日本イーライリリーのシモーネ・トムセン代表取締役社長は5月8日、東京都内で年次業績記者会見に臨み、2024年の売上高が前年比18％増の2641億円になったと報告した。増収要因はマンジャロ、エムガルティ、ベージニオなど新製品・成⾧製品群の売上が前年比25%増加し、全売上高比率も91%に到達。これにより2年連続2桁成長を達成した。トムセン社長は、「我々は新しい成長時代に入った」と強調。「2030年までに製薬業界のリーディングカンパニーを目指す」と宣言し、目標達成への“Key Enablers”として、①ケサンラ、ゼップバウンドの成長、②西神工場(神戸市)への投資と供給能力の増強、③社員が能力発揮できるインクルーシブな文化の醸成－をあげた。

◎「日本イーライリリーは2025年に設立50周年を迎える」

「日本イーライリリーは2025年に設立50周年を迎える」－トムセン社長は会見冒頭のプレゼンでこう切り出した。その上で、これまでの足跡を振り返り、「ただ単純に薬を届けるというコミットメントだけでなく、日本人の生活を向上させ、そして社会のより大きな利益に貢献する使命を果たしてきた」と説明。続けて、「私達の揺るぎないコミットメントで24年は非常に強い業績と成長を拡げることができた」と述べ、総売上高18％増、販売数量21％増を高く評価した。

◎直近5年の平均成長率15.1％　国内トップ15社中3番目の高さ　新製品・成⾧製品群が牽引

同社は2019～2024の5年平均成長率が15.1％で、国内製薬トップ15社の中で3番目に高い成長率を誇る。24年は、アトピー性皮膚炎治療薬イブグリース、抗悪性腫瘍剤ジャイパーカ、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症治療薬ケサンラといった新製品を相次いで上市。加えて、25年4月に肥満症治療薬「ゼップバウンド」を発売するなど、この間に合計8品目の製造販売、適応追加の承認を取得している。

一方で、24年の製品別売上高をみても、ジャディアンスは前年比32.7%増の786億円、ベージニオは19.4%増の692億円、マンジャロは403.2%増の276億円、エムガルティは37.4%増の113億円と、いずれも新製品・成⾧製品群が２桁超の市場浸透を果たし、業績伸長を牽引していることが分かる。特に、軽度認知障害および軽度認知症治療薬ケセンラにトムセン社長は言及し、「アルツハイマー病研究に80億ドル以上を費やしてきた成果である。我々今後もこの分野に投資を続ける」と今後の成長に強い意欲を示した。

◎「より健康で持続可能な社会を共に作りたいと思っている。これこそが我々の大胆な野心だ」

トムセン社長は「野心的戦略」と表現しながら、「2030年に向けて製薬業界のリーディングカンパニーを目指す」と表明した。「リーディングカンパニーとして、単にビジネスを追求する、あるいは利益、市場シェアを追求するだけではない。それを超えて我々が持っている（創薬イノベーションの）インパクトを持って、より健康で持続可能な社会を共に作りたいと思っている。これこそが我々の野心だ。これは大胆な野望ではあるが、これを達成できると考えている」とも強調した。

2030年への目標達成に向けた“Key Enablers”では、ケサンラやゼップバウンドの成長への強い期待を表明した。また、マンジャロやゼップバウンドをはじめとする需要増加に備え、西神工場の自動化生産ラインを拡充し、今年7月に稼働する予定だと明かした。同社は2020年以降、製造拠点の増強にグローバル全体で500億ドルを投じている。日本も22年以降70億円の投資を行っているところだ。

このほか、社員が能力を最大限に発揮できるインクルーシブな文化の醸成にも注力する。女性社員のリーダーシップ開発として女性管理職割合を32％に高めたほか、女性役員も46％を占めるに至った。「エイジョカレッジ」において審査員特別賞を3度受賞している。このほかにも多様なバックグラウンドをもつ社員の採用なども促進する方針を示した。

◎AI活用「時間を有効活用して医師等に情報提供するＭＲ活動に活かしたい」

一方、AIやデジタル活用についてトムセン社長は、「日本はもちろんグローバルでもバリューチェーンの全てにおいて最新テクノロジーの利活用に取り組んでいる」と強調。「社内でも20～30のプロジェクトがEnablers（手段）として走っている」を明かした。MR活動もこれに含まれており、トムセン社長は、「時間を有効活用して医師等に情報提供するＭＲ活動に活かしたい」と意欲を示し、引き続きAI活用のケイパビリティへの投資を継続する考えを表明した。