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厚労省が医療経済実態調査を報告 人件費高騰で利益圧縮 診療側はプラス改定へ意欲

公開日時 2019/11/14 03:52
厚生労働省は11月13日、中医協に医療経済実態調査の結果を報告した。一般病院の2018年度損益差額はマイナス2.7%。18年度改定を経て、17年度から0.3ポイント改善したものの、赤字基調であることが明らかになった。特に国公立は共に赤字で、国立がマイナス2.3%、公立がマイナス13.2%となった。人件費の高騰などが影響した。20年度診療報酬改定の改定率は年末の予算編成で決定されるが、依然として病院経営の厳しさが残るなかで、日本医師会などは18年度の改定率0.55%を上回る引上げを求めることは必至の情勢だ。市場実勢価格に基づく薬価引下げが事実上決定的となるなかで、改定率をめぐる攻防が年末にむけて本格化する。

◎国公立を中心に依然として赤字基調

18年度医療経済実態調査の結果を一般病院の損益差額を経営主体別にみると、医療法人は2.8%(17年度:2.6%)だったものの、国立が▲2.3%(▲2.1%)、公立が▲13.2%(▲13.0%)、公的が▲0.3%(▲1.4%)で、18年度改定を経ても国公立を中心に依然として赤字基調にある。このほか、精神科病院は0.2%(0.4%)だった。一方、一般診療所の損益差額は29.9%(31.4%)で、依然として病院・診療所間の格差が縮まっていないこともわかった。

◎保険薬局 前回改定後の利益は圧縮

一方、保険薬局は5.5%(6.9%)だった。個人は9.8%(10.7%)、法人は5.4%(6.8%)だった。同一グループの保険調剤を行っている店舗数が「20店舗以上」で7.6%(8.9%)、「6~19店舗」で7.2%(8.3%)、「2~5店舗」で2.0%(3.9%)、1店舗で1.2%(1.9%)。以前黒字ではあるものの、18年度改定後の利益が圧縮されている。18年度改定では、医療経済実態調査でも20店舗以上のチェーン薬局が二桁の黒字だったことを踏まえ、診療報酬の外枠としてチェーン薬局にメスが入った経緯もある。医療経済実態調査を通じ、利益の圧縮傾向がみられたなかで、今後の議論の展開も注目される。

◎前回改定率0.55%を上回るプラス要求 早くも視野

全世代型社会保障をめぐる負担増の議論もあるなかで、日本医師会など診療側は、今回の医療経済実態調査の結果を踏まえ、プラス改定を政府・与党に強く求める方針だ。日本医師会の横倉義武会長は11月1日の記者会見で、西村経済再生相が経団連に継続的な基本給のベースアップ(ベア)を求めたことを引き合いに、「約200万人の医療関係者を置いてきぼりにするのか。社会が給料を上げないといけないという風潮にあるなかで、それに反するのはとんでもない」と釘を刺している。今回の実調の結果からも、人件費の高騰が病院の利益を圧縮していることから、前回18年度改定の改定率0.55%を上回る引上げを要求する素地は整ったとの見方もある。給与面の課題などで病院薬剤師の確保の難しさが課題となるなかで、基本料の引上げで病院薬剤師などを通じて勤務医の負担軽減にも取り組む考え。医師会は従来から、「診療報酬は人件費の補填」との考え方を崩しておらず、基本料の上乗せへ強い姿勢で臨むこととなりそうだ。

政府の全世代型社会保障の議論をめぐり、医師会など医療関係団体は高齢者の窓口負担増や受診時定額負担制の導入に反対の立場だ。政府・与党は改革の方向性について年内に中間とりまとめを行うことにしているが、奇しくも今回の予算編成は、給付と負担をめぐる議論と20年度診療報酬改定がそれぞれ絡むだけに、改定財源の確保を政府・与党に強く迫る好機との見方も浮上している。年末の予算編成をめぐる攻防は一気にヒートアップしてきた。



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