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【FOCUS 新たな意思決定プロセスを伴う組織改革へ】ビジネス変革は営業組織の新たな形づくりから

公開日時 2023/01/10 04:52
DAO(Decentralized Autonomous Organization)をご存じだろうか。分散型自律組織と呼ばれ、世界中の志を同じくする人々と協力して活動でき、メンバーが共同で所有・管理する組織のようなものとされる。DAOにはリーダーやマネージャーのような管理者が存在せず、中央集権的な組織に支配されないという特徴を持つ。Web3.0時代となり、このDAOが俄然注目されている。コロナ禍を経てデジタル社会が進む中で、メタバースのような新たな概念が台頭している。2023年は製薬産業にとってビジネス変革が求められる年になりそうだが、その改革の本丸はいよいよ会社組織に及ぶことになりそうだ。MR数が激減し、支店や営業所の統廃合が進み、さらにはデジタル活用による生産性向上が求められる時代を迎えた。営業・マーケティングは新たな意思決定プロセスを伴う組織改革へと駒を進めることになる。

コロナ禍を経て、製薬各社の営業・マーケティングの手法はデジタルが主流になってきた。ここ3年間は、アナログ時代の活動をデジタルに切り替えるだけの変革に伴ってきたが、2023年はいよいよデジタル活用の真価を見極めるフェーズに入る。MR活動も、オンライン面談やWeb講演会、動画コンテンツ、自社サイト、AIを活用したコールセンターなどが浸透し、MR自身の行動評価(KPI)にも活用成果が位置づけられるだろう。同時に、デジタル活用を定量的に評価する動きもみられる。

製薬企業がデジタルを使って情報発信する範囲も、これまでの医師や医療従事者向けに行ってきた治療領域に止まらず、検査・診断、治療予後といった“ペイシェント・ジャーニー”を、治療アプリやAI問診などのデジタルツールを使ってフルカバーする動きもある。患者の医療アクセスをサポートするだけでなく、病気を克服した後の社会復帰や健康維持までをも含むもので、トータルヘルスケアに製薬企業の活動が歩みを進めていることを意味する。

◎医療DXのその先は患者中心の医療の実現

医療DXは誰のものか? その答えは患者・生活者に他ならない。デジタル社会の発展は患者の医療に対する受療行動に変化を与えることになる。2023年には政府のデジタルヘルス改革が本格化する。マイナンバーカードと一体化された健康保険証や電子処方箋の活用、電子カルテ情報を含む各種データの統合による情報プラットフォームの構築や診療報酬DXの導入など、医療DXに対する政府の本気度が今年は問われるだろう。

今春には政府の医療DX推進本部が2030年までの工程表を策定する。2025年の高齢化のピークを過ぎると、急激な人口減少社会がやってくる。地方経済は昨今の物価高やエネルギー価格の高騰を受けて、より深刻化する可能性も囁かれる。その意味で政府としても医療分野に限らずDX化を進めることは必然となっている訳だ。

◎デジタル情報提供は「点」から「面」へ

では、MR活動にとってこうした時代の市場アクセスはどうあるべきだろうか。先述した通り、DX化が進むと患者の医療アクセスの意識が変わり、在宅でのオンライン診療や服薬指導を求める患者も増えるだろう。患者の利便性を考えれば、電子決済できる環境下で医薬品宅配(ラストワンマイル)は一気に普及する可能性がある。米国のAmazonもこの市場を虎視眈々と狙っている。

MR活動も、これまでのような医師や薬剤師といった「点」の情報提供から、地域・エリアや、専門医集団・非専門医集団といった「面」へのアプローチが求められる。特にデジタルを最適化する観点からは、時間軸や地理的要件を最大化する施策が求められるだろう。旧来型の営業組織の象徴であった支店や営業所ではなく、バーチャル上のコミュニケーションスペースやオフィスが幾つも立ち上がる。そのスペースには、営業所員に混ざって、本社の学術部やデジタルマーケティング、さらにはメディカル部の人材と常にコンタクトできる環境となる。仮にMRが本社学術部の製品担当者に依頼をかけると、即座にオンライン面談の日程が決まり、担当MRの顧客である医師へのアクセスが可能になるという訳だ。もちろんこの考え方には、札幌、東京、大阪、福岡といった地理的要件を越えてアクセスできるため、極端な話をすれば午前中に東京のKOLとミーティングを行い、午後には福岡のプライマリケアグループ向けの説明会を行うことも可能となる。逆に、全国の医師からの問い合わせに対しても、担当MRと本社スタッフが協力・連携することで、迅速に医師側の要求を満たす情報提供が可能となり、処方の機会損失を防ぐだけでなく、アジャイルな対応に医師や医療関係者側の満足度を改善することにもつながるという訳だ。

こうしたビジネス環境への転換は、デジタル社会においては必然であり、全てのプロジェクトの意思決定も、当事者同士のクロスファンクション型の連携で実現可能となる。

冒頭に示したDAOの考え方は、旧来型の企業で見られたトップダウン方式ではなく、当事者同士が緩く連携することで、意思決定のスピードを速めることが可能となることを想定している。かなり成熟された組織が求められるわけだが、デジタル化を前提とした組織の在り方としては、この方向に舵を切る流れが着実にやってくるだろう。

◎次世代型MR活動における営業組織

ミクス編集部として、次世代型MR活動における営業組織の方向性について提案したい。旧来型組織では、本社の組織に営業本部を位置づけ、その下に支店や営業所があり、それぞれの拠点にMRが配属されている。まさに見慣れた組織だ。

一方でデジタルを最適化する組織は、本社と現場MRとの距離を縮めるためのバーチャルオフィスを置き、本社学術、デジタルマーケ、現場MR、そしてオンラインMRがクロスファンクション型で機動的に意思決定する組織を描いている。意思決定までの階層を極力少なくすると同時に、組織的にもフラット化することで、それぞれの当事者同士が連携しやすい環境を整える。これにより現場MRは本社スタッフと頻繁に連絡を取り合いながら、医師側の疑念や質問にアジャイルに応える活動に注力する。

一方で本社スタッフもMRとのコンタクトを強めることで、必要に応じてMRが行うオンライン面談に参加し、医師とのディスカッションを行うことで、医師側のニーズを満たす活動に協力することができる。

2023年はビジネス変革の元年となる。MR数が激減する一方で、デジタルMR活動はこれからが本番を迎える。営業組織の改革は抵抗感も強いと思われるが、社会構造や社会システムが大きく変わる中で、いよいよ組織改革にもメスを入れるタイミングが来た。大胆な改革こそが成功への扉を開くことになる。その一歩を踏み出すのは、今かもしれない。
(ミクス編集長 沼田佳之)
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