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【ADA速報】新規SGLT2阻害薬・カナグリフロジン 臨床第3相試験で良好な血糖コントロール示す 膵β細胞機能改善の可能性も

公開日時 2014/06/16 09:00

日本人2型糖尿病患者において、新規SGLT2阻害薬・カナグリフロジンの単剤は、プラセボに比べ、HbA1c値を有意に低下させ、血糖コントロールを向上させる一方で、女性の性器感染症や無症候性低血糖の増加はみられたものの、忍容性も高いことがわかった。同剤の二重盲検下ランダム化比較臨床第3相試験の結果から示された。試験結果からは、体重減少や収縮期血圧値降下に加え、膵β細胞機能の向上を示唆するデータも報告された。京都大大学院医学系研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学の稲垣暢也教授が6月14日、米国・サンフランシスコで6月13日から開催されている第74回米国糖尿病学会(ADA)のポスターセッションで報告した。
(6月15日 米国・サンフランシスコ 望月英梨)


試験は、食事・運動療法ではコントロール不十分な日本人糖尿病患者におけるカナグリフロジン単剤の有効性、安全性を検討する目的で実施された。


対象は、20歳以上でHbA1c値7.0~10.0%の2型糖尿病患者272例。4週間のrun-in期間後、カナグリフロジン200mg 群88例、カナグリフロジン100mg 群90例、プラセボ群93例にランダムに割り付け、治療効果を比較した。治療を完遂できなかったのは、カナグリフロジン200mg群6.7%(6例)、カナグリフロジン100mg群6.7%(6例)、プラセボ群20.4%(19例)。主要評価項目は、投与開始24週のHbA1cの変化量。


ベースラインの患者背景は、年齢がカナグリフロジン200mg群57.4±11.1歳、カナグリフロジン100mg群58.4±10.4歳、プラセボ群58.2±11.0歳、HbA1c値は8.04±0.77%、7.98±0.73%、8.04±0.70%、空腹時血漿グルコース(FPG)は165.2±34.5mg/dL、157.7±35.7mg/dL、163.0±32.6mg/dL、食後2時間血糖値は322.1±76.2mg/dL、311.4±70.9mg/dL、312.5±69.6mg/dL、体重は69.88±14.22kg、69.10±14.48kg、68.57±15.15kgだった。


その結果、主要評価項目のHbA1cの変化量は、プラセボ群に比べ、カナグリフロジン200mg群で1.05±0.10%、100mg群で1.03±0.10%有意なHbA1c降下を示した(いずれも、p<0.001)。合併症予防の治療目標値であるHbA1c値7.0%未満を24週時点で達成したのは、カナグリフロジン200mg群35.2%、31.5%、6.6%だった。


FPGはベースラインに比べ、カナグリフロジン200mg群で31.9mg/dL、100mg群で31.6 mg/dL減少したのに対し、プラセボ群では3.7 mg/dLの増加が認められ、両群ともに有意な降下を認めた(p<0.001)。食後2時間血糖値もカナグリフロジン200mg群で79.0 mg/dL、100mg群で84.9 mg/dL減少したのに対し、プラセボ群では0.5 mg/dLの減少にとどまり、同様に両群ともに有意な降下を認めた(p<0.001)。
体重は、プラセボ群に比べ、カナグリフロジン200mg群で3.26±0.50kg、100mg群で3.00±0.49mg/dL有意に減少した(p<0.001)。そのほか、カナグリフロジン投与群では収縮期血圧値の低下やHDL-C値の増加が認められた。


75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を行ったところ、カナグリフロジン投与群では、血漿グルコース値はベースラインよりも減少したのに対し、Cぺプチド(CPR)値は変化が認められなかった。薬物血中濃度―時間曲線下面積(AUC)とAUCの増加率についてCPR/グルコース比をみても、いずれもカナグリフロジン群で有意な上昇が認められた(AUC 200mg群:p<0.05、100mg群:p<0.05 AUCの増加率 200mg群<0.001、100mg群<0.05)。また、膵β細胞の機能を評価するプロインスリン/CPR比は有意な減少、HOMA2-%Bは有意な増加を示し、膵β細胞機能の向上が示唆された。


一方、安全性については、有害事象の発生率はカナグリフロジン200mg群で61.8%(55例)、100mg群で65.6%(59例)、プラセボ群で59.1%(55例)だった。重篤な有害事象は、1.1%(1例)、1.1%(1例)、2.2%(2例)で、因果関係が疑われる重篤な有害事象や死亡はなく、有意な増加は認められなかった。
性器感染症はカナグリフロジン200mg群1例、100mg群2例、プラセボ群で1例報告された。カナグリフロジン群で報告された症例は全例が女性で、女性のリスクの高さが示唆された。ただ、いずれも重篤でなく、治癒しており、再発もしていない。尿路感染症はすべての群で1例ずつ報告された。また、浸透圧利尿に関連した有害事象である頻尿は、カナグリフロジン200mg1例、100mg群4例、プラセボ群1例で、カナグリフロジン群で高率に発生する傾向がみられた。


低血糖は、重篤な低血糖はいずれの群でも認められなかった。症候性、無症候性に分けてみると、症候性の低血糖はカナグリフロジン200mg群1例、100mg群2例、プラセボ群2例で群間差は認められなかった。一方で、無症候の性低血糖は5例、4例、2例で、カナグリフロジン群で高率である傾向がみられた。

 


◎稲垣氏「膵β細胞機能改善も期待」 低血糖など有害事象に留意を

京都大大学院医学系研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学 稲垣暢也教授に聞く
京都大学医学部附属病院 副院長


この薬剤は、日本では5番目のSGLT2阻害薬となるが、すでに米国で発売されており、エビデンスもグローバルでは蓄積されてきている。有効性は、他の薬剤と大きな違いはないのではないだろうか。ただ、75gOGTT値のデータはこの薬剤に特徴的なデータだ。血漿グルコース値が減少しているのに、CRP値の変化は認められていない。インスリン分泌能に変化はないが、糖毒性が取れ、相対的に膵β細胞のインスリン分泌能力が改善してきていることを示している。


そのため、長期的な予後改善効果も期待されるが、この薬剤も臨床現場に登場してしばらくの間は慎重に投与することが求められる。日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」でも、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹・紅斑に注意喚起を呼びかけている。これらの有害事象は、SGLT2阻害薬のクラスに属す薬剤すべてで注意すべきだが、全身性皮疹・紅斑はイプラグリフロジン薬剤特有のものか、クラスによるものか、慎重に見ていきたいと考えている。

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