づけ。原理原則に戻って2019年10月に実施するのが自然だ」(宮近清文委員・日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)との意見も出た。

◎10月実施「2020年度の改定に反映できない」

一方で、仮に2019年10月に実勢価格に基づいた薬価引き下げと消費税の転嫁を行うと、「その改定後の実勢価を2020年度の改定に反映できないという課題がある」と厚労省側は強調。厚労省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は、「調査期間等を鑑みると、物理的に非常に難しい」と指摘した。事務的負担などを考慮し、「来年度(19年度)の薬価調査で得られた実勢価をベースとして2020年4月の改定を行うという考え方はひとつの考え方としてあり得るのではないか」と述べた。診療側の松本委員はこれに同調したが、支払側の幸野委員は、「消費税は真の価値につけるべきもので精緻化しなければいけない」と強調。「事務的負担と国民負担のどちらを取るかという議論になる。国民は正しい薬価、消費税を払わなければならない。製薬、医薬品卸の負担がかかるからということは理由にならない」と譲らなかった。

◎「意見を踏まえて関係を整理したい」-樽見保険局長


厚労省保険局の樽見英樹局長は、「少しでも早く実勢価を反映させることと、2019年10月に仮に改定した場合にはその後に薬価調査を行い、その実勢価を2020年度改定に反映させることが難しいということが残る。事務的な負担を踏まえていただいた意見を踏まえて関係を整理したい」と述べた。

事務作業の煩雑さについては日本医薬品卸売業連合会(卸連)が「薬価について、本体価格(税抜き価格)と消費税相当額を明確に区分すること」を業界ヒアリングで求めており、仮に税率引上げを外枠とすれば事務作業が軽減するとの見方もある。

【Focus】社会保障の自然増圧縮と消費税改定


この問題を複雑化させているもう一つの背景として、2019年度予算編成にむけて財務省が社会保障費の自然増をこれまでと同様に5000億円に圧縮する方針をちらつかせていることがある。仮に2019年4月と10月に薬価改定が行われることを想定すると、社会保障費の自然増圧縮分を前提とした改定と消費増税を目的とした“2段階の改定”が行われることを意味する。医療関係者にとって最悪のシナリオは、4月と10月の2段階の薬価引下げにより、2020年度の診療報酬改定の財源を捻出できなくなることだ。

今回の中医協での議論は消費増税への対応を主眼とした議論ではあるが、すでに財務省側から社会保障費の伸びの抑制を前提とした予算編成の方針が示される状況となれば、改定財源の取り扱いなどで医療関係者、保険者、製薬業界の関係者間の思いも複雑となる。19年に1度の薬価引き下げの議論に止まらず、消費増税のための薬価改定の枠を超えた議論に発展する可能性を秘めている。年末の予算編成のヤマ場は12月初旬となる。消費増税そのものが政治マターであることを考えると、製薬業界がこれまで培ってきた薬価・診療報酬改定の慣例とは異なる方向での決着も想定しなければならないところだ。年末にかけて関係団体の交渉が熱を帯びることになりそうだ。(望月英梨)

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