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ミクス・各社別調査 政策決定プロセスに不満続出 「透明性・納得性の高い薬価制度構築」に期待感も

公開日時 2021/03/09 04:52
ミクス編集部は初の薬価中間年改定となった2021年度薬価改定の決定プロセスや業績影響について製薬各社からフリーコメントを求めた。その結果、改定率の決定過程への不満が最も多く寄せられた。中医協の業界陳述が反映されなかったことや、官邸主導の政策決定プロセスへの不満が目立つ。その一方で、「透明性・納得性の高い薬価制度の構築」のための議論に(産業として)参画したいとの前向きな意見もあった。調整幅2%に“新型コロナウイルス感染症特例”として0.8%分引き下げ率を緩和することについては、政府の判断に一定の評価が下された。ただ、「唐突感」も指摘され、調整幅をめぐる十分な議論を求める意見も見られた。

初の薬価中間年改定の議論は、中医協薬価専門部会を軸に、流改懇、官民対話、さらには自民党厚労部会や議員有志の勉強会などで行われた。この間、日米欧の製薬団体は各機会を捉え、ステークホルダーに対し、「慎重な議論」を求める活動に注力する。ただ、昨年12月の2021年度予算編成過程で、麻生財務相、田村厚労相、加藤官房長官の3大臣が、平均乖離率8.0%の0.625倍となる乖離率5.0%を超える品目の薬価を引き下げることで合意。新薬創出等加算品を含む全品目の69%が毎年薬価改定の対象となり、製薬業界内を激震が駆け抜けた。

◎「どれだけ意見陳述しても無駄」、「薬価制度の予見性を著しく低下させる」

ミクス編集部に寄せられたフリーコメントをみると、政策決定プロセスへの不満が目立つ。「最後は大臣折衝で決まった感があり、どれだけ意見陳述しても無駄ということを痛感した」(内資)、「中医協の存在意義自体を疑問視してしまう。どのような追加方策を行おうと透明性や予見性が上がるとは思えない」(内資)、「今回の決定は骨太方針2020の趣旨から大きく逸脱した決定であると同時に、十分に検討されたとは言い難く、薬価制度の予見性を著しく低下させるものであったと理解している」(外資)、「追加的な方策はともかく、中医協の存在意義を政府にもっと認識してもらい、骨太方針などの政策提言に基づく誰もが納得できる政策を展開していただきたい」(外資)など、中医協での議論や業界主張を軽視したことに反発する意見が多数集まった。

一方で、今回の議論を踏まえた前向きな提案もあった。「議論の場はあったものの、結論ありきの政策だったと思われる。従来の焼き直しではなく、国際的に納得できる抜本的な改革が必要だ」(内資)や、「“場”の設定だけでなく、実務的に踏み込んだ議論ができる“場”が必要であり、さらに政策決定プロセスの透明化が重要と考える」(内資)、「製薬企業も正式なステークホルダーの一員としての立場で、“透明性・納得性の高い薬価制度の構築”のための議論に参画していきたい」(外資)―。政策決定に際しての製薬業界としての立ち位置や、決定プロセスへの提案・要望なども見られた。

◎調整幅0.8%分の緩和対応 一定評価の半面で「唐突感」


“新型コロナウイルス感染症特例”として調整幅に0.8%分の引き下げ率を緩和する対応への意見も聞いた。「調整幅は薬価算定ルール上“薬剤流通の安定のための調整幅”と規定されており、それ以上の定義は無いと認識している」(内資)や、「一定幅0.8%は新型コロナウイルス感染症に対する特例措置として政府が判断したものと認識している」(内資)などが見られた。その一方で、「一定程度の緩和策を導入したとの意図は理解できるものの、中医協においては、全く議論されておらず、緩和策としては唐突感があり、また充分性にも欠くものと考える」(外資)との見方も。また流通面について、「新型コロナウイルス感染症の影響がどの程度続くかについては現時点では見込みが難しいが、来年度以降についても製品価値に見合った取引、価格形成がなされることを希望する」(外資)との意見も寄せられた。

◎一定幅の新薬創出等加算への影響「現時点で評価できない」 製品群では影響なしも

一定幅が設けられたことでの新薬創出等加算への影響については、「乖離率の小さい品目は、今改定の改定対象外であり、また新薬創出等加算品は相対的に乖離率の小さいものが多いことから、一定幅の影響を受けない品目も存在する。一方、付与された新薬創出加算額の圧縮につながる面も一定程度は認められたが、この影響が顕在化するのは将来の累計加算額返還時となるため、現時点では評価できない」(外資)との回答があった。

一方で、「短中期的に全く影響ない」(内資)、「一定幅を加えた調整幅と新薬創出加算率とのバランスの問題であり、影響は殆んどない」(内資)という企業がある。このほか「新薬創出等加算の恩恵が縮⼩することで、国内における⾰新的な医薬品の導⼊・開発がしづらくなり、結果として⾰新的な医薬品が患者さんにいち早く届かなることが懸念される」(外資)などのコメントが見られた。

ミクス編集部は今回のフリーアンサーに際し、製薬業界側から新たな薬価制度に関する提案を待ってみた。「原価計算方式による薬価算出される品目を減らすため、原価・類似薬効に変わる第三の新たな薬価算定方式を導入する」(外資)など見られたものの、残念ながら新たな概念や制度的な骨格に踏み込むような提案は見られなかった。

薬価をめぐっては、2022年度改定に向けた議論が間もなく再開する。高齢化対応で社会保障費の伸びの抑制圧力が緩むことはない。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う医療提供体制の再整備や地域包括ケアシステムの構築など、必要な医療費財源の適正配分に関する議論は今後も活発化するだろう。薬価についても同様で、患者中心の医療を実現するための革新性や新たな技術評価の議論の俎上に再びのぼることになる。製薬業界もまた、革新的新薬の創出や安心・安全な医薬品の提供を通じ、患者が病を脱して健康を取り戻し、日常生活や職場復帰を実現できる社会づくりの一助を担える自発的な政策提案を行わない限り、毎年薬価改定というスパイラルから脱することはできないのではないか。




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