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中医協 新型コロナ特例見直しへ議論開始 診療側「特例継続を」支払側「極めて限定的に」

公開日時 2023/03/02 04:52
中医協総会は3月1日、新型コロナの5類感染症移行を踏まえ、診療報酬上の特例の見直しに向けて議論を開始した。診療側は長島公之委員(日本医師会常任理事)が「類型は変更されるが、ウイルスの感染性および感染対策の必要性は変わるものではないことを中医協の共通認識とすべき」として、「現在の特例を継続していただくよう強く要望する」と主張した。一方、支払側は松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が「5類への移行を一つの節目として、診療報酬の特例措置についても、平時の姿に戻していくことが中医協に求められている。ソフトランディングのためにも、一部の特例を残すとしても極めて限定的な対応とし、最終的に特例の廃止を目指す」と表明。二類感染症患者入院診療加算は予定通り今月末での廃止を求めた。診療・支払各側の意見に隔たりのあるままこの日の議論は終えた。政府は議論を踏まえ、3月上旬にも具体的な方針を決める見通し。

◎5類以降で医療提供体制は段階的な移行へ 

政府は1月27日に、新型コロナについて、5月8日から季節性インフルエンザと同等の5類感染症に位置付けることを決定した。医療提供体制については、「必要となる感染対策や準備を講じつつ国民の安心を確保しながら段階的な移行を目指す」と明記。これまで診療・検査医療機関が中心だったが、広く一般的な医療機関による対応に移行するなかで、診療報酬上の特例措置についても段階的な見直しを含めて検討・調整を進めるとされている。

新型コロナの診療報酬上の特例としては、外来では「感染予防策を講じた上でのコロナ疑い患者に対する診療(院内トリアージ実施料(300点))」、「発熱外来における疑い患者への診療(初診時の上乗せ250点(R5.3まで。3月は147点))」、「自宅・宿泊療養患者に緊急に薬剤を配送した上での対面/電話等による服薬指導(対面500点、電話等200点)」、入院では「重症患者への対応(特定集中治療室管理料等の3倍(+8,448~+32,634点))」、「コロナ回復患者の転院受入の評価(二類感染症患者入院診療加算750点、30日目まではさらに+1,900点、その後90日目までは+950点)」などの複数項目がある。

◎入院医療 高齢化に伴って介護・リハビリ、退院支援業務が増大 厚労省調査

厚労省はこの日の中医協に、12病院、8診療所を対象にコロナ診療の実態についてヒアリングを行った結果を示した。外来医療、入院医療ともにノウハウの蓄積などにより、一部の業務の効率化は進んでいた。一方で、外来医療では、空間分離又は時間分離など必要な感染対策は継続しており、そのための人員の確保やPPEの使用を行っていた。入院医療では、重症化率が低下しているものの、高齢化が進んでいるのに伴って介護・リハビリや退院支援に関する業務が増大していると説明した。

◎診療側・長島委員 入院調整やフォローアップ、療養指導「新たな業務が発生」

診療側の長島委員は、かかりつけ以外の患者も広く受け入れることが求められるなかで、「今後は地域を面として、より多くの医療機関に、普段は自院に通院していない患者さんも含めて幅広く対応いただくよう、我々も努力していく」と述べた。そのうえで、「しかし、医療現場では引き続き感染対策を講じる必要がある」と強調。厚労省の調査結果から、医療現場が看護師の増員や感染対策の継続していることを踏まえ、「診療報酬上の適切な評価を行っていただくことを強く要望する」と述べた。これまで保健所や地方自治体の行ってきた「入院調整や陽性患者のフォローアップ、療養指導などについては今後、医療機関が担うこととなる。新たな業務が発生することが予想されるが、その場合には財政支援も重要となる」と述べた。

また、患者の高齢化が進むなかで、「高齢の患者さんは元々、基礎疾患や機能障害、あるいは低栄養等の特徴があり、重症化リスクが高い状態だ。加えて、現場では日常の介助や認知症への対応などもあり、従事者の負担が増している」と指摘。オミクロン株が主流となって以降、要介護高齢者の感染が増加し、医療機関での介護の負担が増加しているとして、「これまでのように、主に急性期病院で陽性患者を受け入れるだけでなく、特に高齢者に関しましては、中小病院が引き受けなければ、通常の医療提供体制に戻せない。介護保険施設等における医療支援を充実させるとともに、中小病院が陽性患者の入院を引き受けられるように適切な対策を講じることも必要だ」と指摘。「今後の各地域における医療提供体制への取り組みを支え、類型変更に伴い、入院調整等の新たな業務への対応が必要になることも考慮し、現在の特例を継続していただくよう強く要望する」と述べた。

◎診療側・島委員 特例継続でなければ「医療施設は精神的にも体力的にも持ちこたえられない」

診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は、「高齢者の罹患が増え、死亡者が増えてきていることを考えると、コロナ病床への看護配置、感染防御も含め、コロナ感染症患者に対応する体制は変わりなく行わなければならない」と指摘。「現実にはタミフルのような特効薬がない状態でウィズコロナの医療を行っていかなければならない。現在のコロナ特例を継続してもらわなければ、医療施設は精神的にも体力的にも持ちこたえられないような状況にある。医療を受ける全ての患者さんにとっても大きな損失になると考えているので配慮をお願いしたい」と述べた。

◎診療側・池端委員「国民も医療界も通常の感染症になった認識はないのでは」

診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、「科学的にもあるいは国民感情的にも、医療界なかでも国民のなかでも、コロナが普通の通常の感染症になったという認識は持っていない方が大多数ではないか」と指摘。「5類相当になったことで、社会の動きがどうなっていくかと慎重に見定めながら、そこに対する医療提供体制を少しずつ緩めていくことが必要だ」との認識を示した。

◎支払側・松本委員 二類感染症患者入院診療加算「今月末で予定通り廃止すべき」

一方、支払側の松本委員は、ウイルス変異や医療現場におけるノウハウの蓄積により、「状況はかなり変わってきたと思う」との認識を示し、“平時の姿”に戻す必要性を指摘した。

外来医療については、「経験の蓄積で業務を効率化されているということを踏まえれば、特例措置の縮小は可能だと考える」と述べた。具体的には、「感染予防策を講じた上でのコロナ疑い患者に対する診療(院内トリアージ実施料(300点))」、「二類感染症患者入院診療加算(250点、3月1日から147点)」はいずれも月平均300万回程度算定されていると説明。「医療費ベースで月に約165億円、半年間で約1000億円と、医療保険財政にはかなりの影響がある」と指摘。22年度改定で外来感染対策向上加算を新設したことを踏まえ、少なくとも147点(二類感染症患者入院診療加算)は予定通り今月末で廃止すべき。さらにベースとなる院内トリアージ実施料(300点)については、本則と大きく異なる運用になっているので、見直しを検討すべきと強く主張する)と述べた。

診療側が類型見直しに伴い、療養指導やフォローアップ、入院調整などの業務が増えることを主張したのに対して、「患者への療養指導や増加時の入院調整は医療機関の本来業務であり、軽症患者の増加を踏まえ、救急医療管理加算(950点)の特例も見直すべき」と主張した。

◎回復患者の転院受入評価「確実に縮小すべき」

入院医療については、「重症患者への対応(特定集中治療室管理料等の3倍(+8,448~+32,634点))」、「中等症患者への対応(救急医療管理加算の4~6倍(3,800~5700点))」と通常の数倍の点数設計となっている。松本委員は、「ICUでの集中的な治療が減少し、ハイケアユニットで概ね対応できていることがうかがえる。ヒアリング結果から、そこまでの増員は必要がなくなっていることがわかった。少なくともいまのように通常の数倍という点数が妥当とは言えないと考える」と述べた。22年度改定で、人工呼吸やECMOの評価が拡充されたことも考慮し、特例点数は縮小すべき」と主張した。「高齢者のコロナ患者や介護施設からの入院が増加するなかで、平均在日数やADLの低い患者を急性期病棟で対応するというのは医療の質や機能分化の観点から改善の余地があると考えている。ただし、単純な報酬による誘導だけではなく、患者の状態に合った病院病棟での受け入れが進むよう工夫が必要だ」とも述べた。

また、「コロナ回復患者の転院受入の評価(二類感染症患者入院診療加算750点、30日目まではさらに+1900点、その後90日目までは+950点)」については、「すでに感染力のない患者が受け入れていることを考えると、これまでは特例として後方病床の確保のために必要であったことは理解できるが、類型変更後は確実に縮小すべき」と主張。「点数も算定できる日数についても極力減らすべき」と述べた。

感染対策については、「22年度改定で新設した感染対策向上加算や外来感染対策向上加算では対応できないのか、慎重に見極めるべき」と述べた。

◎支払側・松本委員 オンライン診療のコロナ特例「即時廃止を求める」

このほか、論点にはないが、コロナ特例として、初診からの電話・情報通信機器を用いた診療についての点数が設定されていたが、「医療の質の観点で極めて問題があると考えている」と指摘。22年度改定で公益裁定により初診からのオンライン診療が恒久化されたことを踏まえ、「特例措置は明らかに役目を終えたものと考える。ルールに基づいて、安全・安心な体制で患者に向き合うことはあるべき姿として当然だ。オンライン診療、オンライン服薬指導を健全に普及させるために特例措置の即時廃止を求める」とも述べた。
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