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厚労省・水谷産情課長 後発品の品質確保は大前提「自主点検は最後の機会」 マネジメントシステムのあり方、骨太視野に検討(part2)

公開日時 2024/04/03 04:53
厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は本誌取材に応じ、後発医薬品を中心とした供給不安が続く中で、「品質確保は産業構造を議論する大前提」との認識を示した。後発医薬品の製造販売承認を有する企業に対し、承認書と製造実態の整合性を確認する自主点検を遅くとも10月までに実施することを要請しており、「これが最後の機会だと思って取り組んでいただきたい」と呼びかけた。供給不安の“根源的な解決”に向けて、産業構造の見直しに向けた検討も進める。水谷課長は、一つのポイントとして、「医薬品等の安定供給確保に係るマネジメントシステム」のあり方をあげ、「骨太方針など政府の重要な政策方針が取りまとめられる時期を念頭に置きながら、検討会で精力的にご議論いただき、取りまとめをしていきたい」と意欲をみせた。(望月英梨)

厚労省は、後発医薬品の製造販売承認を有する企業に対しては、承認書と製造実態の整合性を確認する自主点検を遅くとも10月までに実施することを要請。日本製薬団体連合会(日薬連)は、自主点検の対象範囲をジェネリックメーカーだけでなく、後発品の製造販売承認を1品目以上有する企業184社、9341品目に対象範囲を拡大。書面での確認に加え、製造・試験担当者に直接ヒアリングを行うこととしている。

◎品質確保は「医薬品を世に送り出している以上、製薬企業としての基本的な責務」

水谷課長は、「品質確保は産業構造を議論する大前提だ。製薬業界には改めて徹底した点検をお願いしたい」と強調。今回を「最後の機会」としたうえで、ヒアリングまで行うことで、「“承認書と手順書が合致していたから問題ない”ではなく、実際に行われていることまで確認していただく。医薬品を世に送り出している以上、製薬企業としての基本的な責務だと思う。きちんと点検し、問題があれば報告してほしいというのは、当然のことを申し上げているつもりだ」と釘を刺した。行政としても、自主点検の後に無通告立入検査が続くことをあわせて打ち出すことで、点検の実効性を担保する考えを示した。

後発品を中心とした供給不安が続く中で、品質確保を大前提としたうえで、「根源的に対応していくためには、後発医薬品の産業構造上の課題に向き合っていかなければならない」との見解を示した。

「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」(後発品検討会)では報告書の取りまとめに向けた議論が進む。水谷課長は、「“後発医薬品産業のあるべき姿”ということでご議論いただいているが、品質の確保された医薬品を国民に安定的に供給するという企業として社会的責任を果たすうえで、“取り戻さなければならない姿”をご議論いただいていると思っている」と説明。「製造管理・品質管理体制の確保や、持続可能な産業構造の構築、さらに業界全体として安定供給を確保することを目指した改革を一定の集中改革期間の中で行っていくことが必要と考えている。これには、個社として取り組んでいただくことだけでなく、業界全体として取り組んでいただかなければならないことがある。“取り戻さなければならないあるべき姿”を実現した先に、バイオシミラーや国際展開など、様々な観点から描く産業のあるべき姿があると思う」と述べた。

「産業としての将来像をどう描くかは、我々だけでなく、業界としても大いに議論し、打ち出していってほしい。現在はそれを議論する前のいわばベースラインとして、“取り戻さなければならないあるべき姿”を明確にし、そのために必要な環境整備について議論していただいているということだ」と強調した。

◎産業構造めぐる「3つのポイント」

そのうえで、後発医薬品の産業構造について、「製造管理・品質管理体制の確保を前提とした上で、大きく3つのポイントがあると考えている」との考えを示した。

一つは、「企業間で品目統合するなど、“少量多品目生産”を適正化するという方向性」。そのための打ち手として、供給停止・薬価削除プロセスの明確化・簡素化について、「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」で議論が進められている状況にある。

二つ目のポイントとして、「個々の企業で安定供給体制を整備していただくだけでなく、供給不安が起きそうな際にこれを厚生労働省に事前にご報告いただき、必要な対応策について全体としてマネジメントする、“医薬品等の安定供給確保に係るマネジメントシステム”を確立する必要があると考えている」との考えを表明した。

改正感染症法・改正医療法の施行を踏まえ、医薬品の供給不安時の製造販売業者からの報告を見直し、供給不安のおそれがあった際の「供給不安報告」と、実際に供給不安が起きた際の「供給状況報告」へと明確にし、報告の徹底を求めた。

水谷課長は、「供給不安をいち早く察知し、行政としてできる限りの対応を行う、“マネジメントシステム”が必要だ」と強調。具体的には、「供給不足が生じるおそれが判明したら厚労省に報告をいただき、事前に対応できる策がないか検討する。そのうえで仮に供給停止や限定出荷が起きた場合には、厚労省において情報を速やかに総覧性をもって公表するとともに、必要に応じ増産要請を行うなど、一連の流れがシステムとして確立された形とする必要があ」と説明した。こうした観点からさらに何が必要か、「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」で議論が進めている状況だとした。

また、「個々の企業における安定供給体制の整備という面では、日本製薬団体連合会(日薬連)が業界自主基準で、安定供給を管掌する“安定供給管理責任者”の設置や“安定供給マニュアル”の策定を求めているが、製造販売業者にしっかりと安定供給体制を構築していただくためにどういう方策があるか、議論が必要だと考えている」とも述べた。

3つ目のポイントとして、「こうしたことを可能とする企業の体制を考えると、ある程度大きな規模で生産や品質管理等を行っていくための体制の構築が重要になる」との考えを表明した。

後発品検討会では、ビジネスモデルとして、中堅・小規模企業が数社で協業しあう“コンソーシアム(協業体制)”が議論となった。水谷課長は、「コンソーシアムというのは抽象的な言葉で、特に決まった形態が念頭に置かれたものではないと理解をしている」としたうえで、
品質や原材料の調達などの例をあげ、「個々の企業が品質の確保された医薬品を安定的に供給するという役割を果たすための体制の確立を考えれば、ある部門を協業とすることも検討に値するのではないか」との考えを示した。また、製造についても、「ポートフォリオをカバーし合う形がいいのか、製造を1社に集中させる形の方がより効率的に安定的に供給できるのか、などの議論はあってしかるべき。こうした方向性を企業が模索した結果、それがコンソーシアムと呼ばれるのか、それとも協力・連携と表現されるのか、あるいは合併やM&Aのような形かをとるかというのは、形態の問題に過ぎない」と表明。「個社同士が連携・協力し、効率的に安定供給できる体制を模索していくための環境整備について、独禁法上の整理も含めて検討していきたい」と述べた。

◎後発品のプレゼンス増す中で「業界として安定供給の姿勢打ち出してほしい」

2024年度薬価制度改革をめぐっては中医協で、個社だけでなく、“業界”として姿勢が問われる場面も多くみられた。水谷課長は、「後発医薬品の数量は全医療用医薬品の半数にのぼるほど、医療保険の中でプレゼンスが増している。国民皆保険の中において、安定供給という使命は、個社としても業界としても、それだけ大きくなっているということだ。だからこそ、安定供給に向けた取り組みは、個社としての取り組みだけでなく、業界全体としてもきちんと打ち出していってほしい」と訴えた。「逆に言えば、これだけ業界のあり方が耳目を集め、議論される中で、自ら率先して業界のあり方を打ち出していくチャンスでもあるのではないか。供給不安を起こしている点は真摯に反省すべきだが、その原因に向き合ってやるべきことを打ち出していくということは、医療保険の中で重要な位置を占めている業界の一つの使命ではないかと思う。行政へ要望すべきことはもちろん言っていただければと思うが、“行政が何とかしくれる”という発想ではなく、業界としてやるべきことを考えていただきたい」と訴えた。


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