厚生労働省は８月13日、新薬６製品の承認可否の審議などを行う薬食審医薬品第一部会を27日にウェブ会議で行うと発表した。審議品目には、原発性腋窩多汗症で初の外用薬のエクロックゲル（一般名：ソフピロニウム臭化物）や、てんかん重積状態に対する頬粘膜投与製剤ブコラム口腔用液（ミダゾラム）、経口腎性貧血薬のHIF-PHD阻害薬で４番手となるエナロイ錠（エナロデュスタット）がある。

【審議予定品目】（カッコ内は一般名、申請企業名）

▽ユルトミリス点滴静注300mg（ラブリズマブ（遺伝子組換え）、アレクシオンファーマ）：「非典型溶血性尿毒症症候群」を対象疾患に追加する新効能・新用量医薬品。

抗補体（C5）モノクローナル抗体製剤。エクリズマブ（製品名：ソリリス）の重鎖の４個の固有のアミノ酸（Y27H、S57H、M429L、N435S）を置換したヒト化モノクローナル抗体で、エクリズマブと同様に補体（C5）に結合してその活性化を阻害する。

指定難病の非典型溶血性尿毒症症候群（aHUS）は極めて稀な全身性の慢性遺伝子疾患。補体制御異常による血栓性微小血管障害(TMA)によって引き起こされる継続的なリスクを伴う致死性の疾患。小児だけでなく成人にも発症する。

▽エクロックゲル５％（ソフピロニウム臭化物、科研製薬）：「原発性腋窩多汗症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を阻止する抗コリン剤。アセチルコリンはムスカリン受容体と結合することで汗腺から発汗を誘発すると考えられている。同剤はムスカリン受容体と結合することでアセチルコリンの結合を阻害し、発汗を抑制する。

温熱や精神的な負荷などにより、手のひらや足の裏、わきの下などに日常生活や仕事に支障をきたすほどの大量の発汗を生じる状態を原発性局所多汗症といい、特にわきの下（腋窩）に生じる場合、原発性腋窩多汗症という。現在、A型ボツリヌス毒素製剤・ボトックス注用が重度の原発性腋窩多汗症の適応で承認されているが、エクロックは軽度から使用できるもの。同適応の外用剤は初となる。

▽エナロイ錠２mg、同錠４mg（エナロデュスタット、日本たばこ産業）：「腎性貧血」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素（HIF-PHD）阻害薬と呼称する新クラスの薬剤。HIF-PHD阻害薬として４番手となる。同剤も保存期と透析期の腎性貧血で申請されている。

▽ゼプリオンTRI水懸筋注175mgシリンジ、同TRI水懸筋注263mgシリンジ、同TRI水懸筋注350mgシリンジ、同TRI水懸筋注525mgシリンジ（パリペリドンパルミチン酸エステル、ヤンセンファーマ）：「統合失調症」を対象疾患とする新効能・新剤形医薬品。

非定型抗精神病薬。ゼプリオンは４週に１回投与の統合失調症治療薬だが、ゼプリオンTRIは12週間間隔で投与する製剤。症状が安定している患者に用いる。

▽エビリファイ持続性水懸筋注用300mg、同400mg、同300mgシリンジ、同400mgシリンジ（アリピプラゾール水和物、大塚製薬）：「双極性I型障害」を対象疾患に追加する新効能医薬品。

抗精神病薬エビリファイの４週間に１回の投与で効果が持続する筋注用デポ製剤。はっきりした躁状態がある場合は双極I型障害と呼ばれ、軽躁状態とうつ状態を繰り返す場合は、双極II型障害と呼ばれる。

▽ブコラム口腔用液2.5mg、同５mg、同7.5mg、同10mg（ミダゾラム、武田薬品）：「てんかん」を対象疾患とする新投与経路医薬品。希少疾病用医薬品。

合成イミダゾベンゾジアゼピン誘導体。ミダゾラムはこれまでに静注製剤はあるが、今回は頬粘膜投与製剤となる。家庭や学校でてんかん発作が起きたときなど緊急を要する場合に、利便性及び即効性を有する治療オプションとして開発された。

【報告予定品目】（カッコ内は一般名、申請企業名）
報告品目は、医薬品医療機器総合機構（PMDA）の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

▽ツートラム錠50mg、同錠100mg、同錠150mg（トラマドール塩酸塩、日本臓器製薬）：「慢性疼痛」を対象疾患とする新剤形医薬品。

オピオイド作用及びモノアミン再取り込み阻害作用によって鎮痛効果を発揮する非麻薬性鎮痛薬。既存のワントラム錠は１日１回投与だが、ツートラムは１日２回投与で用いる。ツートラムも非オピオイド鎮痛薬で治療困難な場合の治療選択肢となる。