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厚労省 がん全ゲノム解析で「当初から産業利用視野にデータ利活用体制構築」 

公開日時 2019/12/04 04:51
厚生労働省の「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」は12月3日、議論を取りまとめた。がん全ゲノム解析の利活用を通じ、革新的新薬を創出し、プレシジョン・メディシンの実現に向けて加速することが期待される。報告書では、「創薬などの産業を活性化させるため、当初から産業利用も視野に入れたデータ利活用体制を構築する」ことを盛り込んだ。収集する検体数について記載は見送ったが、実臨床への応用を重視することを前面に打ち出した。欧米でのがんゲノムデータベースの構築が進むなかで、「海外に遅れを取らないようスピード感を重視すべき」とも指摘。産官学が一体となったオールジャパン体制でがん全ゲノム解析を推進する必要性を強調した。

全ゲノム解析をめぐっては、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」でも、数値目標や人材育成・体制整備を含めた具体的な実行計画を、2019年中を目途に策定することが盛り込まれており、同部会で検討が進められてきた。

◎先行解析通じて体制整備・人材育成を進展


検体の収集に当たっては、①罹患数の多いがん種や難治性のがん、②小児がんを含む希少がん、③小児がんを含む遺伝性腫瘍—の3類型などを対象とする。まずは、バイオバンクなどを活用した「先行解析」を実施し、日本人のがん患者の分子疫学情報データベースを構築。全体方針を固めたうえで、本解析を行う。先行解析のなかで、日本人に特徴的なゲノム変異を明らかにするとともに、本解析に向けた体制整備・人材育成を進める考えだ。

先行解析では、罹患数の多い固形がんとともに、難治性がん、希少がん、小児がん、遺伝性腫瘍など、予後の改善が早期に望まれるがん種、または相対的にこれまで治験が少ないがん種を優先して解析を行うとした。なお、主要な5か所のバイオバンクでは、罹患数の多いがんは約5万5000症例、小児がんを含む希少がんは約6700症例、遺伝性がんは約1万4000症例が保管されているという。

◎本解析 創薬ターゲットなどで優先的なデータ集積も

本解析については、「実臨床に応用可能」であることを重視し、目的を明確にして新規検体を収集する必要性を指摘した。さらに、「創薬ターゲットとなることが期待される有望なゲノム変異が発見された場合や、より効果的な予防、診断、治療法等の研究開発が期待される知見が発見された場合」について、「特定の症例解析を優先的に進める」と踏み込んだ。一方で、懸案となっていた新規検体の数値目標については、「先行解析の解析状況等を踏まえて検討する」とするにとどめ、必要に応じて見直す必要性も指摘した。なお、収集が可能ながんの新鮮凍結組織は年間に、ハイボリュームセンター(国内4施設程度)で最大1000症例程度、がんゲノム医療中核拠点病院で最大500症例程度としている。

収集されたデータは、「がんの病態解明、予防、診療支援、診断・治療法の開発等につなげることが想定される」と明記。早期から産業利用を視野に入れたデータ整備を進めるとともに、知財の在り方や費用負担などの課題を整理する必要性も明記した。また、ビッグデータとして利活用するなかで、情報ネットワーク・セキュリティ対策の必要性なども指摘した。

また、先行事例を踏めてアカデミアや医療機関、産業界、患者団体などが連携した産官学連携体制の構築の必要性も強調。がんゲノムをめぐる“オールジャパン体制”を確立することで、がんゲノム医療の実現にアクセルを踏みたい考えも盛り込んだ。

同部会は12月5日、「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」に報告する方針。




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