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INES 「新薬イノベーション研究会」立ち上げ ファイザーと武田が参加 新薬評価など提言へ

公開日時 2020/08/05 04:52
社会保障などの分野で政策立案や提言を行う新時代戦略研究所(通称:INES、朝井淳太代表、梅田一郎理事長)は8月4日、「INES新薬イノベーション研究会」を立ち上げたと発表した。医療用医薬品市場の中でイノベーティブな新薬が適正に評価されることを検証・研究するのが目的で、製薬企業は現時点でファイザーと武田薬品が参加する。INESの朝井淳太代表は同日のオンライン会見で、アカデミアや日米欧の研究開発型製薬企業に同研究会への参加を呼びかけ、政策立案者との意見交換を重ねて2021年3月を目途に提言書を取りまとめる意向を示した。

朝井代表は会見で、同研究会では▽長期収載品や後発品の価格の妥当性▽比較的軽い疾患(軽医療)で処方数量が出ている医薬品のあり方▽イノベーティブな医薬品の定義――などを議論の俎上にあげ、「(イノベーティブな新薬に)適切に財源を配分する仕組みを構築していくために、あらゆるステークホルダーと議論していく」と語った。また、「厳しい財政状況の中で国民皆保険を維持しつつ、日本の患者さんがイノベーションの恩恵を享受し続けられるために、今の制度にとらわれない新しい枠組みを検討する」と述べ、厳しい医療保険財政の中でも革新的新薬が適正に評価される新たな薬価制度の構築に意欲を示した。

INESは、大蔵省出身で労働相や経済企画庁長官を歴任した自民党衆院議員の近藤鉄雄氏が政界引退後の1997年に設立したもの。民間の立場で研究し、政治家や中央官庁の官僚らと意見交換しながら各種提言をまとめている。

■薬剤の「市場規模」と「患者の年間標準治療費」を踏まえた議論を

この日の会見では、INES理事で同研究会に賛同する法政大学経済学部の小黒一正教授らによる論文「イノベーティブな医薬品の評価と新たな薬価システムの枠組みの検討」(Jpn Pharmacol Ther(薬理と治療)vol.48 no.5 2020)が紹介され、論文内容に市場データを当てはめて分析した結果をIQVIAが報告した。

小黒教授は、薬価制度改革の視点として、薬価と当該薬剤の使用患者数を掛けあわせて算出した「市場規模」と、患者や家計に過度な負担になるリスクを避けるために「患者の年間の標準治療費」をクロスさせた議論の必要性を指摘した。

クロスさせた上で、改革の優先順位として、(1)患者の年間の標準治療費は小さいが、市場規模は大きいもの(2)年間の標準治療費は小さく、市場規模も小さいもの(3)年間の標準治療費は大きく、市場規模も大きいもの(4)年間の標準治療費は大きいが、市場規模は小さいもの――の順で議論すべきとした。代替薬の有無も重要なポイントとした。

このうち、(1)に該当する医薬品は軽医療にあたるものとなる。小黒教授は該当医薬品として湿布剤、花粉症に用いる抗アレルギー薬、イノベーティブではない抗生物質製剤――を例示。「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助で」との考えを示し、(1)の該当医薬品を公的保険の給付対象とすべきかどうかを問題提起した格好となった。

(4)に該当する医薬品の一例として、国内初のCAR-T細胞療法キムリアを挙げた。キムリアの収載時の薬価は3349万円と超高額だが、ピーク時の使用患者数予測は216人のため、市場規模は72億円と小さい。小黒教授は、「薬価は見かけ上の変数で、重要ではない」と指摘し、高額薬剤だから保険財政に大きなインパクトを与えるわけではないと強調した。ちなみに、(1)に該当する湿布剤は薬価が120円前後だが、膨大な使用数量のため市場規模は1500億円程度と大きく、財政へのインパクトは大きいと説明した。

小黒教授は今後、市場規模、患者の年間の標準治療費のほか、薬価維持の期間やピーク時売上までの年数といった時間軸も入れて検討を深めていく考えを示した。

■家計負担小さく財政効果大きい製品 シミュレーションでは18製品に

小黒教授らの論文内容に実際の市場データを重ねてみるとどうなるのか。IQVIAの高山莉理子・ソートリーダーシップマネージャーはこの日、年間売上200億円以上の98製品を対象に分析した結果を紹介した。

98製品の合計年間売上は約4兆円で、国内市場の約半分を占める。患者1人あたり年間薬剤費の高低を分ける閾値を64万円と設定し、64万円未満の「家計負担の小さい製品」(前述の「年間の標準治療費が小さい」製品)と、64万円以上の家計負担の大きい製品に分ける。なお、閾値とした64万円は、年収400万円の人で、高額療養費制度による補填分も加味した自己負担限度額を用いたという。

一方で、年間売上金額(前述の「市場規模」)の大小は、分析対象98製品の合計売上4兆円を2兆円ずつになるように設定した結果、閾値となる年間製品売上は約500億円となった。

そこで、(1)家計負担が小さく、市場規模が大きい製品群(2)家計負担が小さく、市場規模も小さい製品群(3)家計負担が大きく、市場規模が大きい製品群(4)家計負担が大きく、市場規模は小さい製品群――の4つのグループに分けて各グループの製品数などを見ると、(1)の家計負担は小さく市場規模が大きい(=財政効果が大きい)グループには18製品あり、年間売上は1.2兆円となった。一定の前提をおいたシミュレーション結果ではあるが、この手法を用いると、18製品が公的保険の給付対象とするかどうかの議論の俎上にのることになる。(2)は48製品で1.41兆円、(3)は10製品で0.80兆円、(4)は22製品で0.70兆円――となった。

高山氏は、「4象限のセグメントにわけることで、政策決定の優先順位をつけられる。ゾーンごとに何かの政策提案をする際の一つのエビデンスとして非常に有用な結果ではないか」と述べた。
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