米PhRMA・BIO報告書 欧州の薬価抑制策は研究開発を阻害 結果的に画期的医薬品へのアクセス障壁に
公開日時 2021/11/30 04:50
米国研究製薬工業協会(PhRMA)と米バイオ産業協会(BIO)は11月23日、欧州各国政府による薬価管理制度は、医薬品業界の研究開発を阻害し、結果的には患者の画期的医薬品へのアクセスの障壁となるとの報告書を発表した。
◎ベンチャーキャピタル投資が14%減少、バイオテクスタートアップ企業への投資が9%減少など
報告書のサマリは以下の通り。▽欧州では、米国と比べ、ベンチャーキャピタル投資が14%減少(初期段階研究投資が10%減少、後期段階研究投資が17%減少)、バイオテクスタートアップ(新興)企業への投資が9%減少、▽2019年までのEUにおける後期段階ベンチャーキャピタル投資は、米国の3%に過ぎない、▽2003~19年までに米国のバイオテク投資は、6倍に増加したが、欧州ではほとんど変化していない、▽2020年における年間の米国バイオテクスタートアップ企業(総数)の占める業界におけるシェアは、欧州の同企業シェアの約3倍-という内容。
◎PhRMA・Jenny Bryant上級副理事長「患者は新規治療法にアクセスできない」
PhRMAのJenny Bryant上級副理事長(政策および研究担当)は、「この新たな分析は、政府が医薬品の価格設定をしていると患者は新規治療法にアクセスできず、長く待たされるという世界中で見る姿を確認させるものだ。過去数十年、我々が欧州において見てきたように他の国に投資と仕事が流出し経済も困窮する」と述べた。そのうえで、「リスクがあるにもかかわらず、政府による価格設定は、議会で検討されている薬価管理制度プランの重要な部分を占めている。それよりもむしろ、政策立案者は、イノベーションを犠牲にすることなく患者の負担を減少させる政策に集中すべきである」と訴えた。
◎BIO・John Murphy最高政策責任者「画期的医薬品創製を阻害する」
BIOのJohn Murphy最高政策責任者(CPO)は、同報告書は画期的医薬品創製を阻害することを示したと述べたうえで、「私は、立法者らが、将来の薬価提案を検討するときに、この知見と米国の患者へのネガティブな影響を考慮することを望みたい」と話した。
今回の報告者は現在、米議連邦議会においてメディケア(公的高齢者保険)で給付する薬剤について政府に価格交渉権を持たせるという薬価抑制策が論議されており、それを業界としてけん制するための動きと見られる。なお、研究はPhRMAとBIOが、ヘルスケア関連コンサルタント企業Vital Transformationに委託研究した。