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有識者検討会 バイオシミラー促進でCMO/CDMO含めた「産業育成」を 患者負担の指摘も

公開日時 2023/01/27 06:19
厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」は1月26日、バイオシミラーの利用促進に向けて議論を行った。国内でバイオシミラーの開発・製造に参入する企業が少ないことが課題として指摘された。初期投資のリスクを低減するために、製造を担うCMO/CDMOの活用も一つの手段だが、日本には実績のあるCMO/CDMOが存在しない。坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)は、「産業政策に関し、今後どのようにバイオ医薬品の開発を促すかということについて議論を進めることが必要だ」と指摘した。

◎続くバイオ医薬品の輸入超過 迫る特許切れで産業育成は喫緊の課題に

日本ではバイオ関連医薬品について現状、大幅な輸入超過となっており、急速に輸入が増加している状況にある。今後、バイオ医薬品の特許切れが近づくなかで、国内でバイオシミラー関連の産業育成は喫緊の課題と言える。

政府は22年6月、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)に「医療費適正化効果を踏まえた目標値を今年度中に設定し、着実に推進する」ことを盛り込んでおり、厚労省の医薬産業振興・医療情報企画課の安藤公一課長は、「当然のことながら目標だけ設定すれば、自動的に達成するわけではない。あわせてどういう対策を打っていくかが重要だ。有識者検討会での議論も踏まえながら、さらに実際に行うべき対策、特に国としてやはり力を入れるべきところについて、しっかりとまとめたうえで、それも合わせて目標設定したい」と説明した。

◎坂巻構成員「極端に言えば国そのものがCMOを作り、運営」も

有識者検討会では、国内でバイオシミラーの開発、製造に取り組む企業が少ない構造的課題が指摘された。薬価収載されているバイオシミラーは107品目(バイオ医薬品全体は508品目)で、国内で製造している製造販売業者は3社(19品目5成分)にとどまっている(23年1月末現在)。さらに、製造の面でも課題がある。世界的には、バイオ医薬品のCMO/CDMO市場は5000億円規模で、今後10年間で年率8%の成長市場で、内資系企業からは国内CMO/CDMOのニーズも高い一方で、国内には実績のあるCMOやCDMOが存在しない。

坂巻構成員は、「国内の製造もさることながら、先発のイノベーティブなバイオ医薬品の特許が切れた後に、そのバイオシミラーを開発しようと意思決定して、自ら開発するという会社自体が非常に少ない。そこが大きな問題だ」と問題意識を示した。そのうえで、「投資リスクが高いのであればCMO CDMを使うことは重要だ。ただ、日本においてCMO、CDMOの実績が全くない」と指摘。「CMOに関しては、例えば承認に関して何らかのインセンティブを取るとか、国内でCMOを使うための仕組み作りを考えるべきだ。極端に言えば国そのものがCMOを作り、運営するというようなことも考えてもいいだろう」と述べた。

香取照幸構成員(上智大総合人間学部社会福祉学科教授)も、バイオシミラーの利用促進の前に、「バイオ医薬品の研究開発や製造、CMOも含め、その体制をどうするかを先に考えないといけないのではないか」と指摘。「産業政策的な視点でバイオシミラーを作れるメーカーをどうやって国内で育てるか。そちらを先に議論しないと、出口がない。すぐには物事が動かない気がする」と述べた。

◎菅原構成員 「オリジナル企業のバイオセイムに集約」も一考

菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)は、「これまでより製造の投資コストがかさむ。しかも投資回収の見込みもなかなか小ロットでは立ちづらいという話になっている。そうすると多くの企業に参入を求める、あるいは促していくということは産業構造的にも産業政策的にもなかなか難しいのではないか」と表明。「自由な参入を促すよりは、むしろ、そもそも作っているオリジナル企業のバイオセイムという形に集約してしまって、そこにある程度原価計算プラスαのような形でのリターンを返すというやり方もあるのではないか」との見解を示した。

◎バイオシミラー進まぬ背景に「患者負担」 先行品の方が低負担の逆転現象も

もう一つの課題と言えるのが患者負担のあり方だ。坂巻構成員は、「バイオシミラーが進まない理由は、その患者の負担がほとんどないところや、モノによっては逆転現象、つまり先行品を使う方がむしろ安くなってしまうようなことがあるためだ。すでに議論されているが、バイオシミラーあるいはジェネリック品もそうだが高額薬剤等の患者負担のあり方について議論する必要があるのだろうと思う」と指摘した。

バイオシミラーの啓発の重要性も指摘された。坂巻構成員は、「バイオシミラーについて国がもっと普及啓発活動に力を入れる必要があるのではないか」と指摘。芦田耕一構成員(INCJ執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)も啓発の重要性を強調。バイオシミラー開発に取り組むのは大手企業が多く、治験を実施して薬事承認を得ていることから、「いわゆる低分子の後発品とは承認までのプロセスが違うわけで、医療関係者や患者さんがどこまで理解されているのかということについては、ちょっと疑問を感じるところだ」と述べた。そのうえで、バイオシミラーの投与が病院、診療所で多いとの見方を示し、「患者さんへの啓発活動ももちろん重要だと思うが、それよりも医師や病院に対する啓発活動の方が重要ではないかと思う」と指摘した。


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