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中医協薬価専門部会 「平均乖離率0.5倍超」含む試算提示 医療費削減額は5000億円、75%が対象に

公開日時 2022/12/12 05:56
厚生労働省は12月9日の中医協薬価専門部会に、2023年度改定の対象範囲について、21年度改定よりも範囲の広い「平均乖離率0.5倍超」を含む試算を提示した。平均乖離率の0.5倍超が対象となった場合、対象品目は75%(1万4500品目)、医療費削減額は5000億円となる。医薬品の安定供給確保が論点となるなかで、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、平均乖離率の0.5倍超まで範囲を広げることで財源が増加するとして、「この財源の範囲で、例えば不採算で安定供給ができないものを個別に精査して救済するということは検討の余地があると考えている」と述べた。このほか、製薬業界が要望した、医薬品の安定供給や物価高騰について、改定率の一律の緩和については、診療・支払各側が必要性を否定した。

◎「平均乖離率0.625倍超」の場合 1万3400品目が対象に 医療費削減額は4900億円

厚労省は、平均乖離率7.0%となった22年薬価調査結果に基づいた、影響額を試算した。「平均乖離率0.5倍超」の場合の対象品目数は1万4500品目(75%)で、新薬は1730品目(72%)、長期収載品は1620品目(93%)、後発品は9090品目(86%)、その他品目は2100品目(44%)となる。医療費削減額は全体で▲5000億円(新薬▲1700億円、長期収載品▲1340億円、後発品▲1820億円、その他品目▲170億円)。「平均乖離率0.625倍超」の対象品目は、1万3400品目(69%)。新薬は1500品目(63%)、長期収載品は1560品目(89%)、後発品は8650品目(82%)、その他品目は1710品目(36%)。医療費削減額は全体で▲4900億円(新薬▲1590億円、長期収載品▲1330億円、後発品▲1810億円、その他品目▲140億円)などとしている。

◎診療側・長島委員 安定供給問題「医療現場では追加的な負担が生じている現状がある」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「医療現場では、出荷停止、出荷調整によって、日常に使う医薬品がないため、患者さんに大変なご迷惑をおかけしている状況にあり、仮に処方できたとしても代替品に変更しなければならず、患者さんへの丁寧な説明が求められるなど、医療現場では追加的な負担が生じている現状がある」と説明。「前回並みの平均乖離率の0.625倍超を対象範囲にしたとしても、相当な経済的影響が出ることが見て取れる。医療現場の状況を踏まえれば、改定対象範囲については国民負担軽減に加えて、国民の命を守るための医療提供体制の安定化についても十分に配慮した上で判断すべき」との見解を示した。診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)は、「少なくとも前回を超える範囲での実施は行うべきではないと改めて主張させていただく」と述べた。

◎支払側・松本委員 範囲0.5倍で影響額100億円増加。この財源の範囲で個別に精査して救済

支払側の松本委員は、製薬業界の意見陳述について、「業界側のご説明は値引き競争によって乖離が生じるという一般論にとどまり、他の委員の皆様方が質問されたことへの回答も含めて、データの背景や今の状況について特段のご説明はなかったと受け止めている。23年度改定に向けて具体的な検討するために必要な踏み込んだご説明が、業界からは残念ながらいただけなかったと感じている」と述べた。そのうえで、「全体を流してみると、少なくとも薬価制度として一律に対応しなければならない重大な変化が足元で起きているわけではないと理解せざるを得ない。ましてや改定を実施しないという選択肢は中医協の判断としてはあり得ないということは強く指摘させていただく」と釘を刺した。

対象範囲については、「全体として、前回から対象範囲を狭めるような理由は見当たらない」としたうえで、「0.625倍をベースとして、仮に今回限った特別な配慮を行うということであれば、範囲を0.5倍まで広げれば、影響額が100億円増加する。この財源の範囲で、例えば不採算で安定供給ができないものを個別に精査して救済するということは検討の余地があると考えている」と述べた。

◎診療側・長島委員「特許期間中の新薬を改定対象から外すことは4大臣合意を超える」

ドラッグ・ラグの再燃の懸念や為替変動による研究開発費増大について懸念があることから、新薬に配慮する必要性を指摘する声もある。診療側の長島委員は、「中間年改定の目的が価格乖離の大きな品目の薬価を改定することってあることからすれば、特許期間中の新薬を改定対象から外すことは4大臣合意を超えることになると受け止めている」と表明。「イノベーションの評価は重要な視点ではあるものの、前回も指摘申し上げた通り、例えば原価計算方式で算定される場合の原価の開示度が低いまま推移していることなど、問題も指摘される中では、前回の中間年改定である21年度改定を超える対応するのは慎重に判断すべきと改めて申し上げる」と述べた。一方、支払側の松本委員は、「新薬創出等加算こそが、23年度薬価改定で取り得る措置だと考えている」と表明した。松本委員は、新薬創出加算の累積額控除の実施について「合理性がある」とこの日の中医協でも主張した。

◎新薬創出等加算の対象品目 「平均乖離率の0.625倍超」で240品目、「0.5倍超」で310品目

なお、厚労省は、新薬創出等加算品目(600品目)の改定対象は対象範囲が「平均乖離率の2倍超」ではゼロ、「平均乖離率1倍超」では50品目(医療費削減額は190億円)、「平均乖離率の0.75倍超」では160品目(460億円)、「平均乖離率の0.625倍超」では240品目(640億円)、「平均乖離率の0.5倍超」では310品目(700億円)との試算を示した。

◎安定供給問題「企業の対応に端を発した。薬価上の対応で問題は解決しない」長島委員

医薬品の安定供給をめぐっては、診療側の長島委員は、「今回の問題は企業の対応に端を発するものであり薬価上の対応をすることでこの問題が解決するとは思えない」と指摘。「産業構造やビジネスモデルに関わる課題への対応が同時にどのように行われるのか、よく見定めたうえで議論を行う必要があると考えている」と述べた。

◎「産業構造を含めて業界のあり方を改善しなければ問題解決はない」松本委員

支払側の松本委員は、欠品や出荷調整などの日薬連のアンケート調査を引き合いに、「ほとんどが法令違反を発端としたもので、製薬業界は別の事情によるものはごくわずかということがわかった。安定供給については、今回薬価で何か対応するというよりは、産業構造を含めて業界のあり方を改善しなければ問題の解決にはつながらない」と指摘した。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「安定供給の問題と薬価の問題とは別の問題であると認識して議論をしなければならず、乖離の状況を考慮に入れず、ある分野を一律に対象から外すようなことは慎むべき」と述べた。そのうえで、「安定供給に深刻な支障が生じている状況を鑑みて、不採算となっているものにつきましては、改定対象には含めた上で一定程度の配慮を行うことも考慮に入れて議論をしてもいいのでは」と述べた。

◎薬価改定率の一律の緩和 診療・各側とも否定的な姿勢を表明

このほか、製薬業界は意見陳述で物価高騰や為替変動の影響を踏まえた医薬品の安定供給の観点から、薬価改定率の一律の緩和について訴えたが、診療・各側ともに否定的な姿勢を示した。

診療側の長島委員は、「今回は安定供給に支障が生じている品目がある程度カテゴリー別に整理されている印象を受けている。一律に緩和を行うことの必要性は認めない」と述べた。診療側の有澤委員は、「安定供給や新薬のイノベーションの推進のためには、改定する薬価の引き下げを広く一律に緩和するという対応ではなく、影響が大きいカテゴリーに特化した対応などが必要ではないか」と述べた。

支払側の松本委員は、「特定の分野を対象から外したり、21年度改定のコロナ特例のように一律に引き下げを緩和したりするのは不適切だと指摘させていただく」と強調した。

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