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武田薬品 ARB・ブロプレスの臨床研究CASE-Jで組織的関与 糖尿病の新規発症で有利な結果得る

公開日時 2014/06/23 03:52

ARB・ブロプレス(一般名:カンデサルタン)の臨床研究「CASE-J」の臨床研究不正をめぐり、武田薬品は6月20日記者会見を開き、同剤の付加価値最大化を目的に、研究の企画段階から学会発表、論文作成まで、一貫して組織的かつ継続的な関与があったとの第三者機関の調査結果を公表した。奨学寄附金による総額37億5000万円の資金提供や、複数の社員による労務提供により、京都大学EBMセンターの運営を含めてサポートされており、「医師主導臨床試験である実質的なスポンサーであった」と結論付けた。副次評価項目である糖尿病の新規発症については、当初の解析方法では“有意差なし”だったが、同社が研究者に定義を変更するよう働きかけ、結果としてブロプレスに有利な結果を引き出していたこともわかった。試験結果の公平性、客観性も疑問視されるところだ。一方で、同社の試験データへのアクセス、データの改ざんやねつ造、解析作業への直接的関与は認められなかったとした。


第三者機関であるジョーンズ・デイ法律事務所の調査報告書によると、同社はブロプレスの付加価値最大化、売上最大化を図る、競合品との差別化のツールとして医師主導型臨床試験によるアウトカムスタディの実施を検討。試験の企画段階では、▽試験事務局の選定、▽研究責任医師、運営委員候補への就任依頼、▽試験の大枠の決定、▽奨学寄附金について専門医と相談、決定―していた。「自らの目的をもって試験に必要な人(=専門医の手配)、もの(=事務局の選定)、金(=寄付金)に主体的かつ能動的に決定し、そのお膳立てをしたことも事実」(森雄一郎弁護士)と指摘した。

試験の立ち上げ、症例追跡調査に際しては、京都大学に試験の実施に必要な知識・経験・人材が不足していることから、事務・運営上の課題について定期的に同社と京都大学EBMセンターの担当者が集う会議を開き、協議がなされていた。立ち上げ段階では、プロトコルの作成、データマネジメントシステムの構築、試験実施施設・参加医師の選定などに全面的に関与。京都大学関係者と同社関係者が揃う「京大‐武田ミーティング」を月に1~2回開催し、試験のサポートを行っていた。試験実施施設の選定、参加医師の選定に際しては、同社の営業網を活用して候補医師のリストアップと参加に向けた打診が行われていた。一部のMRでは同社から貸与されたパソコンを用い、調査票の入力作業をサポートしていた。


◎試験のプロセスに武田薬品の意向反映


追跡調査期間終了後には、「試験のプロセスに武田薬品の意向を反映させる働きかけが始まった」(森弁護士)。類似した臨床試験で、ARB・ディオバン(一般名:バルサルタン)とアムロジピンの有効性を比較検討した「VALUE」試験両群間に有意差が認められなかったことから、CASE-J試験結果を懸念。ブロプレスに有利な結果とならなかったことによる売上への悪影響を懸念。「CASE-J対応プロジェクト」を立ち上げ、対策を検討した。“糖尿病の新規発症率”など、ブロプレスに有利な結果が出る可能性が高い追加統計解析項目を統計解析計画書に反映されるよう研究者に働きかけた。


ただ、実際の結果は主要評価項目である累積心血管イベントの発生率、糖尿病の新規発症率ともに、ブロプレスに有利な結果とはならず、対照薬であるCa拮抗薬・アムロジピンと有意差が認められなかった。そこで、同社担当者が定義を変更した解析を行うよう働きかけ、糖尿病の新規発症抑制効果がブロプレスに認められることとなった。慢性腎臓病(CKD)についてのサブ解析でも2群間に有意差が認められず、同社がそれまで行ってきたプロモーションと反することから、研究者に対し、図表の差し替えなどを提案している。


発表に際しても、同社社員が学会発表用のスライドを提供。ブロプレスが有意な見せ方となるよう、メタボリックシンドロームへの有効性や全死亡のカプランマイヤー曲線を盛り込むよう研究者側に修正を提案、最終スライドに盛り込ませていた。


◎武田薬品・長谷川社長「CASE-Jは医師主導臨床研究」

武田薬品の長谷川閑史代表取締役社長は冒頭で、「本来であれば、企業が関与してはいけない医師主導臨床試験に対し、複数の関与や働きかけを行っていたことを深くお詫びする」と謝罪した。「複数の不適切な関与や働きかけが、CASE-J試験の公平性に疑義を生じさせ、ひいては製薬企業全体の信頼性を揺るがしかねない行為だったことを反省している」と述べた。


組織レベルの関与があった点については、社内調査で認められておらず、第三者機関の調査報告で覆った形だが、「調査は不十分であったことは真摯に受け止め、反省している」と述べた。自身や社員の責任問題については、「報告内容を重く受け止め、外部の弁護士に入っていただいているコンプライアンス委員会で可及的速やかに検討していただく。退職した人もいるが、総合的に考えていきたい」とした。


試験の実施施設の選定から当初からマーケティング、売上向上を目的とした“Seeding Trial”ではないか、との指摘については、「(施設選定と販促を)直接結びつけることは飛躍がある。EBMセンターからの依頼に応じて手伝った」とした。また、現在もCASE-J試験は医師主導臨床研究だと考えているか、との質問に対しては「はい、そう思っている」と述べた。
 
 

◎記事広告疑念のカプランマイヤー曲線 薬事法違反ではない

同試験のメイン図表である、累積心血管イベントの発生率を示したカプランマイヤー曲線については、商業誌Medical Tribuneに掲載された記事広告「CASE-Jに学ぶ」をはじめ同社販促資材で、ブロプレスに有利なよう図表を改ざん、改変の疑念がもたれている。しかし、第三者機関は同社が京都EBMセンターから紙ベースで図を入手したと説明。数値データは入手していないことから、科学的事実であるデータや解析作業を操作したという事実は確認されていないとした。また、ブロプレスに有利に見えるような意図的な改変を行ったという事実も認められなかったとした。


薬事法の虚偽・誇大広告への抵触も懸念されたが、▽試験結果、試験データについてねつ造、改ざんが認められなかった、▽販促資材全体をみると、医師の誤認を生じさせるとまではいかない、▽カプランマイヤー曲線が完全について同一でなくても誤解は生じない―ことなどから、「薬事法違反とはならない」と結論付けた。また、糖尿病の新規発症抑制効果についても、同様に承認外の効能・効果を記載されているとまでは言えないとした。ただ、ブロプレスの長期的有効性を示す「(曲線の交差部分である)ゴールデンクロスという言葉は、誰が提案し、使われるようになったのか定かではない」(岩﨑真人医薬営業本部長)との発言もあり、全貌解明には至っているとは言い難い。



試験はオープンラベルで行われているため、中間解析以降、患者の脱落や背景因子などに介入が働いていたとの指摘もある。しかし、報告書では中間解析についても「調査していない」としており、調査自体が不十分である可能性もある。


なお、第三者機関として調査に当たったジョーンズ・デイ法律事務所のクライアントとして、武田薬品の米国子会社が含まれており、同事務所ホームページ上にも記載されている。第三者としての中立性が懸念されるところだが、会見で同法律事務所は顧客であることは認めたものの、顧問関係などは否定し、「適切な関係だ」とした。
 

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