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薬食審・第二部会 4製品の承認了承 RET融合遺伝子陽性NSCLC治療薬レットヴィモなど

公開日時 2021/07/30 22:30
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は7月30日、新薬4製品の承認を了承した。日本イーライリリーが申請した経口投与のRET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬レットヴィモカプセル(一般名:セルペルカチニブ)や、経口JAK阻害薬リンヴォック錠(ウパダシチニブ)に12歳以上の小児を含むアトピー性皮膚炎の適応追加が了承された。正式に承認されれば、経口JAK阻害薬が小児のアトピー性皮膚炎の適応を取得するのは初めてとなる。

◎キイトルーダにトリプルネガティブ乳がんの効能追加

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で「承認して差し支えない」とされ、部会では審議せずに報告のみでよいと判断された報告品目は6製品あった。MSDのがん免疫療法薬キイトルーダ点滴静注(ペムブロリズマブ)へのトリプルネガティブ乳がんの適応追加や、小野薬品のがん免疫療法薬オプジーボ点滴静注(ニボルマブ)と武田薬品の抗がん剤カボメティクス錠(カボザンチニブリンゴ酸塩)の腎細胞がんに対する併用が含まれる。新有効成分含有医薬品は9月に、効能追加などは8月に正式承認される見通し。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

ステルイズ水性懸濁筋注60万単位シリンジ、同240万単位シリンジ(ベンジルペニシリンベンザチン水和物、ファイザー):「梅毒(神経梅毒を除く)」を効能・効果とする新投与経路医薬品。適応菌種は梅毒トレポネーマ。再審査期間はなし。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。

ペニシリン製剤。細菌細胞壁のペプチドグリカンの合成を阻害することで抗菌活性を示すと考えられている。有効成分のベンジルペニシリンベンザチン水和物は溶解性が低く、投与部位から緩徐に放出される特徴から、同剤は1回の筋肉内投与で有効濃度が持続する。このため成人及び13歳以上の小児の早期梅毒に対しては、ベンジルペニシリンとして240万単位を単回、筋肉内注射して用いる。

日本感染症教育研究会から同剤の筋注製剤の成人及び小児における梅毒(神経梅毒を除く)に対する使用について開発要望が提出され、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議の評価を経て、開発要請がなされた。

海外では21年5月時点で、米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、台湾で承認済み。

リンヴォック錠7.5mg、同錠15mg、同錠30mg(ウパダシチニブ水和物、アッヴィ):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は残余期間(28年1月22日まで)。

経口JAK阻害薬。JAK依存性サイトカインは多くの炎症性及び自己免疫疾患の病因と関連していることが示唆されており、JAK阻害作用により効果を発揮すると考えられている。

経口JAK阻害薬でアトピー性皮膚炎の適応を持つのはオルミエント錠(バリシチニブ)に続く2剤目となる。しかし、リンヴォックは12歳以上かつ30kg以上の小児のアトピーにも使えることが特徴の一つとなる。

リンヴォックのアトピーに対する用法・用量は、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与で用いるが、患者の状態に応じて30mgに増量できる。小児には15mgを1日1回で用いる。このため、リンヴォックは今回、30mg錠を追加する。

海外では21年6月時点で、アトピーの適応で米国や欧州で承認されていない。

コセンティクス皮下注150mgシリンジ、同150mgペン、同75mgシリンジ(セクキヌマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。

ヒト型抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体製剤。炎症性サイトカインであるIL-17Aと結合し、IL-17AのIL-17受容体への結合を阻害することで、IL-17Aの生理活性を阻害する。今回、乾癬の小児適応を追加し、併せて75mg製剤を追加する。

海外では、6歳以上の小児における局面型皮疹を有する乾癬に対する治療薬として、欧州及び米国で承認済み。

レットヴィモカプセル40mg、同80mg(セルペルカチニブ、日本イーライリリー):「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

初のRETキナーゼ阻害薬。RET融合遺伝子又はRET遺伝子変異は、RETを介したシグナル伝達経路を亢進させることにより、腫瘍の生存や増殖に大きく寄与することが報告されている。同剤はRETのキナーゼ活性を阻害し、RETを介したシグナル伝達を阻害することで腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

RET融合遺伝子陽性NSCLCの患者数は約4390人と推測されている。同剤はコンパニオン診断薬を使用して用いる。

海外では21年4月時点で、RET融合遺伝子陽性NSCLCに係る効能・効果で、欧米を含む34か国で承認済み。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))、MSD):「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」を効能・効果とする新効能医薬品。また、「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2022年10月18日まで)。

がん免疫療法薬で抗PD-1抗体。現在もMSI-Highを有する固形がんに使用できるが、これは2次治療以降の固形がんを対象としたもの。今回はMSI-Highを有する結腸・直腸がんの1次治療に使えるようにするための効能追加となる。

乳がんに関しては、いわゆるトリプルネガティブ乳がんの効能追加となる。キイトルーダとしては初の乳がん適応となる。トリプルネガティブ乳がんに対して、▽キイトルーダ+ゲムシタビン+カルボプラチン点滴静注液「NK」▽キイトルーダ+アブラキサン点滴静注用▽キイトルーダ+パクリタキセル――のいずれかで使用する。なお、このうちカルボプラチンとアブラキサンはキイトルーダと併用できるようにするため、用法・用量を一部変更することがこの日の部会で報告された。

海外では21年4月時点で、化学療法歴のないMSI-Highを有する結腸・直腸がんに係る効能・効果で欧米を含む18の国・地域で承認済み。乳がんに係る効能・効果は米国を含む10の国・地域で承認済み。

カルボプラチン点滴静注液50mg「NK」、同150mg「NK」、同450mg「NK」(カルボプラチン、マイラン製薬):「乳がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。この日の部会に報告されたキイトルーダのトリプルネガティブ乳がんの適応と併用して用いるための用量追加となる。

アブラキサン点滴静注用100mg(パクリタキセル、大鵬薬品):「乳がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。この日の部会に報告されたキイトルーダのトリプルネガティブ乳がんの適応と併用して用いるため、E法の記載を変更する。具体的には「アテゾリズマブ(遺伝子組み換え)との併用において」との記載を「他の抗悪性腫瘍剤との併用において」に変更し、キイトルーダの乳がん適応と併用できるようにする。

オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2021年10月16日まで)。
カボメティクス錠20mg(カボザンチニブリンゴ酸塩、武田薬品):「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2028年3月24日)。

オプジーボはがん免疫療法薬の抗PD-1抗体。カボメティクスはキナーゼ阻害薬。今回、根治切除不能または転移性腎細胞がんの1次治療に対する両剤の併用療法を追加する。

両剤とも単剤で、根治切除不能または転移性腎細胞がんの適応を持つが、オプジーボは2次治療から、カボメティクスは1次治療から使える。また、オプジーボはヤーボイ点滴静注液(一般名:イピリムマブ)との併用で、腎細胞がんの1次治療の適応を持つ。小野薬品はこれまでに、本誌取材に、オプジーボとヤーボイ併用による腎細胞がん1次治療は、IMDC(International Metastatic RCC Database Consortium)リスク分類の中高リスク患者の治療選択肢となっているが、カボメティクスとの併用は低リスクを含むと説明している。

海外では21年5月時点で、根治切除不能又は転移性腎細胞がん患者に対する両剤併用投与に係る用法・用量について、オプジーボは33か国、カボメティクスは32か国で承認済み。

ブスルフェクス点滴静注用60mg(ブスルファン、大塚製薬):「同種造血幹細胞移植の前治療、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍及び神経芽細胞腫における自家造血幹細胞移植の前治療」を効能・効果とする新用量医薬品。事前評価済公知申請。

小児の用法を追加する。現在は小児に対し、「C法」として6時間毎に1日4回、4日間投与している。新たに「D法」を追加し、1日1回、4日間投与する方法を選べるようにする。同剤は腫瘍細胞のDNAをアルキル化し、DNA合成を阻害することなどにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

海外では20年10月時点で、小児の同種造血幹細胞移植(HSCT)の前治療に対する1日1回投与の用法・用量はオーストラリアで承認済み。
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