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医師の働き方検討会 地域医療に必要な兼業は通算960時間超でB水準適用 派遣医師の引き上げ懸念

公開日時 2020/10/05 04:50
厚生労働省は9月30日に開催された第9回「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で、地域医療確保暫定特例水準(B水準)の適用に関して、副業・兼業先での労働時間を通算した場合も含める方針を示した。例えば、主たる勤務先で時間外労働時間が年960時間以内でも、地域医療体制の確保に必要な兼業・副業についてはその労働時間をカウントして年960時間超になる場合、B水準が適用される。この提案は構成員らによって概ね了承された。ただし、地域医療に必要な副業・兼業か否かをどこで線引きするかなど、詰めていかなければならない点がいくつかあるほか、大学病院等における労務管理のさらなる煩雑化は免れようがない。

◎大学病院医師は9割以上が兼務 通算で一定数がA水準オーバー


医師の勤務実態調査によると、病院常勤勤務医の約6割が主たる勤務先以外で勤務を行っている。特に大学病院では9割以上が複数の医療機関で勤務しており、主たる勤務先である大学病院での勤務時間が週60時間(年間時間外・休日労働960時間換算)内で収まる医師は76.2%。これに兼業先の勤務時間を通算すると週60時間超となる医師は全体の半数近くになる。

事業場を異にする場合も労働時間は通算するという労働基準法第38条第1項の規定から、A水準が適用される医師が副業・兼業を行う場合、本務先と兼業先を合わせた時間外労働時間が年960時間に達した際は、それ以降いずれの医療機関でも時間外労働を行えないことになっている。しかし上記調査の結果からもわかるとおり、兼務先の労働時間を合わせると年960時間を超える医師が一定数いる実態があり、A水準を適用した場合、時間外労働時間を年960時間内に収めようと、主たる勤務先医療機関による派遣医師の引き上げにつながるおそれが懸念されていた。またこうした医師についても十分な健康確保措置を講じる必要がある。

そこで厚労省は、「医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関」をB水準の対象に追加する案を示した。対象となる医療機関であるか否かは、医療機関からの申請に基づいて都道府県知事が判断する。

また、B水準が適用されると、兼務先での労働時間と合わせて時間外労働は年1860時間まで可能となる。ただし、もともとA水準だった主たる勤務先で年960時間超の時間外労働が容認されるのは本末転倒になるため、この類型でのみB水準の指定を受けた場合、個々の医療機関の36協定に定める時間外労働時間の上限は年960時間までとしている。

◎医師個人の希望による兼業 B水準の適用にならない?

一方、「医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関」としてB水準の指定を受ける場合、個々の医療機関で時間外労働時間が年960時間であっても、指定の申請を行う医療機関に医師労働時間短縮計画の策定を求める。自院での時間短縮に取り組むだけでなく、関連病院など兼務先医療機関の勤務態様を一定程度、管理できる場合はシフト調整等によるトータルでの労働時間の短縮を図るほか、兼務先に対しても時短への協力を要請するなどの取り組みを要求していく。時短への協力要請の例として事務局では「宿日直許可の確実な取得」を挙げている。

こうした副業・兼業を行う医師に関するB水準の適用に関して、構成員からは特に異論は出なかったが、対象となる医療機関や地域医療を確保するための兼務の定義などについていくつかの指摘があった。この類型の対象となる医療機関として資料では「大学病院、地域医療支援病院等」を例示しており、島崎譲治構成員(国際医療福祉大学大学院教授)は、「地域医療支援病院に指定されていても、地域医療にあまり貢献していない病院がある一方、同病院の指定を受けていなくても医師を派遣したりしている病院もある。都道府県は実態をみて判断していくべき」と注文。事務局は「例えば前年の医師の派遣実績を出してもらい、判断材料にしていくことが考えられる」と答えた。

また、鈴木幸雄構成員(横浜市立大学産婦人科助教)は大学病院の勤務医の立ち場からと前置きして、「副業・兼業について、主たる勤務先からの派遣によるものと医師個人の希望によるものの2つに分けているが、後者についても地域の医療機関の当直などを担っている。大学からの指示による派遣でなければB水準が適用されないなら、地域医療の崩壊につながりかねない。地域の先生方も心配しており、運用面については丁寧に議論してほしい」と要望。

これに関連して山本修一構成員(千葉大学副学長)は「地域医療体制の観点から副業・兼業が議論されてきたが、それは表の理由で、その裏側には大学病院の給料だけではやっていけないので副業・兼業で補てんせざるを得ないというもう一つの理由がある。あまり時短、時短と言うと大学病院を去る医師が増えかねない」と述べ、大学病院の経営について質した。事務局は「働き方改革を進めながら、大学病院の経営をどうするか。実態を把握しつつ文部科学省とも連携して議論を深めていく必要がある」と述べるにとどめた。

◎複数兼務の計画策定は困難? 引き上げ想定した対応必要


さらに副業・兼業に行う医師にB水準が適用となったからといって医師の引き上げがなくなるとは限らない。先の調査で大学病院医師の9割が副業・兼業を行っているが、兼務先が2か所以上の医師は全体の7割に及ぶ。今村聡構成員(日本医師会副会長)は、このことについて指摘し、「主たる勤務先と1対1なら時短計画をつくりやすいが、兼務先が複数となると手っ取り早く医師を引き上げて時短を図るというケースも出てくるのではないか」と危惧。そのうえで「そういう事態が起きて地域医療に影響が出た際、どう対応していくかも考えていかなければならない」と問題提起した。

副業・兼業を行う医師のB水準の適用に関して、時間外労働の実態を反映させるうえで必要な措置といえる。しかし、主たる勤務先だけでなく、兼務先を含めた時短計画をどう作成していくか、また地域医療体制や大学病院の待遇等を睨みながらの難しい対応が迫られる。
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