日本眼科医会・白根会長 保険適用外の近視進行抑制薬に「子どもの医療格差が生じる」 保険適用を
公開日時 2025/06/09 04:50

日本眼科医会の白根雅子会長(しらね眼科院長)は6月6日、参天製薬主催の小児近視に関するプレスセミナーで、国内初の近視の進行抑制薬・リジュセアミニ点眼液が保険適用外となっている現状について、同医会として保険適用を「希望している」と強調した。リジュセアで近視治療を開始すると、その治療期間中の検査・診察・薬剤の費用だけでなく、視力矯正(眼鏡やコンタクトレンズの処方)も全額自己負担になる。白根会長は「(リジュセアの保険適用外は)非常にデメリットの大きい制度」だとし、家庭の医療費負担の大きさを背景に「子どもの医療格差が生じることは非常に問題」と指摘した。国に小児期の近視治療の意義を訴え、リジュセアの保険適用を求めていく考えを示した。
参天製薬が製造販売するリジュセアミニ点眼液0.025%(一般名:アトロピン硫酸塩水和物)は、国内初の「近視の進行抑制」を効能・効果に2024年12月に承認され、今年4月21日に発売された。通常1回1滴、1日1回就寝前に点眼して用いる。ただ、薬価基準未収載医薬品で、健康保険等の公的医療保険の給付対象外(保険適用外)となった。
◎リジュセアで治療中は眼鏡合わせの検査も全額自己負担
学校健診で視力低下が指摘されて眼科を受診し、近視と診断された場合、現在は多くのケースで、▽外遊びなど屋外の活動時間を増やす、▽スマホなどで近くのモノを長時間見ない――などの生活習慣の改善と経過観察を行い、必要に応じて眼鏡などが処方される。これらの医療行為の費用は、自治体の医療費助成制度によるものの、多くの地域で患者負担はかからない。
一方、近視に対してリジュセアで治療を開始した場合、この治療を継続している間は、近視に係る眼鏡合わせの検査を含む全ての医療行為が全額自己負担になる。多くの医療機関でリジュセアの価格は4380円(税込)/30日分で、これに検査や診察の費用が別途かかる。なお、途中でリジュセアによる治療をやめて経過観察に移行すると、その後の近視に係る医療行為は保険適用となるが、リジュセアは投与中止後に近視が急に進行(=リバウンド)する可能性があるため、近視の進行が安定する10代後半までの投与継続が推奨されている。
◎白根会長 リジュセアによる治療の普及、子どもの医療格差への影響を懸念
白根会長は、小児期の近視には将来の失明リスクや、緑内障や網膜剥離などの眼合併症リスクが高まることがわかっているため、小児期に近視の進行を適切に管理することが望まれていると説明した。進行管理の基本は「生活習慣の見直し」となるが、治療選択肢としてリジュセアが登場したことに「日本で初めて承認された待望の近視の進行抑制薬」だと歓迎した。
しかし、「残念ながらリジュセアによる治療のスタートにあたり、保険適用にならず自由診療になった」とし、「自由診療になると、(リジュセアで治療する)近視の子どもを持つ家庭の医療費負担が大幅にアップしてしまう」と指摘した。そして、「リジュセアによる治療の普及や子どもの医療格差に影響」することを懸念していると言い、「子どもの半数が近視となった現代における子どもたちの眼、ひいては国民の眼を守る意義について、(国や国民に)理解を深めていただけるよう努力する」と述べた。