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SGLT2阻害薬を含めた新たな心不全治療の啓発が必要に NBI・日本リリーセミナー

公開日時 2022/02/04 04:49
日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは1月27日、「慢性心不全治療におけるアンメットニーズと最新治療法」をテーマにプレスセミナーを開催した。昨年11月にSGLT2 阻害薬ジャディアンス錠(一般名:エンパグリフロジン)が慢性心不全に対する適応を取得したのに伴い、あらためてその病態や最新治療などの啓発を図ることが狙いだ。同セミナーでは九州大大学院医学研究院循環器内科学教授の筒井裕之氏が心不全の疫学や治療などについて、かわぐち心臓呼吸器病院副院長の佐藤直樹氏が慢性心不全発症後の生活満足度に関する患者・家族調査結果についてそれぞれ講演。また、日本ベーリンガーインゲルハイムより、今回の承認申請の根拠となった臨床試験の説明が行われた。

日本循環器学会の診療実態調査によると、循環器疾患研修施設を対象とした入院患者は、心不全は急性期心筋梗塞より頻度が高く、増加割合も大きい。その要因は循環器疾患を患う患者さんの高齢化である。全国レジストリーにおける心不全入院患者数の予後に関するデータ(JROADHF研究)では、院内死亡率は7.7%となるほか、退院後の患者も1年以内の死亡16%、再入院31%、4年経つと死亡は44%、再入院は48%にのぼる。九州大の筒井教授は「がんの5年生存率は7割近くであり、心不全という単一の疾患だが少なくともがん全体より予後が悪い」とその特性を指摘した。

別の研究で予後の詳細をみていくと、院内死亡率は低下傾向であるが、1年死亡率、再入院率は治療の進歩にかかわらず上昇傾向となっている。また筒井氏は心不全のステージ分類を示しながら、「心不全リスクの高いステージA、Bの段階では、心不全による増悪を繰り返さないようにするための予防、心不全症候が出現するステージC、Dでは症状コントロールやQOL改善、入院予防・死亡回避、再入院予防などが治療目標となる」と述べた。

◎SGLT2阻害薬は標準治療での効果が不十分な症例に対して推奨クラス1に


糖尿病治療薬として登場したSGLT2阻害薬だが、心不全をめぐっては、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)に対するDAPA-HF試験とEMPEROR Reduced試験の2試験の結果で、死亡や心不全による入院を有意に抑制したことが示されている。特に「ACE阻害薬などの従来治療に上乗せすることにより、さらなる予後の改善も示された。また糖尿病でない患者の入院を抑制したことは極めて重要」と筒井氏は述べた。これらの試験を踏まえて2021年春に出されたガイドラインのアップデート版では、従来の標準治療に加えて、ACE阻害薬/ARBをARNI(サクビトリルバルサルタン)に切り替える、またはSGLT2阻害薬を追加するという選択肢が示された。SGLT2阻害薬は、標準治療での効果が不十分な症例に対してエビデンスレベルA、推奨クラス1の「行うべき治療」と位置づけられている。

◎投与初期の可逆性の腎機能低下などに注意を


筒井氏はSGLT2の処方に際し、投与初期に可逆性の腎機能低下が認められるここと、利尿作用があるためループ利尿薬の用量調整の必要性を指摘し、注意を促した。

また、2021年8月に改訂された欧州心不全学会のガイドラインでは、HFrEFの死亡率を下げる目的から、全ての患者に基本薬に加えてSGLT2阻害薬の投与が推奨された点についても言及。「このように心不全治療薬が増え、どのような順番、組み合わせで投与するかが重要な課題になっている。現在は患者ごとに血圧や心拍数、腎機能などのプロファイリングの上、優先すべき薬剤を決めていくが、SGLT2阻害薬はどのような患者にも投与できるというメリットがある」と述べたうえで、「将来的には患者さんごとに個別化医療を目指していくという時代が訪れるのではないか」と展望した。

◎患者や患者家族 HFrEFかHFpEFか「わからない」が4割

かわぐち心臓呼吸器病院の佐藤副院長は、日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーが2021年6月に行った「慢性心不全患者さんおよび患者さんご家族の実態調査」の結果について報告した。対象は、慢性心不全で薬剤療法を受けている患者203 名、患者の介護・サポートするご家族 104 名。調査はインターネットで実施した。

症状自覚時と診断時の年齢について尋ねたところ、その間隔が患者本人は約1年、患者家族では2年半と両者の回答に開きがみられた。また、自身の抱える疾患の病態についても、収縮性心不全(HFrEF)か拡張性心不全(HFpEF)か、「わからない」との回答が患者、患者家族ともに4割を占めた。活動性や重症度を示すNYHA分類についても、患者や家族の多くが認識していなかった。

現在の生活満足度は、発症前を100点として平均65.9点。高満足度群(90点以上)は2割にとどまる一方、低満足度群(49点以下)は16%だった。「体が動かせなくなってきた」、「歩行困難、散歩がつらい」、「趣味のスポーツを断念」など活動性低下に伴う理由が多く寄せられた。

佐藤副院長は、「患者さんとそのご家族にとって、日常生活に影響を与え、負担となっていることがあらためてこの実態調査で明らかになった」と強調した。適切な治療を受けられる環境整備や患者に正しく疾患について理解を深めてもらう重要性を指摘したうえで、「心不全の早期診断・治療、および予後改善を達成するために心不全の啓発活動をより強化することが必要」との見解を示した。
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