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【FOCUS 辰巳化学の異物混入問題】 日医工や日本ケミファにも波及 ビジネスモデルの再構築が急務に

公開日時 2022/12/19 04:52
辰巳化学の松任第一工場で発生した異物混入に伴う製造品の出荷一旦停止の余波はさらに拡大し、深刻さを増している。12月15日には日医工が同工場に委託製造しているソファルコン錠50mg「TCK」の出荷停止を公表した。翌16日には日本ケミファがアゼルニジピン錠 8mg「ケミファ」など複数製品で次回入荷の見通しが立たない状況にあると医療関係者向けに情報提供している。すでに共和薬品や日本ジェネリックも相次いで「入荷遅延」で一部製品の限定出荷を公表したところ。他の後発品企業への波及も懸念されており、安定供給問題の新たな火種となってきた。

「大変懸念していることは、今週も製品に異物が混入して、工場が製造停止となったケースが発生し、一部製品が限定出荷となるなど、医薬品の安定供給の問題は引き続き深刻で、ますますこの問題が長期化することが予想されている」-。2023年度薬価改定の骨子案を議論した中医協薬価専門部会で支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、こう指摘した。奇しくも、物価高騰や為替変動の影響で不採算となっている医薬品1100品目(115社)を対象に、不採算品再算定を実施し、薬価の引き上げを3大臣合意したその日の中医協での一コマである。安藤委員はこの席で、「後発医薬品企業のビジネスビジネスモデル上の課題であるとか、新薬と後発品など取引条件や商品特性が異なる製品を全て同じ薬価改定ルールで扱うことの是非など、本質的な問題を議論し、医薬品の安定供給を巡る問題の根本的な解決に向けた議論を進めていければというふうに思っている」とクギを刺した。

◎「ごく微量」というが、そもそもテルミサルタンとエナラプリルマレイン酸塩は併用注意の成分

問題を起こした辰巳化学は2022年9月2日に、石川県から承認書と異なる製造を行ったとして薬機法に基づく業務改善命令が下された。行政処分では、法令遵守体制の抜本的な改革、組織体制の構築、是正措置および再発防止策に係る改善計画の提出が求められ、同社としても、「二度と同様の事態を引き起こさぬよう関連法令の遵守を徹底し、当局の指示に従い相違の解消に向けて適切な対応を進め、確かな品質の製品を供給することで、患者様とそのご家族様ひいては社会からの信頼回復に向けて誠心誠意努めて参ります」と誓ったばかりだ。

辰巳化学は12月9日に同社工場で製造した一部製品でごく微量の異物混入が確認されたと公表したが、当初はどの製品に異物混入があったのかを公表していなかった。実際にはエナラプリル細粒1%「アメル」のバラ100gからテルミサルタンの成分が「ごく微量」に確認されたことを同社も認めるが、そもそも、エナラプリルとテルミサルタンは「併用注意」の成分であり、辰巳化学にエナラプリル細粒1%「アメル」を製造委託した共和薬品側からは「テルミサルタンはエナラプリルマレイン酸塩と併用注意の成分であり、極めて微量の混入ではあるが安全性への影響を否定できない」として当該製品の自主回収を判断したことを公表している。

◎辰巳化学 12月15日に「製品の出荷についてのお詫びとご案内」(続報)を公開

12月15日に辰巳化学は、「製品の出荷についてのお詫びとご案内」(続報)を自社ホームページの医療関係者向け情報サイトに掲載した。その内容は、「12 月 9 日付でご案内申し上げました件につき、ご関係者の皆様には多大なるご迷惑をお掛けしておりますこと心よりお詫び申し上げます。取り急ぎ流通可能な品目につきまして、別紙にてご案内申し上げます」というアッサリした内容。「弊社と致しましては、石川県監督官庁とも相談しながら、引き続き事態の早期改善に向けて全力で取り組んで参りますので、何卒ご理解とご容赦を賜りますようお願い申し上げます」と結んでいる。

12月に入り、2023年度予算編成作業が佳境を迎え、その度ごとに医薬品の安定供給の問題がクローズアップされた。物価高やエネルギー価格の高騰、円安などの為替変動が製薬業界のビジネスにも影響を与える中で、不採算品目の薬価問題をめぐっても政府与党の国会議員や厚労・財務の官僚、中医協委員、さらには製薬団体も巻き込んでの調整が行われた。

23年度薬価改定をめぐる議論の終盤でよく耳にしたのは、「今回の問題は企業の不適切な対応をきっかけとするものであることからすれば、安定供給が可能となる産業構造やビジネスモデルに再構築していく作業を並行して実施していくことが必須の前提になると考えている」(12月16日・中医協薬価専門部会で診療側・長島委員の発言)や、「特に安定供給につきましては、多くが後発品メーカーの法令違反を発端としており、業界の体質や産業構造そのものを改善する必要があるということは強く指摘させていただく」(同日の中医協薬価専門部会で支払側・松本委員の発言)というもの。行政処分される企業が増え、それが医薬品の供給不安を長期化させている中で、産業構造やビジネスモデルの再構築は、もはや避けられないという空気感が漂っている。今回の薬価措置と引き換えに、企業側もそれぞれの自助努力とビジネス変革を求める声にどう応えるかの重要性が増すことになりそうだ。




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