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製薬協・岡田会長「生き残りをかけビジネスモデルを考えるとき」 我々は護送船団ではない

公開日時 2021/09/22 04:52
日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長(エーザイ代表執行役COO)は本誌取材に応じ、「製薬産業のビジネスモデルを考えていかないといけない時期にいま、まさにある」との見解を表明した。国民の健康増進に貢献する観点から、社会保障費の枠の外もビジネスが及んでいくとも見通す。その上で、新たなビジネスモデル構築への重要なキーワードこそが「DX」だとの考えも披露した。一方で、超高齢社会に突入するなかで社会保障費抑制の圧力も強まっていることに警戒感を示した。岡田会長は、受益と負担の議論の必要性に理解を示したうえで、薬剤費にキャップをかけるような議論には反対との姿勢を強調。新時代戦略研究所(INES)の提案する政策提言については、「社会保障費のごく一部である薬剤費だけ取り出して、マクロ経済スライドを導入するという議論には、賛同しがたい」と述べる一幕もあった。

インタビュー全文は、10月1日発行のMonthlyミクス10月号、ミクスOnline(会員限定)に、一問一答形式で掲載します。ぜひご一読ください。

「製薬産業がビジネストランスフォーメーションを求められるなかで、予知・予防を司るアプリケーションや、データの利活用を通じたソリューションの提供など、幅広いサービスの提供が重要になる」-。岡田会長は本誌取材の冒頭でこう熱く語った。続けて、「国内の医薬品ビジネスは、基本的に社会保障費のなかで賄われているが、社会保障の枠の外にもビジネスが及んでいく」とも見通す。このため、これまでサービスの提供対象だった患者だけでなく、健常人に対する予知・予防から貢献する必要があるとの考えを披露し、ビジネストランスフォーメーションの必要性を語った。

一方で製薬協会員会社に対しては、「それぞれがビジネスモデルをどう考えるかも影響するので、こうあらねばならない、と申し上げるつもりはもちろんない」としながらも、「多くの企業が存在価値を認められ、将来に存続できるような価値を維持、強化するためには、価値をしっかり追求することが大切だ」と強調した。

◎強みを有するパートナーと手を組む“水平分業”が重要になる


社会システムや社会構造の変化を踏まえた製薬産業のあるべき姿については、「研究開発から営業まですべて内製化した“垂直統合”モデルから、強みを有するパートナーと手を組む“水平分業”が重要になる」との見解を示した。特に、GAFAをはじめとしたプラットフォーマーと連携したデータ駆動型の新たなビジネスモデル構築の必要性を強調する。

一方で、こうしたビジネスモデルを成り立たせるためには、国をあげたデータ利活用の基盤整備が必要だと政府側に求めた。岡田会長は、リアルワールドデータ(RWD)の利活用で、「医薬品の効果がわかるだけでなく、有効性が期待できる患者背景などもわかってくる。医薬品だけでなく、ヘルスケア、健康増進、QOL向上の観点からデータの利活用は大きなキーになる」との考えを表明。「医療全体を効率化するうえで圧倒的な力を持っている。公共財として様々な場面で使えることが重要だ」と続けた。

薬価については、「薬価収載時になかった医薬品の価値が見出された、逆に価値が得られない場合は、薬価上の見直しが必要だと考えている。これは、データによってはじめてできる領域だ。中医協費用対効果評価部会をはじめ、幅広く議論されるべきだ」と述べた。「医薬品だけでなく、診療報酬上の診療行為、例えば外科手術と化学療法の費用対効果の分析など、様々なところに関係してくると考えている」との見解も示した。

◎医療保険の枠の外の事業活動も視野に 

岡田会長は、「製薬産業は、国民の健康増進を支援し、日本経済の成長を牽引する一丁目一番地だと考えている」と表明。超高齢社会のなかで社会保障費抑制の圧力も強まっているが、「政治的な議論には難しさもあるだろうが、現行の国民皆保険の枠組みのままで、存続することの難しさは誰もが感じているのではないか」と述べた。

さらに、国民負担引上げの議論が難しいなかで、「国民皆保険の枠組みが変わらないとすると、自ずと考えなければならない出口は、受益と負担の関係だ」と強調。「どの範囲を国民皆保険で賄うのか。高度医療は共助でしっかり支えるというのが国民皆保険の基本思想だ。軽医療の受益については、公費でどの範囲を賄うべきか、議論は必要だと考えている。医療保険のなかで事業が行われている製薬業界もすべて保険のなかでみてほしい、というのは無理がある。医療保険の枠の外で、事業活動をすることを本気で考えないといけない」との考えを示した。

◎薬剤費論議 キャップをはめる議論に反対

一方で、薬剤費の議論については、キャップをはめるような議論には真っ向から反対の姿勢を示した。INESは薬剤費の伸びを名目GDPの成長率を上限としてマクロ経済スライドを導入することを提言しているが、“社会保障費全体”について議論する必要性を強調。「製薬産業は国民の健康増進と、日本の経済成長を牽引する側面を持っている。GDPを伸ばすのが製薬産業だ。公的保険の中か外か、は別としてキャッピングするということは日本のイノベーションをついばむような懸念がある」と述べた。また、特許品以外を調整弁に使うという発想についても、「製薬産業に身を置く一員として、受け入れがたい」とも述べた。

◎長期収載品だけでビジネスを成り立たせるモデルは通用しない

革新的医薬品については薬価上の評価を求めた一方で、長期収載品については米国など諸外国ではほとんどポジションがない。政府も特許期間満了後は後発品に席をゆするという方向性を10年以上前から出し、業界団体としても同意していると説明した。岡田会長は、「長期収載品だけでビジネスを成り立たせるビジネスモデルは今後、通用しないと考えている」と強調。「革新的医薬品、長期収載品、後発品の価格、価値を構成する要素はそれぞれ異なっている。政府にはそうした因子を理解したうえで、プライシングについて考えていただきたい。我々も、護送船団ではやっていけないと思っている。日本の製薬産業すべてを守ってほしい、と申し上げているわけではない。政府には、置かれた状況を見て一歩も二歩も進んだ検討をしてほしい」と続けた。

◎医薬品の多面的価値 労働生産性や介護負担軽減の視点踏まえた議論を

製薬協の主張する“医薬品の多面的価値”については、諸外国でも、社会復帰ができるという労働生産性の観点や、患者家族の介護負担軽減などの医薬品の多面的価値が議論されていることを説明。「今後、核酸医薬や遺伝子治療薬など革新的新薬の登場が見込まれるなかで、少なからずこの議論になると考えている」と見通した。そのうえで岡田会長は、「今すぐ薬価に反映してください、と言うつもりはないが、医薬品が広い意味で多面的価値を持っていて、その大きさについて議論されることが非常に重要だ。医薬品のもつ多面的価値を議論の俎上にあげることが少なからず、私の役割だと思っている」と述べた。

岡田会長は、「国家繁栄のためにも、国民の健康増進のためにも、製薬産業が必要不可欠であるということを国民に理解いただけるよう、発信していきたい」と強調した。
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