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新薬13製品を薬価収載へ 4製品が売上100億円超予想、初の保存期腎性貧血の経口薬など

公開日時 2020/08/20 04:51
厚生労働省の中医協総会は8月19日、新薬13成分25品目を薬価収載することを了承した。同省は8月26日に収載する予定。このうち4製品はピーク時売上を100億円以上と予測。気管支喘息適応では初のICS/LAMA/LABAの3成分配合吸入薬エナジア吸入用(ノバルティス)は251億円、新規の慢性心不全薬エンレスト錠(ノバルティス)は141億円、新規の経口腎性貧血薬のHIF-PHD阻害薬として初の保存期適応を持つバフセオ錠(田辺三菱製薬)は141億円、バフセオ錠と同種同効薬のダーブロック錠(グラクソ・スミスクライン)は111億円――と予測した。いずれも10年後のピーク時売上となる。

視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防に用いるエンスプリング皮下注(中外製薬)は、有用性加算(I)がつくなどして、薬価は120mg1mL1筒で153万2660円となった。6年後のピーク時売上は54億円と予測した。国内初の低血糖時に点鼻で処置するタイプの治療薬であるバクスミー点鼻粉末剤(日本イーライリリー)も今回収載することが了承された。バクスミーは前回の収載を見送っていた。

一方で、6月に承認され、大型化が期待されている2型糖尿病薬のGLP-1受容体作動薬として初の経口薬となるリベルサス錠(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)は今回、収載が見送られた。製造販売元のノボ ノルディスクファーマは本誌取材に、「薬価に関する当局との協議の内容については答えられない。現在も協議を続けている」とコメントした。

収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)

オンジェンティス錠25mg(オピカポン、小野薬品)
薬効分類:116 抗パーキンソン剤(内用薬)
効能・効果:レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)の改善
薬価:25mg1錠972.00円(1日薬価:972.00円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.9万人、販売金額44億円
加算:なし
費用対効果評価:該当しない

末梢性の長時間作用型の新規COMT(カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ)阻害薬。1日1回投与製剤で、レボドパ含有製剤と併用して用いる。細胞毒性を示すことなく、末梢選択的に高いCOMT阻害作用を示す。プラセボと比較して、レボドパ(ドパミン前駆体)のバイオアベイラビリティを最大65%まで増加させ、用量依存的にOFF時間を短縮するとされる。同種同効薬にコムタン錠がある。

エンレスト錠50mg、同錠100mg、同錠200mg(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物、ノバルティスファーマ)
薬効分類:219 その他の循環器官用剤(内用薬)
効能・効果:慢性心不全。ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る
薬価:50mg1錠65.70円
      :100mg1錠115.20円
      :200mg1錠201.90円(1日薬価:403.80円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数21万人、販売金額141億円
補正加算:なし
費用対効果評価:該当する(H5)

アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)と呼称するクラスの新薬。心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(ナトリウム利尿ペプチド系)を促進すると同時に、過剰に活性化したレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による有害な影響を抑制することで作用を発揮する。既存のACE阻害薬やARBなどの心不全治療薬は過剰に活性化したRAASによる有害な影響の抑制にとどまる。

エンレストはネプリライシン阻害薬サクビトリルと、ARBバルサルタンを含有し、1日2回投与で、機能不全に陥った心臓の負荷を軽減する。大塚製薬とコ・プロモーションする。

ダーブロック錠1mg、同錠2mg、同錠4mg、同錠6mg(ダプロデュスタット、グラクソ・スミスクライン)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(内用薬)
効能・効果:腎性貧血
薬価:1mg1錠105.40円
      :2mg1錠185.80円
      :4mg1錠327.40円
      :6mg1錠456.10円(1日薬価:457.00円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数11万人、販売金額111億円
加算:なし
費用対効果評価:該当しない

低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PHD)阻害薬と呼称する新クラスの薬剤。慢性腎臓病(CKD)患者では、赤血球産生を促すホルモンであるエリスロポエチンが十分に産生されないため貧血がよくみられる。HIF-PHD阻害薬は、低酸素(酸素欠乏)で生じる生理学的作用と同様に、骨髄での赤血球産生を促すことで腎性貧血に効果をもたらす。

同剤は保存期と透析期の腎性貧血に使用でき、保存期適応を持つHIF-PHD阻害薬としては同剤と、この日に薬価収載が了承されたバフセオ錠が1番手となる。ダーブロックは1日1回投与で使うが、用法・用量が▽保存期慢性腎臓病▽保存期で赤血球造血刺激因子(ESA)製剤からの切り替え▽透析患者――のそれぞれで規定されており、この点がバフセオと異なる。

ダーブロックはESA製剤ネスプを手掛ける協和キリンが販売し、GSKと協和キリンが共同して情報提供・収集活動を行う。

バフセオ錠150mg、同錠300mg(バダデュスタット、田辺三菱製薬)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(内用薬)
効能・効果:腎性貧血
薬価:150mg1錠213.50円
  :300mg1錠376.20円(1日薬価:457.00円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数11万人、販売金額141億円
加算:なし
費用対効果評価:該当しない

低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PHD)阻害薬と呼称する新クラスの薬剤。慢性腎臓病(CKD)患者では、赤血球産生を促すホルモンであるエリスロポエチンが十分に産生されないため貧血がよくみられる。HIF-PHD阻害薬は、低酸素(酸素欠乏)で生じる生理学的作用と同様に、骨髄での赤血球産生を促すことで腎性貧血に効果をもたらす。

保存期と透析期の腎性貧血に使用でき、保存期適応を持つHIF-PHD阻害薬は同剤と、この日に薬価収載が了承されたダーブロック錠が1番手となる。バフセオの用法・用量は1回300mgを開始用量として、1日1回経口投与する。以後は患者の状態に応じて投与量を増減するが、最高用量は1日1回600mgとする。保存期、透析期とも同じ用法・用量となる。

バフセオの製造販売元の田辺三菱は透析領域の製品を有していないことから、透析領域に強みを持つ扶桑薬品とコ・プロモーションする。

メーゼント錠0.25mg、同錠2mg(シポニモドフマル酸塩、ノバルティスファーマ)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(内用薬)
効能・効果:二次性進行型多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制
薬価:0.25mg1錠1083.50円
  :2mg1錠8668.00円(1日薬価:8668.00円)
市場規模(ピーク時10年後):投与患者数1.9千人、販売金額47億円
加算:有用性加算(II)A=5%:理由「日本で初めて、既存治療による効果が不明確である二次性進行型多発性硬化症患者に対して試験で有効性を示したことから、治療方法の改善に該当し、有用性加算(II)A=5%とすることが妥当と判断した」

新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品」
費用対効果評価:該当しない 

スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節薬。リンパ球上のS1P受容体に作用して末梢血中のリンパ球数を減少させることで、自己免疫反応に関与するリンパ球の中枢組織への浸潤を阻止し治療効果を示すと考えられている。

多発性硬化症(MS)は臨床経過に基づき、急性増悪(再発)と寛解を繰り返す再発寛解型(RRMS)、RRMSとしてある程度経過した後に、再発の有無にかかわらず障害が徐々に進行する二次性進行型(SPMS)、発症時から急性増悪(再発)がなく進行性の経過を呈する一次性進行型(PPMS)の3病型に分類される。メーゼントはSPMSに用いる。

タブレクタ錠150mg、同錠200mg(カプマチニブ塩酸塩水和物、ノバルティスファーマ)
薬効分類:4291 その他の腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
薬価:150mg1錠5055.50円
  :200mg1錠6573.50円(1日薬価:2万6293.80円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数443人、販売金額27億円
補正加算:なし
新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品」
費用対効果評価:該当しない 

経口MET阻害薬。MET(間葉上皮転換因子)のリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することで、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺がんに対して腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺がんの国内患者数は約5000人と推測されている。同種同効薬にはテプミトコ錠がある。

フェインジェクト静注500mg(カルボキシマルトース第二鉄、ゼリア新薬工業)
薬効分類:322 無機質製剤(注射薬)
効能・効果:鉄乏性貧血
薬価:500mg10mL1瓶6078円
市場予測(ピーク時):投与患者数11万人、販売金額18億円
加算:なし
費用対効果評価:該当しない

通常、成人に鉄として1回あたり500mgを週1回、緩徐に静注または点滴静注で用いる。総投与量は、患者の血中ヘモグロビン値及び体重に応じるが、上限は鉄として1500mgとする。経口鉄剤が服用できない場合や、多量の出血などで鉄の損失が多く、経口剤では補充が不足する場合などに用いるという位置づけ。

イルミア皮下注100mgシリンジ(チルドラキズマブ(遺伝子組換え)、サンファーマ)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(注射薬)
効能・効果:既存治療で効果不十分な尋常性乾癬
薬価:100mg1mL1筒48万7413円(1日薬価:5803円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.7千人、販売金額38億円
補正加算:なし
新薬創出等加算:主な理由「加算適用品等の収載から3年以内3番手以内」
費用対効果評価:該当しない

ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤。同剤が結合するIL-23(インターロイキン-23)は自己免疫性炎症疾患に関与する17型ヘルパーT細胞の維持及び活性化に関与するサイトカイン。同剤がIL-23に結合することでIL-23とIL-23受容体との結合を阻害し、炎症性サイトカイン及びケモカインの遊離を抑制する。

サークリサ点滴静注100mg、同点滴静注500mg(イサツキシマブ(遺伝子組換え)、サノフィ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫
薬価:100mg5mL1瓶6万4699円
  :500mg25mL1瓶 28万5944円(1日薬価:2万425円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数769人、販売金額45億円
加算:なし
費用対効果評価:該当しない

CD38 受容体の特異的なエピトープを標的とするモノクローナル抗体製剤。多発性骨髄腫(MM)細胞の細胞膜上に発現するCD38に結合し、MM細胞に対して抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)活性ならびにアポトーシスを誘導することなどにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。ポマリドミド、デキサメタゾンと併用して使う。なお、CD38を標的とする抗体製剤にはダラザレックスがある。

エンスプリング皮下注120mgシリンジ(サトラリズマブ(遺伝子組換え、中外製薬)
薬効分類:639 その他の生物学的製剤(注射薬)
効能・効果:視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防
薬価:120mg1mL1筒153万2660円 市場予測(ピーク時6年後):投与患者数423人、販売金額54億円
加算:有用性加算(I)(A=35%):主な理由「本剤はIL-6シグナル伝達を阻害することでアストロサイトの傷害を抑制する新規作用機序医薬品である。また、既存の治療方法である経口副腎皮質ステロイド剤又は免疫抑制剤との併用によって、初回再発までの期間が有意に延長することが検証された。これらを踏まえ、有用性加算(I)(A=35%)を適用することが妥当と判断した」

 市場性加算(I)(A=10%):主な理由「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。ただし、症例数が限られて市場規模が小さいことは原価計算方式の計算の中で価格に反映されていることを踏まえて、限定的な評価とした」

新薬創出等加算:主な理由「希少疾病用医薬品」
費用対効果評価:該当しない 

ヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体。視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)は視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患で、生涯にわたって衰弱を引き起こす。繰り返す再発により、神経の損傷や障害が蓄積される。症状として視覚障害、運動機能障害などが現れる。同剤はNMOSDの病態に深くかかわっているとされるIL-6シグナルを阻害することで、NMOSDの再発を抑制することが期待されている。

アテキュラ吸入用カプセル低用量、同カプセル中用量、同カプセル高用量(インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル、ノバルティスファーマ)
薬効分類:229 その他の呼吸器官用薬(外用薬)
効能・効果:気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
薬価:低用量1カプセル157.80円(1日薬価:157.80円)
  :中用量1カプセル173.10円
  :高用量1カプセル192.20円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数:31万人、販売金額82億円
加算:なし
費用対効果評価:該当しない

長時間作用性β2刺激薬(LABA)のインダカテロール酢酸塩が新有効成分となる。モメタゾンは吸入ステロイド薬(ICS)で、同剤はICS/LABA配合薬。3規格ともインダカテロールは150μgを含有し、同カプセル低用量はモメタゾンとして80μg、同カプセル中用量は同160μg、同カプセル高用量は同320μg――がそれぞれ含有されている。3規格とも1日1回、専用の吸入用器具を用いて吸入する。

エナジア吸入用カプセル中用量、同カプセル高用量(インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル、ノバルティスファーマ)
薬効分類:229 その他の呼吸器官用薬(外用薬)
効能・効果:気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入β2刺激剤及び長時間作用性吸入抗コリン剤との併用が必要な場合)
薬価:中用量1カプセル291.90円(1日薬価:291.90円)
  :高用量1カプセル333.40円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数55万人、販売金額251億円
補正加算:なし
新薬創出等加算:主な理由「加算適用品等の収載から3年以内3番手以内」
費用対効果評価:該当する(H5)

長時間作用性β2刺激薬(LABA)のインダカテロール酢酸塩が新有効成分となる。既承認成分のグリコピロニウムは長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、モメタゾンは吸入ステロイド薬(ICS)――で、同剤はICS/LAMA/LABAによる3成分配合吸入薬となる。COPD適応のICS/LAMA/LABA配合吸入薬はビレーズトリエアロスフィアとテリルジーがあるが、気管支喘息適応ではエナジアが初となる。

エナジアは1日1回、専用の吸入用器具を用いて吸入する。2規格ともインダカテロール150μg、グリコピロニウム50μgを含有する。そして、同カプセル中用量はモメタゾン80μg、同カプセル高用量はモメタゾン160μgを含有する。

バクスミー点鼻粉末剤3mg(グルカゴン、日本イーライリリー)
薬効分類:249 その他のホルモン剤(抗ホルモン剤含む)(外用薬)
効能・効果:低血糖時の救急処置
薬価:3mg1瓶8368.60円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数39万人、販売金額33億円
加算:有用性加算(II)(A=5%):主な理由「煩雑な調整及び投与手技の習得を必要とせず、投与時にそのまま使用できる点鼻粉末剤であり、投与の簡便性が著しく向上することから、製剤工夫による高い医療上の有用性に該当し、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが妥当と判断した」
新薬創出等加算:主な理由「加算適用」
費用対効果評価:該当しない

低血糖時に点鼻で処置するタイプは国内初となる。低血糖の際、ブドウ糖を含む飲料水をとるが、ブドウ糖を口からとれないなど患者本人が対応できない場合は、家族など周りの人がグルカゴンを注射して対処する。バクスミーは低血糖の際、患者本人や周りの人が点鼻で使うイメージとなる。
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