旭化成・工藤社長 独・Aicuris社買収「30年の売上目標3000億円の形は出来た」 3社目のM&Aに自信
公開日時 2026/02/27 04:53

旭化成の工藤幸四郎代表取締役社長は2月26日、ドイツの医薬品開発企業Aicuris Anti-infective Cures AGを約1431億円で買収すると発表した。同社の医薬事業におけるM&AはVeloxis、Calliditasについで3社目。工藤社長は会見で、「現中計での大型買収はこれで一段落。これにより2030年度の売上高3000億円を目指す形は出来た。強いパイプラインを作る実力がついた」と計画達成に強い期待感を表明した。また、常務執行役員・グローバルファーマ事業統括の青木喜和氏(旭化成ファーマ社長)は、「3つ目の強力なピースを手に入れることができた」と強調し、医薬事業の持続的な成長基盤の確立を目指す考えを改めて強調した。
◎ニーズにピッタリ合う企業がAicuris社 「実は想定より早いタイミングで買収を判断した」
「医薬事業が持続的に成長するには、安定的に研究開発投資を継続できる事業規模と収益基盤が不可欠だ。我々は2030年までに売上高3000億円を目指しているが、これは単なる規模拡大でなく、自社の創薬で持続的な成長を図れるように研究開発投資を自律的に回せる体制を確立することだ」-、工藤社長は会見の冒頭でこう強調した。その上で今回のAicuris社買収の背景に触れ、「我々のニーズにピッタリ合う企業がAicuris社で、実は想定よりも早いタイミングではあったが買収の判断に至った」と明かしてくれた。
工藤社長はまた、「今回の買収により同社の重点領域の一つである重症感染症領域で強力な製品とパイプラインを獲得することができた」と述べ、「これに伴い早期の収益貢献が見込めるだけでなく、医薬事業の持続的成長の基盤が整った」と自信をのぞかせた。なお、Aicuris社の買収方法は、米完全子会社のVeloxis社を通じ、Aicuris社の全ての発行済み株式等を取得するとしており、2026年度第1四半期中の買収完了を目指す方針だ。
一方で工藤社長はAicuris社買収に伴う収益見通しに触れ、「2028年度には売上高で約300億円を見込んでいる。この時点でのれん等償却後でも営業黒字を達成でき、早期の収益貢献が可能だ。さらに2030年度に売上高750億円となるなど、大きな利益貢献を見込んでいる」と強調した。
◎青木喜和常務執行役員 「M&Aやライセンスを積極的に取り入れることも特徴の一つ」

常務執行役員・グローバルファーマ事業統括の青木喜和氏(旭化成ファーマ社長)は旭化成の医薬事業の特徴に触れ、「重点領域である自己免疫疾患、腎臓疾患、免疫疾患、重症感染症に共通する“免疫学”という共通基盤を持つことで研究開発や人材などを横断的に活用できる」と述べた。この結果、低コストで小規模な臨床試験を行うことができるほか、「販売でも対象となる医師や医療機関が限られるため、専門性の高い少数のMRでカバーできる」と指摘。「開発も営業も小規模で成立する前提で事業設計しているため、費用を抑えつつ収益性を維持向上させることが可能になる。さらに自前の創薬のみにこだわらずM&A(Veloxis、Calliditas)やライセンスを積極的に取り入れていることも特徴の一つ」と強調した。
その上で、同社としてM&A3社目となるAicuris社については、「重症感染症領域で複数製品を持つことで、市場でのプレゼンスや事業開発機会が拡大するもの」と指摘。Aicuris買収の戦略的意義について青木氏は、①重症感染症領域における魅力的な製品・パイプラインの獲得、②Veloxis、Calliditasが築いてきた移植・腎領域ネットワークなど両社の経営基盤や無形資産の相互活用、③持続的な成長基盤の早期確立-をあげた。
◎海外3社買収 「ここにこそコングロマリット・プレミアムが発揮されている」青木氏
青木氏はまた、「2018年以降に医薬事業は3件の買収を行った」と振り返りながら、「個人的にはここにこそコングロマリット・プレミアム(企業グループの市場価値が、各事業が単独で存在した場合の価値の合計を上回る現象)が発揮されていると思う。グループ内のM&Aチームが事業側と協力して一瞬にしてワンチームになれる。すなわちエクセキューション(実行力)、ケイパビリティ(組織力)こそが他社にない差別化要因ではないか」と振り返った。