中医協総会は12月13日、“使用ガイド付きの医薬品集”と銘打ち、フォーミュラリの作成および維持を行う特定機能病院の体制評価をめぐり議論を行った。厚労省は、フォーミュラリにより、医薬品の適正使用や後発品の使用推進などが期待できると説明。地域基幹病院である特定機能病院への導入で地域に波及する姿を描いた。診療・支払各側共に有用性は認めたものの、診療報酬上での評価をめぐっては意見が割れた。支払側の幸野庄司委員（健康保険組合連合会理事）は、後発医薬品使用体制加算の算定要件とすることを提案し、「診療報酬上で評価すべき」と述べた。これに対し、診療側の松本吉郎委員（日本医師会常任理事）は、反対を表明。支払側のなかでも、吉森俊和委員（全国健康保険協会理事）も現時点での導入に慎重な姿勢をみせるなど、各側内でも意見は集約せず、“フォーミュラリ加算”の導入には黄色信号がともった。

この日、厚労省は、特定機能病院での入院時の医薬品適正使用推進の観点から、“使用ガイド付きの医薬品集”（フォーミュラリ）の作成・維持を行う体制面での評価を提案した。病院薬剤師が、「有効性、安全性、経済性」に関するエビデンスを収集、分析・評価。医師と協議してフォーミュラリ案を検討。薬事委員会での審査を経て決定する。第一選択薬でない治療薬を選択した際に、処方オーダー画面でアラートが鳴るなど、注意喚起することも想定する。同種同効薬の新薬が発売されたタイミングなどで、アップデートの必要性も指摘している（関連記事）。

診療報酬上ではすでに、後発品の情報を収集・評価し、薬事委員会などで採用を決定する体制の評価として「後発医薬品使用体制加算」がある。後発品80％時代が目前に迫るなかで、ARBやPPIなどで後発品のない先発品の処方が多いことなどが、後発品使用促進による薬剤費適正化を阻む一因として指摘されている。こうしたなかで、フォーミュラリによる後発品使用促進への期待高まっていた。

◎医師の裁量・医薬品の使用制限への影響に懸念も

診療側の有澤賢二委員（日本薬剤師会常務理事）は、「単に経済性だけでなく質と高い有効性を示す観点から有益」として、体制面での評価に賛同した。そのうえで、「後発医薬品使用体制加算の様々な既存の評価項目の一部に要件化するのが良いのではないか」との見解を示した。支払側の幸野委員も、後発品80％時代が迫るなかで、後発医薬品使用体制加算の要件化に加え、「地域の模範となる拠点病院なので、後発品の使用状況や経営的効果を測定し、報告するということも要件に入れる」ことを提案した。

一方で、診療側の松本委員は、「医療機関レベルで検討の場がある場合はいい」と述べ、各医療機関でDI室などを通じて運用する意義を認めた。そのうえで、メーカーの回収や撤退時の安定供給に懸念を示し、「診療報酬と結びつけることは現時点では反対する」と述べた。さらに、医師の処方権への影響も、「医師全体の総意のないところで、ガイドラインによって制限がかかる。非常に製薬企業の説明がどこに行くかも含めてしっかりと検討して考えるべき。かなり影響はする」と口にした。

診療側の今村聡委員（日本医師会副会長）は、特定機能病院で初期研修を受ける医師が多いことに触れ、「違いがあることを知ることができるからこそ、適切な処方ができるということもある。ルールを作ることが経済原則だけを進めると、使用される薬が制限される」と懸念を示した。

◎診療報酬上の評価に「時期尚早」の声　中小病院での実施に課題も

これに対し、支払側の吉森委員は理解を示し、「評価しないと推進しないかということをどう考えるか。しっかり議論する必要がある。保険者としては点数をつけないとやらないのか、となってしまう」との考えを表明。診療側の城守国斗委員（日本医師会常任理事）は、「診療報酬で評価するのはまだまだ早い。最適化をどう取り入れることができるのか、もう少し検討していく余地があるのではないか」と同調した。松本委員は、「取り組みをすることを阻害するわけではないが、特定機能病院のような人員のあるところ、余裕のあるところで中小病院では無理だ」と診療報酬上での評価に改めて反対の姿勢を強調した。

◎“アウトカム”を測る尺度の必要性指摘　診療側・今村委員

今村委員は、診療報酬上で評価するための「アウトカムは一体何なのか。後発品の使用率だけを評価して点数をつけることはあり得ない」と改めて反発した。

支払側の幸野委員は一歩も譲らず、安全性や経済面でのアウトカム評価ができるとの考えを表明。「評価しないと推進するスピードが遅くなる。ルールが標準化されてくる。地域中核病院が先陣をきってやるということは一定の評価があってもいいのではないか」と理解を求めた。