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中医協薬価専門部会 毎年薬価改定の適用ルールで「新薬創出等加算の累積額の控除」が論点に浮上

公開日時 2020/11/19 04:52
中医協薬価専門部会は11月18日、「2021年度薬価改定」について議論した。毎年薬価改定(薬価中間年改定)で焦点となる算定ルールとして、「新薬創出・適応外薬解消等加算の累積額の控除」が急浮上した。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が指摘したもので、「市場実勢価格を適時に薬価に反映するという骨太方針の主旨に沿ったもので、本改定に限らず、中間年改定についても適用する合理性、妥当性はある」と主張した。この日の中医協では、支払側が毎年薬価改定のルールなどについて議論することを主張したのに対し、診療側は医療現場が新型コロナの影響で「平時とは異なる」と強調。21年度改定の議論だけを行うことを主張するとともに、次回の業界陳述や薬価調査を踏まえた”丁寧な議論”を求めた。

◎消費増税改定でも議論に浮上

厚労省保険局医療課はこの日の中医協資料に、「既収載品の算定ルール」と題し、2019年10月に実施した消費増税改定で適用した考え方を示した。消費増税改定では、実勢価と連動するルールを適用。最低薬価や基礎的医薬品の維持、後発品の価格帯集約などで、実勢価の影響を補正するために適用した。一方で、新薬創出等加算の累積額の控除について当時、厚労省側は、「実勢価から追加的に薬価を引き下げる仕組み」であり、実勢価に連動しないとして、適用を見送った経緯がある。

新薬創出等加算は、後発品の上市または収載15年経過後に、薬価改定で加算の累積額を一括して返還することとされている。ただ、ここにはタイムラグがある。薬価の引き下げを受ける次の薬価改定までに、期間があるためだ。現行制度では、後発品上市後も最長で約1年半、薬価が維持されるケースがあることになる。また、後発品が上市されるタイミングは先発品が最も市場浸透しており、薬価の低い後発品にあわせて長期収載品の実勢価が下落するため、価格乖離が最も大きくなると指摘する声もある。

◎診療側・有澤委員「実勢価に連動しない算定ルールは適用すべきでない」

幸野委員は消費増税改定で、「市場実勢価格と連動しない」とされた算定ルールについても、「実施すべき」と主張した。なかでも、「こだわりが強い」と指摘したのが、新薬創出等加算の累積額の控除だ。幸野委員は、2016年末に4大臣合意された「薬価制度抜本改革の基本方針」に「市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品を対象に、毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行う」と明記されることを引き合いに、必要性を強調した。

これに対し、診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、消費増税改定を引き合いに、「市場実勢価格を適切に薬価に反映するという主旨であれば、実勢価に連動しない算定ルールは適応すべきではない」と反発した。

新薬創出等加算は研究開発型企業の生命線とも言えるなかで、製薬業界の反発は必至だ。なお、消費増税改定の業界陳述を行った2018年10月にも、日本製薬団体連合会(日薬連)の手代木功会長は、「通常の薬価改定とは位置づけが異なる。長期収載品による追加的な引き下げや再算定、あるいは新薬創出等加算の累積額の控除なども通常の改定で行うべき」と要望していた。

◎支払側・幸野委員 対象範囲は「新薬、長収品、後発品で偏りが出ないように」 調整幅にも言及

薬価改定の論点として幸野委員は、「最大の論点は価格乖離の大きな品目をどう特定するか」との見解も表明。「新薬、長期収載品、後発品に偏りが出ないように、率でやるのか、額でやるのか、率と額を組み合わせるのか、というところでいかに大きな網をかけるが最大の論点だ」と述べた。また、調整幅の在り方についても言及。2000年以降、「2%」が維持されていることについて疑問を呈した。「20年前と今では管理も流通も様変わりしている」と指摘し、品目ごとに実勢価の分布を検証するなどして、議論することを求めた。

◎診療側・松本委員 毎年薬価改定の議論は「困難」 慎重かつ丁寧な議論を

新型コロナウイルス感染症の影響が医療現場に色濃いなかで、診療側は、2021年度改定を毎年薬価改定の初年度ではなく、特例的な取り扱いとすることを求めた。松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「平時の薬価改定についてまで議論するのは現実的には困難で、拙速に考えるべきではない。スケジュール感も慎重に行っていくべき」と述べるなど、21年度改定に限った議論をすることを求めた。松本委員は新型コロナの影響を説明したうえで、「対象範囲や薬価改定時の適応の在り方など具体的なルールの在り方については、新型コロナの影響がある中、薬価調査の結果がどのようなものになっているのか議論すべき。結果を踏まえてコロナ影響を勘案した丁寧な議論を行うべきだ」と強調した。

◎診療側・有澤委員 国民負担の軽減とコロナの影響勘案は「相拮抗する」

有澤委員は、国民負担の軽減は重要との認識を示した。そのうえで、イノベーションの推進を図るとともに「医薬品卸、医療機関、薬局等の経営の影響を勘案すること」とは、「相拮抗する」と指摘。「四位一体のバランスを適切に議論していく必要がある」との考えを示した。そのうえで、21年度の薬価改定については、「従来とは全く異なる状況下で交渉したこと、その影響が薬価調査の結果に、どう出ているか見ることが必要。背景を十分に考慮し、中間年改定に正しく活用できるものなのか、あるいは詳細な分析が必要であり、それを踏まえた慎重な対応が必要だと考えている。そのうえで、薬価改定の実施については慎重な議論が必要と考える」と述べた。この日の議論で、薬価改定の見送りまで踏み込んだ発言をしたのは、林正純委員(日本医師会常務理事)のみで、「新型コロナの影響を勘案したとしても、通常以上のものが出て精度の高いものでないと判断した場合は中間年改定そのものを見送っていただきたい」と述べた。


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