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中医協・薬価専門部会 500億円超など“巨額”製品 市場拡大再算定の要件見直しへ 業界は反対

公開日時 2015/11/12 03:51

中医協薬価専門部会が11月11日開かれ、年間売上高500億円超など「年間販売額が巨大な品目」について、市場拡大再算定の算定要件を見直すことを診療側、支払い側が大筋で了承した。現行のルールでは、革新性が高く薬価の高い医薬品、例えばC型肝炎治療薬・ソバルディ、ハーボニーなどは市場拡大再算定の対象とならないが、今回の見直しで対象となる範囲が拡大される見通しが強まった。現行のルールでは、類似薬効比較方式で算定された新薬であれば、効能追加など使用実態の大きな変化がなければ対象品目にならなかったが、これを見直す。また、予想年間販売額“2倍”とするルールも巨額製品では基準倍率の引下げを検討する。加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬常務執行役員)は、「類似薬効比較方式で算定された薬剤について、市場拡大の事実のみをもって引き下げることは妥当ではない。売れすぎだから下げるということは改めて反対だ」と主張。巨額製品については市場拡大再算定とは異なる例外的なルールの設定を求めた。


現行ルールでは、原価計算方式では▽予想年間販売額2倍以上、かつ、年間販売額が150億円超、▽予想年間販売額の10倍以上、かつ、年間販売額が100億円超---の場合、類似薬効比較方式では効能追加など使用実態の変化があり、予想年間販売額の2倍以上かつ年間販売額が150億円超の場合が市場拡大再算定に該当する。


加茂谷委員は、市場を急速に拡大した製品について、革新性や有用性により「多くの患者のニーズを満たした結果だと考えている」と述べ、製薬企業がイノベーションに取り組んだ結果との姿勢を示した。現行のルールについては、「薬価の再算定は、主たる効能効果や用法用量の変化、不採算に陥った場合など、新規収載時の前提条件が変化した場合に適応するルール」との認識を示した。その上で、今回の提案はこうした前提条件に合致しないとした上で、「現行のルールの基準の延長戦で議論するのではなく、例えば1000億円超など、当初予定されていた以上に市場が拡大したなど、例外的な別枠ルールで検討していただきたい」と訴えた。


これに対し、支払い側、診療側ともに算定要件の見直しに賛同し、業界からの理解を求めた。支払い側の石山惠司委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療改革部会部会長代理)は、需要を想定して価格が決まっていると指摘し、引下げの妥当性を強調した。その上で、巨額の目安として、2001~15年8月に収載された539成分のうち、収載時予測販売額が500億円以上では1割弱の16成分となることを示し、「今後の議論だが、500億円がひとつの基準になってくるのではないか」と述べた。


診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「ソバルディ、ハーボニーという画期的、かつ非常に薬価の高い薬が出たが、今後こうした薬剤はどんどん出てくる」と指摘した上で、「要件を新たに見直すことには賛成する」と述べた。その上で、類似薬効比較方式の薬剤については、個別品目を中医協で判断する仕組みも提案した。


◎基礎的医薬品 2016年度改定で試行的導入へ



この日の薬価専門部会では、基礎的医薬品、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の論点も示された。基礎的医薬品については、現行の不採算品再算定、最低薬価になる前の薬価を下支えする制度として提案され、16年改定での試行的導入について大筋で合意された。


基礎的医薬品の対象品目の要件としては、▽保険医療上の必要性が高い、▽医療現場において、長期間にわたり広く使用されていることから、有効性・安全性が確立されている、▽製造設備の改修も含め、継続的に市場への安定供給を確保することが必要――であるものとした。


2016年度改正では、複数回の薬価改定を受けても市場実勢価格と薬価との乖離が小さく、古くから医療の基盤となっている治療領域の医薬品や、過去に不採算再算定を受けたことのある医薬品を対象とすることが盛り込まれた。抗生物質や中枢系医療用医薬品、抗がん剤などが含まれることが想定される。このうち、一般的なガイドラインに記載されていないものや、特定の医療機関のみで使用されている医薬品など、汎用性のない医薬品は除くこととした。対象品目については、薬価算定組織に基礎的医薬品の該当性を確認してもらった上で、中医協で決定し、制度化に向けて引き続き検討することになる。



◎新薬創出加算 現行の制度維持・継続へ 外資企業の多さ問う声も



新薬創出加算については、現在の試行的導入が維持・継続される方向で、各側が大筋で同意した。この日業界側は、新薬創出加算が革新的医薬品の開発、ドラッグ・ラグの解消につながっているとのデータを提示。後発医薬品80%目標が示される中で、「特許期間中の新薬から研究開発原資の確実な確保が可能になるよう、新薬創出加算は現行の要件のまま維持・継続すべき」と主張した。


業界側は、要望対応品目や真に医療の質向上に貢献する医薬品が800以上あると説明。さらに、将来“未承認薬”となることを防止することができる、世界同時開発も多く進められていると説明。世界に先駆けて革新的新薬の国内開発をしている場合に指定される「先駆け審査指定制度」に50品目が申請されたことなどを説明した。国内開発には約3100億円が投資されている。


これに対し、診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「新薬創出加算は革新的新薬の創出につながっていることが確認できた」と維持・継続に賛同した。


一方で、支払い側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「試行的導入を判断するに当たっては、(2010年度の試行的導入からの累積で)2000億円の投資対効果をきちっと検証して議論していくことが必要」と指摘。開発の投資金額だけでなく、“アウトカム”を重視することの必要性を強調した。

これに対し、厚労省保険局医療課の中井清人薬剤管理官は、「ドラッグ・ラグをなくすというだけでなく、イノベーションを促進し、日本から発信していけるように、審査体制も強化してきた。新薬品目を見ると、こんな品目も開発されているんだなと感触的には思う」と述べ、新薬創出加算の効果が着実にあがったとの見方を示した。


加茂谷専門委員も、「製薬企業の立場としても、国民皆保険維持はマーケットの観点からも最優先課題。イノベーションの評価と財政効果が両立されるような制度は絶対に必要だ」との認識を示した。その上で、長期収載品から後発医薬品への置き換えが進む中で、医療費適正化効果額が2014年度には5500億円まで増加したことも鑑みた評価を求めた。


新薬創出加算品目を有する企業は中外製薬がトップで、加算額は65.8億円。サノフィ(加算額・58.5億円)、ファイザー(同・57.6億円)、グラクソ・スミスクライン(同・50.0億円)、日本イーライリリー(同・49.5億円)と続き、上位5社すべて外資系企業で、これについて診療側が問いただす一幕もあった。加茂谷専門委員は新薬創出加算の目的のひとつがドラッグ・ラグ解消であるとした上で、「迅速に医薬品が臨床現場に導入されるためには、外資系企業のプレゼンスが高まることは政策上致し方ない」と理解を求めた上で、「この状況を内資系企業が満足しているわけではない。若干の時間的猶予は欲しいが、新薬創出力向上とその成果は必ずや得られるものと確信をしている」と述べた。
 

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