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【FOCUS 小林化工問題はなぜ起こったのか(上) 業務停止処分116日から浮かび上がる暗闇】

公開日時 2021/02/22 04:52
「その当時、営利というよりは市場への供給、医療用医薬品を途切れさすわけにはいかないと判断した」―。2月9日夕刻、過去最長の116日間の業務停止命令を通告された直後の記者会見で、小林化工の小林広幸代表取締役社長は重い口を開いた。経口抗真菌薬・イトラコナゾールに睡眠薬が混入した問題をきっかけに露わとなったのは、小林社長自身が総括製造販売責任者(総責)を務めた2005年以降、問題のある製品を出荷し続けた事実だ。そこには、政府の後発品使用促進策を背景に成長路線を推し進めた表の顔とは裏腹に、経営陣が不正を認めていた暗闇があった。小林化工問題は、なぜ長期間にわたり、不正に手を染め続けたのか。(望月 英梨)

「正直、相当な品目で齟齬が見つかった。簡単に一部変更承認申請(一変申請)や軽微な変更で解決できないような、後で添加をしたり、違う添加物を加えたり、その程度のものが結構あった。重大な齟齬があった」。小林社長は会見で、自身が総責になった当時から、承認書から逸脱した製造を行っていたことを認めた。重大な齟齬があったにもかかわらず、すぐに対応せず、「数年かけて承認整理をしていこうと考えていた」と釈明した。

◎福井県 116日間の事業停止処分

福井県は2月9日、小林化工に対して116日間の業務停止処分と業務改善命令を通達した。116日間は、福井県の内規における最長期間だ。国と福井県、PMDAが業務改善を確認できなければ出荷を再開することはできない。すでに業務停止期間が半年から1年間となる可能性も示唆されている。

直接の原因は、イトラコナゾールに睡眠薬が混入し、死亡例を含む健康被害が出たことだ。自動車事故や転倒など、健康被害は239人にのぼる(2月8日時点)。さらに、厚労省やPMDAなどの立入調査を通じ、承認内容と異なる医薬品の製造や二重帳簿の作成、品質試験結果の捏造が発覚した。福井県によると、二重帳簿を作成していたのは約390品目、承認されていない手順で製造していた品目は約180品目にのぼる。また、1970年代後半以降、一部項目については製品試験を実施していなかった。

福井県は小林化工に対して、「経営層が法令違反を把握していながら、改善策を講じなかった点が最大の問題」と指摘した。承認事項から逸脱した製造や二重帳簿については、「経営陣、製造管理者は黙認」と認定したが、小林社長の会見での質疑を通じ、“黙認”などというレベルでは済まされない、不正を主導したと問うべき経営実態が浮かび上がった。

◎2005年の改正薬事法施行に伴う一斉点検で「齟齬に気づいた」

「安定供給を理由に、問題の是正を後回しにしていた」― 。小林社長は会見で、こう繰り返した。

不正のすべての原点は、小林社長が総責に就いた2005年にある。小林社長が、製造工程に重大な齟齬があると気づいたのは2005年。改正薬事法(現・医薬品医療機器等法)が施行された年だ。

改正薬事法は、製薬産業のビジネスを大きく変えた。最大のポイントは、「製造販売業者」が位置付けられたこと。これにより、製造販売業者がGMPを遵守する仕組みとなり、品質をコントロールするようになった。製造販売管理の責任を明確化するために、総責を中心とした体制やルールの整備を先発、ジェネリックともに各社が進めてきた経緯がある。

承認書にも製造方法や工程管理などを詳しく記載するよう求められるようになったのもこの時だ。2005年以前の承認書は、原材料や水以外の溶媒などを記すにとどまっており、詳細な記載はなかったという。このため、小林社長が語る“重大な齟齬”が法改正前からあったということに業界からは「驚きを隠せない」との声が漏れる。長期間にわたる不正には驚かされるが、それ以上の闇を抱えていた可能性は高い。

◎「一気に500品目の供給をやめることはできないと判断した」

小林社長が当時務めていた総責は、医薬品の品質管理、安全管理を適正に行う責任者として薬機法上に位置付けられている。品質保証責任者や安全管理責任者を監督し、報告を受けて措置を決定するなどの役割を担う。社内ガバナンスの根幹を支え、いわば、社長をはじめとした経営陣にモノを申すことが求められている。にもかかわらず、経営のボードメンバーである小林社長自身が、この役割を一切果たさなかった。

小林社長は会見で次のように釈明している。
「今は、製造販売を中止するという判断をすべきだったと考えている。当時は、医療用医薬品は患者の生命に直結する、市場から一気に500品目の供給をやめるということはできないと判断をした」― 。ここで小林社長は、繰り返し“安定供給”という言葉を口にする。「規格など、最終試験ですべて合格しないと出荷できない。最終試験に合格しているからといって、途中の工程や手順がダメであれば、問題のある製品を出荷していたことになる。その当時は厳密な最終試験を行って、その規格に入っていれば合格品として出してもいいという“誤った判断”をしていた」― 。

2000年代初頭は、後発品の使用浸透が進む一方で、“売り逃げ”と揶揄される状況が問題となっていた時期でもある。業界にとって、成長の前提となる安定供給は大命題だった。しかし、小林社長の言う“安定供給”は、名ばかりで「誤った判断」に過ぎない。製品の出荷を優先させた経営トップの考え方そのものが、多数の健康被害を生じさせ、さらには後発品の信頼を失墜させる結果を生んだことは皮肉としか言いようがない。

◎売上高30億円の会社を370億円に成長させた手腕

小林化工は、1961年4月に設立された。小林社長は直系の長男で、3代目となる同族経営の企業だ。売上高は370億円(2019年度)。決算公告によると、純利益は57億7708万円、総資産806億9660万円、利益剰余金は715億3371万円にのぼる(20年3月31日時点)。大手ジェネリックメーカーをも上回る利益率と内部留保を叩き出している。

本社は福井県あわら市にある。「関西の奥座敷」と呼ばれる芦原温泉があり、北陸新幹線の延伸で芦原温泉駅の整備計画も進んでいる。小林化工も地域経済の活性化や雇用面で地元の優良企業の地位を確固たるものにしてきた。20年1月には、更なる成長を見込んでオリックスと資本業務提携を結んでいる。

しかし、小林社長が経営に参画した当時は、まだ小規模な企業だった。
「医療用医薬品市場で後発品使用促進の追い風を実感したのは、やはり政府が医療機関・調剤薬局に対して使用のインセンティブを設けた02年度の診療報酬・調剤報酬改定以降です。その頃の当社の売上高はわずか30億円程度でしたが、継続した政府の後押しもあって、10倍以上の370億円に伸ばすことができました」― 。日本医薬情報センター(JAPIC)が20年11月に発行した「JAPIC NEWS」の巻頭言「経営者としての歩み」に小林社長はこう綴っている。国の後発品使用策と相まって、わずか20年間でその規模を10倍とするまでに急成長を実現させたのだ。

2000年代初頭、高齢化に伴う医療費抑制策が声高に唱えられ、国は後発品使用促進策に舵を切った。ジェネリック業界そのものが急成長を遂げる第一歩を踏み出す時期でもあった。

小林化工の技術力の高さは当時から評判になっていたという。アシクロビルの液剤化に世界で初めて成功。2001年には、「福井県科学技術顕彰奨励賞」を受賞した。10年には、ジェネリック医薬品協議会(GEDA)からメサラジン顆粒50%「AKP」の開発で「2010年最優秀ジェネリック医薬品賞」を獲得するなど、業界内での評価を高めてきた。現在も、他社製造のない剤形を製造している。

技術力を強みに成長路線を模索していた小林化工にとって追い風となったのも、05年の薬事法改正だ。製造の委受託が全面解禁され、製造販売業者が必ずしも工場を持つ必要がなくなったのだ。当時、生活習慣病市場の特許切れなどで、大型製品に依存してきた先発メーカーは窮地に立たされていた。“ジェネリックバブル”に沸くなかで、初期投資なくして、ジェネリックビジネスに参入できることは大きなメリットでもあった。小林化工は技術力などを武器に、先発メーカーから製造委託先として選ばれる企業となっていった。利益率の高いビジネスモデルの実現で、一気に成長へとアクセルを踏み込んだのは小林社長自身だ。会見で当時の状況を小林社長は、「Meiji Seikaファルマやエーザイなど、販路の拡大を私自身が積極的に行っていた」と振り返った。

ビジネスの成長と相まって、生産体制への投資も拡大した。05年には「改正薬事法対応及び生産能力の拡充を目的に矢地第一工場を一新」と謳っている。

ジェネリックビジネスに訪れた千載一遇のチャンスと、それを手に入れるための多大な投資 ― 。2月9日の記者会見で小林社長は、「売上や利益だけを追求したのではなく、ジェネリックが社会的にも、欧米並みに必要性が叫ばれているなかで、しっかりと認められるジェネリックメーカーとして、きちんと供給しなければダメだとやってきた。売上、利益が全く頭になかったかというと、やはり企業なので毎年数値目標は設定し、売上を高めようということでやっていたということも事実だ」とうなだれた。(続く)
 


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