米・アッヴィ シャイアーを320億ポンドで買収 法人税対策も背景に
公開日時 2014/07/23 03:50
米・アッヴィとアイルランド・シャイアーは7月18日、アッヴィが総額320億ポンド(5兆5360億円:1ポンド=173円)で、シャイアーを買収することに合意したと発表した。アッヴィは、5月以降、シャイアーに対して買収提案を行い、価格をめぐる協議を4回にわたり行ってきた。シャイアーは都度提案受け入れを拒否していたが、今回5回目で合意した。
アッヴィは、1株当たり52.48ポンドでシャイアーの全株式を買い取る。アッヴィが7月半ばまでに提案した買収案における、シャイアーの株主に割り当てる現金の提示額よりも2ポンド上げ、24.44ポンドとした。これにシャイアーの株式1株当たりにアッヴィ株0.8960株を割り当て、合計52.48 ポンドを割り当てる。両社の統合で売上規模は、年商約240億ドル(2013年世界売上単純合算、2兆4000億円:1ドル=100円)、従業員数は約3万人となる。売り上げ規模では、英アストラゼネカ、米イーライリリー並みで世界ランキング8、9位程度となる。
アッヴィは、C型肝炎治療薬などの開発も進行中だが、売上の約6割を占める関節リウマチ治療薬・ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)が2016年に特許切れを迎えることから、対策に迫られていた。
シャイアーは、希少疾患や中枢神経領域に注力しており、これらのパイプラインがアッヴィにとって魅力となった。ADHD(注意欠陥多動性障害)治療薬・Vyvanse、Adderal XR、ファブリー病治療薬・Replagal、などを有し、スペシャリティファーマとしての強みを発揮してきた。
今回の買収の目的のひとつとして、課税対策も挙げられる。統合後の新会社として持ち株会社を設立。その傘下にアッヴィ・グループとシャイアー・グループが入り、持ち株会社本社を英国に移した上で、ニューヨーク株式市場(NYSE)に上場する計画だ。
本社を英国に移すことで、法人税の実効税率が13年の22.6%から16年までに13%まで減少するという。5月に米・ファイザーが英・アストラゼネカの買収へ向けての動きがあったが、この理由のひとつとしても米国の法人税の税率の問題が指摘されていた。
アッヴィのRichard A Gonzalez会長兼CEOは、「アッヴィとシャイアーの統合で、我々はユニークで多角的なバイオ医薬品企業を創造する。統合会社は、ベスト・イン・クラスの製品開発プラットフォームおよび強力なパイプラインそして研究開発力を一層強化することによって、ベネフィットを獲得する」と意欲を示した。
シャイアーのSusan Klisby会長は、「我々は、成長の早い製品ポートフォリオ、有望なパイプラインそして有望な成長展望を持った統合会社となる。スペシャルティファーマ分野でのマーケットリーダーとなれる2社の補完関係が適切だと信じている」と話している。