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薬食審・第二部会 キムリアの前処置、副作用に用いる薬剤の承認了承

公開日時 2019/02/25 03:51

厚生労働省の薬食審医薬品第二部会は2月22日、国内初のCAR-T細胞医療として承認が了承されたノバルティスファーマの「キムリア」の前処置や副作用に使う医薬品の承認を了承した。このうち中外製薬が承認申請したアクテムラ(一般名:トシリズマブ)は、CAR-T細胞医療で半数以上に発現するというサイトカイン放出症候群の副作用治療薬として承認されることになった。

22日の第二部会では、アクテムラの適応追加含め9製品の承認の可否が審議され、いずれも承認が了承された。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
アクテムラ点滴静注用80mg、同200mg、同400mg(トシリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。迅速審査品目。再審査期間4年。

中等度以上のサイトカイン放出症候群(CRS)患者が対象となる。CRSは、CAR-T療法で発現率が50%以上という高頻度にみられる副作用で、過剰な免疫反応に伴い、細胞から多量のサイトカインが放出され、血中のサイトカイン濃度が高度に上昇することが原因で起こる。症状の多くは、発熱や筋肉痛などの軽度から中等度のインフルエンザ様のものだが、一部の患者では、重度の低血圧、頻脈、呼吸困難などが誘発され、死亡することもある。

この副作用に対し同剤は、サイトカインの1つ、インターロイキン6(IL-6)の働きを抑えることから、治療効果が期待されている。

国内で同適応症を効能・効果とする薬剤は他にない。キムリア以外の腫瘍特異的T細胞輸注療法にも用いることができる。CRSに関する適応は、海外では、欧米で承認済。

デュピクセント皮下注300mgシリンジ(一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者に限る)」を効能・効果に追加する新効能・新用量・その他の医薬品。再審査期間は残余(2026年1月18日)まで。

気管支喘息に適応を持つ他の抗体医薬の効能・効果は、「既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る」と、コントロール不良の難治患者を適応にしているが、同剤は「重症または難治の患者」と「重症」が含まれ適応がやや広い。そのため同剤は、高用量ではなく、中用量の吸入ステロイド薬を用いてもコントロール不良なケースにも用いることができる。その旨を添付文書の「効能又は効果に関連する使用上の注意」に明記する。

同剤は、慢性的な炎症で中心的な役割を果たしているとされるIL-4、IL-13のシグナル伝達を阻害する作用を持つ。成人と12歳以上の小児が投与対象で、初回の600mgを投与し、その後は1回300mgを2週間間隔で投与する。現行の効能・効果は「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」。

海外では、気管支喘息の適応では米国で2018年10月に米国で承認済。

スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL(リサンキズマブ(遺伝子組換え)、アッヴィ):「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。

同剤は、炎症に関わるIL-23を阻害する作用を持つ。成人に1回150mgを初回に投与後、12週間間隔で投与する。

テリルジー100エリプタ14吸入用、同30吸入用(フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロールトリフェニル酢酸塩/ウメクリジニウム臭化物、グラクソ・スミスクライン):「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間6年。

汎用されている吸入ステロイド(ICS)、長時間作用性吸入抗コリン剤(LAMA)、長時間作用性吸入β2刺激剤(LABA)の配合剤。1日1回投与。呼吸が低下している患者に対し、複数の吸入器を用いず、1回で必要な薬剤を投与できることに配合の意義があると判断した。

海外では、慢性閉塞性肺疾患の適応で欧米で承認済。

スマイラフ錠50mg、同錠100mg(ペフィシチニブ臭化水素酸塩、アステラス製薬):「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。

種々の炎症性サイトカインによる細胞内シグナル伝達に役割を果たすJAKを阻害することで、関節リウマチにおいて関節の炎症や破壊を引き起こす細胞の活性化や増殖を抑制する作用を持つ。アステラスが創製した経口JAK阻害薬。承認されれば、関節リウマチに対するJAK阻害薬は3製品目。海外承認なし。

ビクタルビ配合錠(ビクテグラビルナトリウム/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸、ギリアド・サイエンシズ):「HIV-1感染症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。

新規のインテグラーゼ阻害薬ビクテグラビル50mg、核酸系逆転写酵素阻害薬のエムトリシタビン200mgとテノホビル アラフェナミド25 mgを配合したもの。1日1回投与。

海外では2018年12月時点で、欧米など56の国・地域で承認済。

ラビピュール筋注用(乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン、グラクソ・スミスクライン):「狂犬病の予防及び発病防止」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。

現在、狂犬病ワクチンを製造販売しているのはKMバイオロジクス(販売:アステラス製薬)のみ。海外では74の国・地域で承認済。

リサイオ点滴静注液100mg(チオテパ、大日本住友製薬):「小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。迅速審査。再審査期間8年。

小児がんの治療には、抗がん剤や放射線照射を極量まで増やす骨髄破壊的な前治療を行って難治がんを根絶した後に、正常な造血幹細胞を経静脈的に輸注して造血能の再構築を図る「造血幹細胞移植」(HSCT)という治療法があり、チオテパはこの「前治療」に用いる。もともと同剤はDNA合成阻害作用を持つ抗腫瘍性アルキル化剤で、かつてテスパミン注射液の名称で販売していた。09年に販売を中止したが、海外で造血幹細胞移植の前治療薬として承認されてから、日本でも使えるよう関連学会から要望が出されていた。

学会の要望を受け、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議は医療上の必要性が高いと判断、同省が行った開発企業の公募に大日本住友が申し出で、治験を実施した。

海外では2018年10月時点、この適応で欧州など35の国・地域で承認済。

リツキサン点滴静注100mg、同500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「CD20陽性の慢性リンパ性白血病」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。

抗CD20モノクローナル抗体。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の検討を経て、厚労省から開発要請されたもの。同剤は、全薬工業と中外製薬が共同販売している。

海外では2018年11月時点、この適応で欧米など122の国・地域で承認済。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

フルダラ静注用50mg(フルダラビンリン酸エステル、サノフィ)
▽注射用エンドキサン100mg、同500mg(シクロホスファミド水和物、塩野義製薬)
ベプシド注100mg(エトポシド、ブリストル・マイヤーズスクイブ)
ラステット注100mg/5mL(同、日本化薬)
エトポシド点滴静注液100mg「サンド」(同、サンド)
エトポシド点滴静注液100mg「タイヨー」(同、武田テバファーマ)
エトポシド点滴静注液100mg「SN」(同、シオノケミカル)
キロサイドN注400mg、同1g(シタラビン、日本新薬)
シタラビン点滴静注液400mg「テバ」、同1g「テバ」(同、武田テバファーマ)
トレアキシン点滴静注用25mg、同100mg(ベンダムスチン塩酸塩、シンバイオ製薬)
:いずれも「腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置」を効能・効果とするその他の医薬品。迅速審査品目。トレアキシンのみ再審査期間が残っており、2020年10月26日まで。

いずれもキムリアの承認申請に伴うもの。培養したCAR-T細胞を患者の体内に戻す際に、前処置として投与される。リンパ球中に過剰な免疫反応を抑制する働きをもつ制御性T細胞が多く存在するとCAR-T細胞の働きを抑えてしまうため、前もってリンパ球を減らすために投与する。キムリアの用法・用量に従って使用する。これまでに同療法の前処置を効能・効果とする医薬品は国内、海外ともにない。
 

▽点滴静注用ホスカビル注24 mg/mL(ホスカルネットナトリウム水和物、クリニジェン):「造血幹細胞移植後のヒトヘルペスウイルス6脳炎」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。迅速審査。再審査期間なし。
 
日本造血細胞移植学会による造血幹細胞移植後ヒトヘルペスウイルス6脳炎の治療薬としての開発要望を受け、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が検討、医学・薬学上公知であるとして公知申請が妥当と判断したもの。学会の要望によると、脳炎を発症した20~30%の患者は脳炎により死亡し、生存者のうち約半数は記憶障害やてんかん等の後遺症が認められたと報告がある。日本にはこの適応症を持った治療薬がない。
 
リウマトレックスカプセル2mg(メトトレキサート、ファイザー):「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。迅速審査。再審査期間なし。
 
追加する適応症は、日本皮膚科学会からの要望を受け、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が検討、医学・薬学上公知であるとして公知申請が妥当と判断したもの。
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