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Special Report 細かいCVRを設定? 仏サノフィが米ジェンザイム買収で

公開日時 2011/02/17 06:59

ようやく決着したかというのが、仏サノフィ・アベンティスによる米ジェンザイム買収の行方を注視していた関係者の感想ではないだろうか。(ヤマトファルマ・緑川労)


米一般紙、業界紙などが、サノフィ・アベンティスがジェンザイムとの買収交渉を行っているようだと最初に報じたのが、昨年7月23日、サノフィ・アベンティスが公式に敵対的株式公開買い付け(TOB)をジェンザイムに仕掛けたのは10月4日に遡る。


両社は当初、買収交渉を行っている事実も明らかにせず、水面下での交渉を行っていたようだが、サノフィ・アベンティスがTOBをオファーしてからも、ジェンザイムにホワイトナイトは現れなかった。2010年末から、TOBオファー期間を2度延長し、2度目の期限が2月15日午後11時59分だった。


◎バイオテックの強化、稀少疾患領域進出、米市場強化目指す


サノフィ・アベンティスは、主力品の抗血小板薬プラビックス(一般名:クロピドグレル)、抗がん剤タキソテール(一般名:ドセタキセル)などの特許切れに直面した。営業戦略やR&D戦略の再構築に迫られ、新たなビジネスモデルとして稀少疾患治療薬分野に着目したというわけだ。折しも、主力品ファブリー病治療薬・Fabrazyme、ゴーシェ病治療薬・Cerezymeが生産工程での障害で製品不足を招き、業績への影響も不可避とみられていたジェンザイムに注目したことが発端となったと見られる。


サノフィ・アベンティスのChristoper Viebacher CEOは、1月22日にサンフランシスコで開催されたJPモルガン主催の会議で、あたかも、遅々として進まぬ買収交渉に業を煮やしたかのように、今後の経営戦略として、バイオテックの強化、稀少疾患領域進出、米市場強化を訴えた。そのためにジェンザイム買収が必要だと投資家の理解を求めた。


一方で、ジェンザイムは、当初からサノフィ・アベンティスの買収オファーを金額的に問題にならないと拒否を続けていた。最初の提示額は1株当たり69ドルだったが、ジェンザイムは80ドル以上を希望していたと伝えられた。


ジェンザイムは、サノフィ・アベンティスの提示額はジェンザイムの価値に見合っていないという立場を崩さなかったため交渉が長引いたわけだが、2月22日の会議でも、ジェンザイムのHenri Termeer会長、社長兼CEOは、Fabrazymeなどの供給不足は2011年中には解消できると述べた。


その上で、多発性硬化症(MS)治療薬・Lemtrada(一般名:alemtuzumab)が有望な薬剤であることなどから業績回復の道をたどると同社が高い価値を持っていることを訴えた。なお、同剤は現在、Campathの製品名で白血病治療薬として販売されている。


◎買収成功の裏に不確定価額受領権(CVR)の設定


1月24日には、サノフィ・アベンティスはLemtradaの売上が伸びた際に株主が一定の現金を受けられる「不確定価額受領権」(CVR)を検討していると発表した。1株当たり69ドルを主張していたサノフィ・アベンティスが、実質1株当たり金額を上げることで譲歩したと言える。1月31日には、これを受けた形で、ジェンザイムが財務状況等の調査であるデューデリジェンスを受け入れる契約をサノフィ・アベンティスと交わしたと発表している。なお、これに先立つ、1月12日、欧州委員会(EC)は、サノフィ・アベンティスのジェンザイム買収提案を許可していたので、欧米メディアや証券アナリストらは、買収はほぼ決まったとの見通しを立てていた。


両社は不確定価額受領権(CVR)についてかなり詰めて交渉したようだ。


買収発表によると、▽Cerezyme、Fabrazymeの生産レベルが2011年中にフルになったら1ドル▽米食品医薬品局(FDA)が、LemtradaをMS治療薬として承認した場合、1ドル――とした。


さらに売上については、一定の地域で一定の期間内に発売後売上が合計4億ドルを超えたら2ドルとしたほか、全世界売上高については、18億ドルを超えたら3ドル、23億ドルを超えたら4ドル、28億ドルを超えたら3ドル――とした。売上高には、Lemtradaの売上が大きく影響することになりそうだ。


サノフィ・アベンティスのViebacherCEOは、「ジェンザイムとの契約はわれわれの長期戦略に合致するもので、株主に対し重要かつ長期的価値を創造するもの」とした上で、「Lemtradaが市場の期待を超えるなら、CVRは2社をつなぐ重要な価値の<橋>として、両社の株主に報いる」とコメントしている。買収交渉成功の裏にCVRの設定があったと言える。


ジェンザイムのTermeerCEOは、「この買収はジェンザイムにとって新たな始まり」とコメントしている。その上で、ジェンザイムはイノベーションとユニークな技術で患者にアプローチをしてきたと稀少疾患に特化している状況を説明。「サノフィ・アベンティスは我々が行っていること、我々の人材、我々の可能性を信じている。サノフィ・アベンティスとともに持続的な将来を構築する」と意欲を示した。


買収は、すでに欧州委員会(EC)に加え、米国連邦取引委員会(FTC)の許可を取得しており、2011年第2四半期に完了する予定だ。


 
 
 

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