ミクス編集部が医師850人を対象に行った調査の結果、腫瘍内科勤務医の選ぶ最も優れているMRの所属する企業は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)が輝いた。腫瘍内科の腫瘍内科の勤務医50人のうち13票を獲得。2位は12票を集めた中外製薬で、僅差の結果となった。ただ、最初に想起する企業としては、中外製薬が最多の7票を集めており、BMSの4票を上回った。両社のMRに対しては、安全性情報を提供する姿勢に評価が集まった。他の診療科でも、有害事象をはじめ、安全性情報の提供を評価する声が多く寄せられており、医師が求めるMRとなるための重要なポイントとなることも浮き彫りとなった。
文末の「関連ファイル」に、診療科別の「優れているMRが所属する企業」の診療科別上位10社の資料を掲載しました(会員のみダウンロードできます。無料トライアルはこちら)。
調査は、ミクス編集部がエムスリーの協力を得て「医師が求めるMR調査2023年版」として行った。m3.com登録医師のうち、一般内科、循環器科、消化器科、呼吸器科、精神神経科(精神科)、整形外科、皮膚科――の7診療科に、今回泌尿器科と腫瘍内科の2診療科を加えた9診療科の医師に、インターネットを用いて調査した。回答医師数は腫瘍内科を除く8診療科が各100人(開業医/勤務医各50)、腫瘍内科は勤務医の50人で、計850人の医師から回答を得た。調査期間は22年12月23日~23年1月3日。
総合的にみて「この製薬企業のMRは優れていると評価できる企業」を最大3社、自由記載で挙げてもらい、診療科別に集計した。
◎腫瘍内科 第3位はMSD 4位タイは大鵬薬品と武田薬品 安全性情報の提供に評価集まる
腫瘍内科医からの得票数が1位となったBMSのMRに対する評価コメントとしては、「がん種を問わない情報提供」、「適応追加および副作用関連について迅速に、新しい情報を提供いただける」などの声が寄せられた。
2位となった中外製薬のMRに対しては「信頼できる情報提供」、「海外を含む最新情報をいち早く届けてくれる」といった評価があった。1位、2位となった両社はともにオンコロジー領域で長い歴史を有しており、情報提供を通じて医師の信頼感を勝ち得ている姿が垣間見れた。
3位は9票を獲得したMSD。がん免疫療法薬・キイトルーダの情報提供について、「適応や使用方法、副作用などについて詳細に報告してくれる」などの声があった。
4位は大鵬薬品と武田薬品が8票でランクイン。経口抗がん剤のパイオニアとして知られる大鵬薬品だが、具体的な製品名として抗がん剤・ティーエスワンがあがり、「有害事象の情報提供」が有益だったとのコメントがあった。
本調査を通じては、腫瘍内科に限らず他の診療科でも、がん領域製品を扱うMRには“有害事象の情報をしっかり提供できること”がより求められることも浮き彫りになった。安全性情報の提供は、医師から評価されるMRとしての必須要件と言えそうだ。
◎泌尿器科 第1位はアステラス製薬 医師の約半数の支持集める 2位はキッセイ薬品
腫瘍内科とともに今回初めて調査した泌尿器科では、47票を獲得したアステラス製薬が1位に輝いた。2位はキッセイ薬品で、16票を集めた。
1位となったアステラス製薬は有効回答数のうち約半数を占める47票を獲得。第一想起は30票、第二想起は14票と、泌尿器科医からの圧倒的な評価を集めた。前立腺がん治療薬・イクスタンジを中心に尿路上皮がん治療薬・パドセブの情報活動にも評価コメントがあり、「説明が丁寧」、「有効性のみならず、安全性情報や有害事象マネジメントの情報提供が多い」、「比較的公平性が保たれている」――など安全性情報の提供に対する真摯な姿勢が高評価につながった。
2位となったキッセイ薬品は、過活動膀胱治療薬・ベオーバの活動で票数を伸ばした。自社創製の前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬・ユリーフなどで培った泌尿器科領域での強みがベオーバでも生きているといえそうだ。
◎循環器科は第一三共が13年連続1位 消化器科は武田薬品が9年連続1位
このほかの診療科では、一般内科は14票を獲得した第一三共と武田薬品がトップタイとなった。2020年までは一般内科で両社とも30票以上を獲得して高いレベルでしのぎを削っていたが、近年はぐっと票数を落としている。両社とも、重点領域をスペシャリティにシフトしていることに加え、コロナ禍により、強みのフットワークの良さが使えなくなったことが影響したとみられる。実際、今回の「優れているMR」ランキングの診療科別トップ企業の得票数をみると、一般内科が最も少なかった。
循環器科では第一三共が30票を獲得して、13年連続で1位をキープした。主力のリクシアナやテネリア、カナグルの活動を評価するコメントが散見された。前年まで12年連続で2位だった武田薬品は4位に後退した。注力領域から循環器を外した影響とみられる。今回2位はファイザー(23票)だった。
消化器科では武田薬品が24票を獲得し、9年連続1位となった。同社を推した消化器科医の半数以上がタケキャブの活動を評価していた。2位は前年と同じく第一三共(15票)。
◎呼吸器科 AZとGSKの2強続く
呼吸器科では3年連続で1位がアストラゼネカ(AZ、37票)、2位がグラクソ・スミスクライン(GSK、32票)だった。AZは前年から2票増、GSKは4票増とし、3位以下を引き離した。AZはタグリッソやビレーズトリに評価が集中。GSKはテリルジーなどで、「他剤の利点も理解しての情報提供」、「話し方がうまい」といった声が寄せられた。
◎整形外科 旭化成ファーマが2年連続1位 久光製薬が新薬プロモーションで急上昇
整形外科では旭化成ファーマが24票を獲得し、2年連続1位となった。テリボンについての評価コメントが今回も10件を超えたが、得票数は3票減った。2位は17票を獲得した久光製薬。7票伸ばし、前年の第6位から躍進した。整形外科医による第一想起では両社とも10票を獲得しており、久光製薬MRに再び脚光が当たり始めたといえそうだ。久光製薬は今回、21年発売の経皮吸収型持続性疼痛治療薬・ジクトルの活動で評価を伸ばし、「薬品もMRも優秀」などモーラスで培った貼布剤のプロモーションが新薬でも存分に発揮されている。
◎精神神経科 大塚製薬が7連続1位も得票数大幅減
精神神経科では大塚製薬が7年連続1位となったが、得票数は28票で、昨年から14票落とした。同社は第一想起でも第1位となる16票を得たものの、前年から10票減となった。「症例ベースで薬剤の使用方法を懇切丁寧に教えてもらった」などの評価コメントは少なくないが、減少幅の大きさは気になるところ。2位は前年4位の武田薬品で5票伸ばして24票を得た。トリンテリックスに10件超の評価コメントが寄せられた。
◎皮膚科 マルホが2位以下圧倒 多岐にわたる製品のコメント集まる
前年から調査を開始した皮膚科では、1位となったマルホが50票を獲得し、今回も2位以下を圧倒した。第一想起としても32票が集まった。歴史のあるヒルドイドからアメナリーフ、ベピオ、コムクロ、22年発売のミチーガ、ラピフォートまで多岐にわたる製品に評価コメントがあり、丁寧で迅速な対応に多くの皮膚科医が満足しているようだ。2位は16票を獲得したアッヴィと科研製薬がつけた。