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FIRM・畠会長 再生医療等製品の社会的価値に基づく新算定方式導入を 上市後に付加価値反映の仕組みも

公開日時 2022/09/30 05:54
再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の畠賢一郎代表理事会長は9月29日、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(座長:遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、「再生医療等製品の価値や特徴、多様なイノベーションを評価できる新算定方式を導入すべき」と主張した。「医療費や社会的価値に基づいた価格算定や既存治療に対する付加価値を上市後にも反映できる仕組みを想定している」と説明した。再生医療等製品は研究・開発・製造、流通・市場のあらゆるフェーズで既存品とコスト構造が異なる。一方で、長期にわたる有効性を通じた社会的価値創出が期待されており、「医薬品との違いが現行の価格算定方式では適切に評価をされていない」と強調した。

◎欧米価格に比べて日本の価格は低い「結果として日本市場の魅力は相対的に低下」

再生医療等製品をめぐっては国内で17品目が上市されており、現在のところ、医薬品や医療機器に分けられ、価格が算定されている状況にある。畠会長はモダリティが多様で大量生産ができないことや、医師の手技に依存する製品もあるなど、既存の医薬品との違いを説明した。そのうえで、「再生医療等製品特有の多様なコスト構造や少ない投与回数で長期にわたる効果が期待できる製品の価値などが現行制度では適切に評価できていないと考える。加えて再生医療等製品では、中間年改定は現時点でほとんど影響を及ぼしていないものの、欧米の価格と比較して日本の価格が低く結果として日本市場の魅力は海外と比較して相対的に低下しつつある」と述べた。

そのうえで、再生医療等製品独自の算定方式の必要性を強調。「製品の多様性を大きく定量化することが難しい製品特性や価値も想定されるが、再生医療等製品独自の価格体系を作るなどで対応が可能ではないか」と述べた。「2014年の薬事法(現・薬機法)改正によって再生医療等製品のカテゴリーができた。従来の医薬品、医療機器とは違う考え方が存在するということを前提に、議論が深まっていった。薬価についても、どうしたらカテゴリーができるかというよりかは、カテゴリーができたうえで、多様性に対してどういう考えていったらいいのか、個別対応していく必要があろうかと思う」とも述べた。

◎坂巻構成員「投資や製造に対してある程度の原価計算必要では」


坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)は、「再生医療等製品だけではなく、新しいモダリティを開発する場合には、製造コストやそれに対する投資をきちんと評価しないと黒字にすることは厳しいだろう。投資や製造に対してある程度、原価計算というところが必要ではないか」との考えを表明した。畠会長は、「原価計算方式でも、すべて特別に、製品に応じたものをしつらえないといけないことが大きな課題になるかと思う。医師が手術手技等、特殊な手技をもって使うものであれば、医療として浸透するのに時間がかなりかかる。色々な情報収集、もしくは先生方に対しての情報提供コストが相当かかる。一方で、製品の売上が十分ではないというところもあって、イニシャルな部分のコストがすごく大きいかと思う」と説明。「再生医療等製品はかなり市場が小さい、適応が限られている、施設基準等もある。これは規制の問題だと思うが、規制と薬価のバランスが重要だと思う。市場が小さく、提供できる製品が少ないがゆえに、例えば、一部変更申請が必要になった場合、ここの部分の間が全体のいわゆる売上に対する利益に対するバランスを圧迫している」とも述べた。

◎成川構成員「新たな価格、制度が必要だという提案に私も全く同感だ」

成川衛構成員(北里大薬学部教授)は「再生医療等製品について新たな価格、制度が必要だという提案については私も全く同感だ。研究開発の投資回収や、製造のコストの回収ということは別に考えていかないと、事業として成り立たないというところ私も全く同感だ」と述べた。そのうえで、製品の持つ社会的価値、多面的役割については、「ベースのベンチマークにはなかなか使いづらい」と指摘。「製品が出たことによる医療の負担や介護の負担、社会復帰されての生産性の向上とか、そういったものは、長い目でみたときにどうか、きちんとデータをとっていくべきだと思っている」と述べた。

いわゆる成功報酬型についての質問も構成員からは出た。芦田耕一構成員(INCJ執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)は、「薬価は高額だが、効果があった場合のみ保険償還をするという、いわゆるペイフォーパフォーマンスの仕組みについてはどのようにお考えか」と質問。畠会長は、「モダリティによっては、こういった考え方が必要になってくるものもあるだろうと思っている。長期間の効果が価値だという話であればそこを見ていく必要がある。それを販売直後にどこまで判断できるのかということが問題だ。どこまで遡って訴求できるのかという問題があると思う」との認識を表明。「選択肢のひとつとして、大変重要な考え方と思っている」と述べた。FIRMでもペイフォーパフォーマンスを含め、いくつかの算定方式について議論を進めていると説明した。

◎再生医療等製品 国内17製品「半分は海外で未上市」ベンチャーの体力ではアプローチしづらい

再生医療等製品を創出する主体が日本発のアカデミアやベンチャーが多い産業構造も議論の俎上にあがった。FIRMの加納浩之運営委員長は、「日本発のベンチャーやアカデミアが日本で先に開発をするというモデルがかなり多くなっている。そういう観点で、サイクルを回すこと自体が日本でできていないというところが再生医療特有の問題と考えている」とも述べた。欧米ですでに承認されている再生医療等製品をのうち、50~60%が国内で開発されていない一方で、日本で上市された17品目のうち、「約半数は海外では未上市」(FIRM・畠会長)であることも説明。「日本発のものはベンチャー企業がアカデミアからお引き受けした経緯があるので、ベンチャー企業の体力を持って海外になかなかアプローチしづらいという状況がある」と述べた。

井上光太郎構成員(東京工業大工学院長)は、「価格だけなの問題なのか」と問題意識を表明。「大学やバイオベンチャーがひとつの担い手だと言っても、海外と比較したときに全く規模感が違ったり、資金規模等が違って、結局リスクを連続して取れないことがボトルネックになっているのはないか」と指摘した。

◎FIRM・加納運営委員長「薬価以外の制度設計の課題、環境整備もあわせて必要」

畠会長は、「端的に答えると、価格だけではないと思う。ベンチャー支援等の広さ、それが持続的に支援できるかが重要だ」と表明。「一方で、再生医療等製品をイノベーションという形でやっているうちは良いが、だんだんやはり通常の製造業、医薬品医療機器製造業と同じようにサステナブルやっていく点においては、価格というファクターはかなり大きい部分を占めている。研究開発として部分であれば良いのだが、事業拡大していくなかで価格は重要だということで申し上げた」と説明した。加納運営委員長も、「例えば医療環境の整備という意味では、薬価以外の制度が非常に重要。薬機法もしくは生物由来原料基準のように、日本で少しユニークな制度もある。こういうものが、日本で研究開発をするうえで、少しハードルになっているところもある。ビジネス環境の整備だけではなく、薬価以外の制度設計の課題、環境整備と言うのもあわせて必要だと理解している」と述べた。




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