武田薬品・11-13年中期計画 多様な新製品群にシフト 国内MRは全製品対応
公開日時 2011/05/12 04:02
武田薬品は5月11日、2011~13年の中期計画を発表し、「大型成熟品を中心とした製品構成から、新製品を中心とした多様な製品ラインアップへのシフトを進める」との目標を掲げた。年間売上が1000億円以上の4つの大型製品(アクトス、ブロプレス、タケプロン、リュープリン)で業績を支えていたビジネスモデルから、年間売上が数百億円規模の多様な中型製品を多く手掛けて持続成長させるモデルに転換していくというもので、この方向は日本市場も指向する。それでも武田薬品の国内営業は、一部の専門MRを除いて、1人のMRが全製品を担当する従来の戦略をとる考えだ。
武田薬品はこの日、重点疾患領域として、従来からの▽代謝性疾患(糖尿病・肥満症)▽がん▽中枢神経疾患――に、免疫・炎症性疾患を新たに加えた。武田薬品の国内MR数は約2000人だが、うち約50人は「がん・免疫専門MR」として専門施設を中心に情報活動している。
武田薬品の長谷川閑史社長は同日開いた2011年3月期(10年度)決算の説明会で、「1人のMRが多数の製品を有効に販売することはかねてから行っている。(10年度は)8品目を上市したが、一部の製品については指摘があるかもしれないが、予想を超えた売上を達成した製品もある」と述べ、専門MR以外の「ジェネラルMR」については、1人で多くの製品を担当した方が競争力が高いとの認識を示した。
◎DPP-4阻害薬ネシーナ 11年度の国内目標は75億円
また、中期計画では09年以降に販売した製品を「新製品」(配合剤含む)とした上で、新製品群と既存製品群との売上構成比の目標を示した。日本市場の構成比は、10年度は新製品群が6%に対して既存製品群が94%だが、これを15年度には同45%対55%まで新製品群を引き上げる。
このためにはまず、DPP-4阻害薬ネシーナの11年7月の長期処方解禁を機に、早期に同社の経口血糖降下薬全体で売上高1000億円を達成させる。なお、ネシーナの11年度売上目標は75億円。また、ブロプレスとCCBアムロジピンとの配合剤ユニシアを含めてARBナンバー1の地位を堅持しつつ、ブロプレス後継品でベストインクラスとなり得るARBアジルサルタン(一般名)について12年度に承認取得する計画だ。
更に、▽抗がん剤のベクティビックスやベルケイド▽CNS領域の睡眠導入剤ロゼレムやアルツハイマー型認知症用薬レミニール▽免疫・炎症性疾患領域の関節リウマチ薬エンブレルと、関節リウマチの適応取得を目指している経口投与の生物学的製剤Tofacitinib(ファイザー開発中、日本は武田薬品と共同販促)--で、各疾患領域でのポジションを確立させる考え。長谷川社長は説明会で、「(日本の)製品ラインアップの変革を着実に進め、国内ナンバー1の地位を盤石なものとしたい」と話した。
なお、国内の承認取得計画は、11年度がネシーナとアクトスとの配合剤、12年度がアジルサルタン、13年度が肥満症用薬「ATL-962」、高トリグリセライド血症用薬「TAK-085」、腎性貧血用薬「peginesatide」。14~15年度では、▽代謝性疾患・循環器系疾患領域▽がん領域▽免疫・炎症性疾患領域等――で各2品目、中枢神経疾患領域で1品目としている。
◎連結業績 13年度を底にV字回復へ
一方、武田薬品の連結業績見通しは、09年11月にランソプラゾール(国内製品名:タケプロン)が、12年8月にはピオグリタゾン(国内製品名:アクトス)の単剤、同年12月には配合剤が相次いで米国特許切れを迎えることから、11年度を売上のピークに13年度まで右肩下がりに推移する厳しい業績を見込む。それでも重点疾患領域への積極的な研究開発投資や、多様な新製品の上市、中国を中心とする新興国市場での販売力強化、企業買収・製品導入などに取り組むことで13年度を底に業績をV字回復させて、15年度には10年度レベルまで収益を回復させ、その後の持続成長に入る計画を立てている。
◎今回から主要品の国内売上計画を公表
武田薬品の10年度業績は、米国でのベルケイド、アクトス、新製品の逆流性食道炎治療薬デクスラントや痛痛・高尿酸血症治療薬ユーロリックの伸長に加え、国内での8品目の上市などで増収効果があったものの、ランソプラゾールの米国特許切れや円高影響(マイナス607億円)などにより、全体としては減収となった。減収による売上総利益の減少から、各利益段階で減益となった。なお、武田薬品は今回の業績発表から、主要製品の次年度の売上目標を公表した。
【11-13中期計画 13年度業績見込み】
売上高1兆2600億円(10年度実績=1兆4194億円)
研究開発費2900億円(2889億円)
営業利益2400億円(3671億円)
純利益1600億円(2479億円)
【10年度連結業績(前年同期比) 11年度通期予想】
売上高1兆4193億8500万円(3.2%減) 1兆4500億円(2.2%増)
営業利益3670億8400万円(12.6%減) 3900億円(6.2%増)
経常利益3715億7200万円(10.6%減) 3950億円(6.3%増)
純利益2478億6800万円(16.8%減) 2500億円(0.9%増)
【10年度国際戦略製品売上高(前年度実績)11年度予想、億円】
ピオグリタゾン3879(3833)3930
ランソプラゾール1336(2161)1090
カンデサルタン2180(2183)2190
リュープロレリン1164(1204)1140
【10年度国内売上高(前年度実績)11年度予想、億円】
ブロプレス1380(1326)1460
うち、エカード104(7)115
うち、ユニシア47(-)200
タケプロン709(723)810
リュープリン659(653)670
アクトス479(512)440
エンブレル384(323)非開示
ベイスン322(419)285
ベネット176(174)180
ベクティビックス94(-)165
セルタッチ87(104)90
乾燥弱毒性麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」83(82)70
ネシーナ16(-)75
ロゼレム10(-)35
レミニール5(-)非開示
注)アライアンス先の開示方針により一部非開示としている。