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薬食審第一部会 10製品の承認了承 エンレストの高血圧症の効能追加は継続審議に

公開日時 2021/08/31 04:51
厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は8月30日、11製品を審議し、このうち10製品の承認を了承した。ARNI・エンレストの高血圧症の効能追加は、臨床的位置づけが論点となり、承認が了承されず、継続審議となった。

エンレストはアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)で、慢性心不全治療薬として上市されており、今回高血圧症の効能追加が審議された。部会資料によると、予定効能・効果は「高血圧症」で、用法・用量は、「通常、成人には1回200mgを1日1回経口投与し、年齢や症状で適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする」としている。慢性心不全についての効能・効果では欧米を含む110以上の国や地域で承認されているが(21年6月時点)、高血圧症についてはロシアと中国でのみ承認されている。厚労省によると、投与対象となる患者像など臨床的位置づけが論点となり、承認が了承されなかった。次回の10月部会で再度審議されるかどうかは不明。

この日の部会で承認が了承された10製品は以下の通り。9月に正式承認される見通し。

◎アトピー適応のPDE4阻害薬モイゼルト、FXa阻害薬の抗凝固作用を中和するオンデキサなど

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)

モイゼルト軟膏0.3%、同1%(ジファミラスト、大塚製薬:「アトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

ホスホジエステラーゼIV(PDE4)阻害薬。大塚製薬が創製した。正式承認された場合、PDE4阻害薬として初のアトピー性皮膚炎の適応を持つ薬剤となる。成人、小児ともに1日2回、適量を患部に塗布して用いる。

PDE4は免疫細胞に広く分布しており、アトピー性皮膚炎患者の末梢白血球ではPDE活性が亢進し、細胞内cAMP濃度が減少していることが報告されていることから、PDE4はアトピー性皮膚炎などの慢性炎症性疾患の病態に関与すると考えられている。同剤によりPDE4を阻害することで、細胞の炎症反応を抑制し、アトピー性皮膚炎に対し効果を発揮すると考えられる。

海外で承認されている国・地域はない。

ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.2mL、同皮下注40mgシリンジ0.4mL、同皮下注80mgシリンジ0.8mL、同皮下注40mgペン0.4mL、同皮下注80mgペン0.8mL(アダリムマブ(遺伝子組換え)、アッヴィ):「中等症又は重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とし、小児用量の追加を含む新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。

中等症から重症の小児潰瘍性大腸炎では成人と比較して病変が広範囲に現れる傾向があり、重篤な合併症を引き起こすことがあるためアンメットニーズが存在する。

成人の潰瘍性大腸炎の用法・用量追加では、初回投与4週間後以降、患者の状態に応じて、40mgを週1回又は80mgを2週に1回、皮下注射できることを追加する。現在は、初回投与4週間後以降、40mgを2週に1回の皮下注射で使用する。

海外では、小児の潰瘍性大腸炎は21年6月現在、15の国・地域で承認済。成人の潰瘍性大腸炎に対する40mg週1回投与の用法・用量は63の国・地域で、80mg隔週投与の用法・用量は53の国・地域で承認済。

イムブルビカカプセル140mg(イブルチニブ、ヤンセンファーマ):「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。BTKはB細胞の成熟と生存を制御する細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質。BTKを標的とすることで腫瘍細胞の生存シグナルを阻害し、増殖を抑制する。

慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、同種造血幹細胞移植を受けた患者に発症する合併症。cGVHDに対する一次治療としてステロイドが使われる。しかし、約半数の患者で一次治療で十分な治療効果が得られず、二次治療が必要となるが、cGHVDに対する二次治療は確立していない。

海外では、cGVHDに係る効能・効果で米国を含む29カ国で承認済。

ラパリムス錠1mg(シロリムス、ノーベルファーマ):「難治性リンパ管疾患(リンパ管腫(リンパ管奇形)、リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

リンパ管疾患の病因は明確になっていないものの、PI3K/AKT/mTOR経路の異常活性により、血管やリンパ管の形成を制御している血管内皮細胞増殖因子の発現が増加し、リンパ管内皮細胞などの異常増殖を起こすことが原因のひとつと考えられている。mTOR阻害薬のラパリムスは、PI3K/AKT/mTOR 経路を抑制することで、リンパ管疾患に有効性を示すと考えられている。

リンパ管疾患は、外科的切除が困難な場合もあり、硬化療法、放射線療法などが行われている。しかし、根本的な治療は確立しておらず、日本ではリンパ管疾患に係る適応を持つ薬剤は承認されていない。海外でもリンパ管疾患に係る適応で承認されている国または地域はない。

ネクスビアザイム点滴静注用100mg(アバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組み換え)、サノフィ):「ポンペ病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

酵素補充療法製剤。ポンペ病がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能の低下を阻止することが期待されている。ポンペ病は、ライソゾーム酵素のひとつである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の欠損または活性低下が原因で生じ、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積することで生じる疾患。

アジルバ顆粒1%、同錠10mg、同錠20mg、同錠40mg(アジルサルタン、武田薬品):「高血圧症」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。

小児の用法・用量は、「通常、6歳以上の小児には、アジルサルタンとして体重50kg未満の場合は2.5mg、体重50kg以上の場合は5mgの1日1回経口投与から開始する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減するが、1日最大投与量は体重50kg未満の場合は20mg、体重50kg以上の場合は40mgとする」となった。小児に使いやすい剤形として顆粒剤を追加する。

ビンマックカプセル61mg(タファミジス、ファイザー):「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間はビンダケルカプセル20mgのATTR-CMに対する残余(2029年3月25日まで)。

1日1回1カプセルの経口投与で用いる。既承認のトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬ビンダケルカプセル(一般名:タファミジスメグルミン)は1日1回4カプセル服用する必要がある。患者の負担経験の観点から、1カプセルの服用で済むビンマックが開発された。

海外では21年5月時点で、ATTR-CMに係る適応で50以上の国・地域で承認済。

オンデキサ静注用200mg(アンデキサネット アルファ(遺伝子組換え、アレクシオンファーマ):「直接作用型第Xa因子阻害剤(アピキサバン、リバーロキサバン又はエドキサバントシル酸塩水和物)投与中の患者における、生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時の抗凝固作用の中和」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

直接作用型FXa阻害薬に高い結合親和性を有するヒトFXaの遺伝子組換え改変デコイタンパク質。

血中のFXa阻害薬に結合することで内因性FXaとFXa阻害薬との結合を阻害し、FXa阻害薬の抗凝固作用を中和する。FXa阻害薬の種類、最終投与時の1回投与量、最終投与からの経過時間に応じて、決められた方法で投与する。

FXa阻害薬による治療中の出血性合併症に対しては、重症度に応じた経口抗凝固薬の中止と、利尿による体外排出の促進とともに、早急に経口抗凝固薬の効果を是正する必要がある場合の遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体製剤の投与が考慮される。さらに、内服後早期の出血時の胃洗浄や活性炭投与による薬剤除去が考慮されるが、有用性が確立した対処法はない。

海外では21年6月現在、アピキサバン又はリバロキサバンによる治療中に生命を脅かす出血などの発現時における抗凝固作用の中和に係る効能・効果で、30カ国以上で承認済。

エフメノカプセル100mg(プロゲステロン、富士製薬):「更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間は6年。

天然黄体ホルモン製剤。天然型黄体ホルモンをマイクロナイズド化(微粒子化)することで、経口投与でも吸収しやすくした。卵胞ホルモン剤と併用して用いる。

海外では、ホルモン補充療法における子宮内膜増殖症の抑制に係る効能・効果で、100カ国以上で承認済。

ミダフレッサ静注0.1%(ミダゾラム、アルフレッサファーマ):「てんかん重積状態」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は4年。

成人の用法・用量を追加する。現在は、修正在胎45週以上(在胎週数+出生後週数)の小児のてんかん重積状態に使える。

海外では21年5月現在、承認されていない。ただ、同剤の筋注製剤では、成人のてんかん重積状態に係る効能・効果で米国、ドイツで承認されている。
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