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厚労省・城審議官 後発品の安定供給で薬価収載時に「量」の概念導入は一つの形 有識者検討会

公開日時 2023/02/16 06:50
厚生労働省の城克文医薬産業振興・医療情報審議官は2月15日の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で、後発品の安定供給をめぐり、「ジェネリックは置き換え事業なので、必要量はそこそこわかる。薬価収載の時に安定供給の量の概念を入れていくということは一つの形ではないか」との認識を示した。安定供給をめぐっては、厚労省は後発品の製造販売業者に薬価収載後、少なくとも5年間の安定供給を義務付けており、「常に必要な在庫を確保する」ことを求めている。ただ、具体的な量の記載はなく、結果として、少量で生産を継続している企業が増え、多品目・少量生産という非効率な生産体制となっている。

◎厚労省 多品目少量生産の構造的課題示す 制度特性と流通慣行などが要因に

厚労省はこの日の有識者検討会で、後発品の“多品目少量生産”というビジネスモデルの構造的課題を指摘した。新規収載時の薬価は一定程度利益を確保できる水準であることや、共同開発が可能であることで参入障壁が低下。一方で、医療上の必要性の高いものは安定供給継続の義務がある。このため、多くの企業が新規収載品を上市する多品目となる一方、安定供給の義務を守るため、少量でも生産せざるを得ない企業が出てくると説明。多品目・少量生産という「非効率な生産」を行うことで、低収益となり、さらにコストを低減する必要があることから、製造能力の限界に近い稼働状態になると指摘。これに流通慣行や価格による差別化を行うジェネリックのビジネスモデルが追い打ちをかけ、低収益を補うために新規収載品を上市する結果、多品目・少量生産につながる、“負のスパイラル”が発生していると説明した。

この日の有識者検討会では、こうしたビジネスモデルの背景として、安定供給の義務化や共同開発などの制度的課題や、薬価制度上の課題などについて意見が出た。

安定供給の義務をめぐっては、厚労省が安定供給義務を定めた局長通知では、「正当な理由がある場合を除き、少なくとも5年間は継続して製造販売すること」、「常に必要な在庫を確保すること」を求めている。「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」や日薬連の「ジェネリック医薬品供給ガイドライン」では、社内在庫および流通在庫をあわせて「平均2か月以上」を目途に確保することを求めているが、供給不安が続いている状況にある。

◎香取構成員 安定供給義務ルール「企業は自分が供給できない場合は受注しない行動に出る」

香取照幸構成員(上智大学総合人間学部社会福祉学科教授)は、「多品種少量でたくさんの企業があること自体が、安定供給の問題や、製造管理や品質管理の不備につながっていると認識すべきなのではないか」と指摘。安定供給義務のルールについて、「このルールで安定供給を考えたら、どこかの会社が倒れて供給が滞り、発注がワッときたら、企業は自分が供給できない場合は受注しないという行動に出るに決まっている。安定供給義務の中に、例えばボリュームの規定が全然ないわけで、かつ、それぞれの企業はギリギリの製造能力の限界まで生産するという前提でビジネスモデルを作っているとなれば、絶対に安定供給できない」と指摘。「この規定自体が安定供給を阻害すると言ってもいいような話ではないか。これも見直す必要がある」と指摘した。

◎菅原構成員 参入時の供給義務の長期化などハードル上げて、できなければ退出頂く

菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)はジェネリック業界の再編の必要性に言及したうえで、「ドラスティックに再編していくためには短期間で促すための何らかの呼び水的な仕組みは必要だ。そういった意味では参入時の供給義務の長期化や、ある一定程度の供給義務のハードルを考え直して上げていく。それにより、そこから退出していただくというような仕掛けがそろそろ必要ではないか」と述べた。

◎共同開発で香取構成員「これを認める意味、認め続ける意味が本当にあるのだろうか」

もう一つの論点となったのが、共同開発だ。後発品の3割程度が共同開発品であり、現在では新規に薬価収載される品目の半数以上が共同開発品となっている。後発品は薬価収載から10年以内に市場から撤退する品目が多い傾向があり、特に共同開発ではより早期に市場からの撤退を判断する傾向が強いとのデータを示した。

香取構成員は、共同開発により多くの企業が参入したものの、「安定供給につながっているのかを考えると、決してそうはなってない。そう考えるとやはりこれを認める意味、認め続ける意味が本当にあるのだろうか」と指摘。「むしろ諸外国のように必要なボリュームが確保できるだけの企業数、あるいは総量が確保でき安定供給できるような体制の中で適正な競争が起こることで言えば、企業数を一定程度コントロールするというのがあってもいいような気がする」との考えを示した。後発品80%時代となるなかで、「やはりここは大きく考え方を変えていく段階にきているのではないか」と強調した。

◎成川構成員 共同開発「卸にも在庫管理などで負荷をかけている。なにか歯止めをかける必要がある」

成川衛構成員(北里大薬学部教授)は、共同開発により、「銘柄数が増え、卸にもかなり在庫管理などで負荷をかけている。なにか歯止めをかける必要がある」と指摘。「共同開発をすると開発経費が低減される。薬価の初期の価格を別にルール化するみたいなこともあっていいのでは」との見方を示した。

◎品質を確保して安定供給する企業には「薬価面で下支えも」

このほか、成川構成員は品質の確保された後発品を安定供給できる企業に対し、「薬価の面で下支えができればいい」との見解も表明。「基本的には企業の評価というか、品質の確保、安定供給についてしっかり体制を作っている企業に対し、何か報いるような制度ができたらいいのでは」とも述べた。

◎GEのビジネスモデル「産業政策、医薬品政策は、新しいステージ、次のステージへ」

今後のジェネリックのビジネスモデルについて、香取構成員は、「後発品の比率が80%に到達しているということを考えると、全体として、少なくとも後発品に関する様々な産業政策、医薬品政策については、新しいステージ、次のステージに行かないといけないのではないか」と指摘。後発品メーカーが製剤工夫に取り組んでいることに触れ、「できる企業とできない企業と明らかに分かれるはずだ。そういう意味でも後発品企業の数190社というのはどう考えるのかを行政当局として考える必要があるのではないか」と指摘した。また、「後発品企業と言えども、一定規模の企業があって、色々な形で受注生産をしたり、役割分担したりという一種重層的な産業構造というのはある程度頭に置いて考えることが必要ではないか。そういう踏み込んだ産業政策を考えなきゃいけないっていうことなのではないか」と述べた。

◎井上構成員 行政は「他社との差別化を図る多様なビジネスモデルを採用せよとメッセージ発信すべき」

井上光太郎構成員(東京工業大工学院長)は、「ビジネスモデルを行政が示すということ自体に非常に強い違和感がある。そもそも企業の超過利潤というのは他社と異なる戦略や行動、他社と異なる経営資源の投資があって初めて生まれるものだ。各企業が同じようなビジネスモデルを取ればコスト削減、価格競争以外に選択肢はないということになる。むしろ行政としては各社に他社との差別化を図る多様なビジネスモデルを採用せよというメッセージを発信すべきではないか」との見解を示した。

「生産能力の余裕が必要であるとすれば企業規模の適正化に向けた再編を促すべき」との見解も表明。助成金などの政策的なインセンティブによる誘導で、「5年程度の時限措置によって企業再編を促進して、企業規模を拡大させる。これを通して投資力を持たせ安定供給と企業の利益率確保というものを同時に実現する政策ミックスが望ましい」と強調。「これが最終的には、過当競争を緩和することで薬価においても製造業者が一定の価格交渉力を持てる。規模の上昇は当然、価格交渉力の上昇にも結びつくので、そうした一定の価格交渉力を持てる状況を確保する。そうした状況を確保して初めて新規参入者、創薬ベンチャー参入の動機を高める。そうした参入を促して産業全体の新陳代謝を続けながら産業の強靱化を図れないだろうか」と提案した。

◎遠藤座長 業界再編は「厚労省の政策手段では難しい課題」

遠藤久夫座長(学習院大学経済学部教授)は、「業界再編については、厚労省の持っている政策手段の中で積極的に行う、有効に行うというのはなかなか難しい課題だ。それに対してもいろいろとご示唆をいただいた」と応じた。

◎城審議官「後発品の安定供給は期限がないのが本来の姿」 ビジネスモデル「相当変えていかなければならない」

城審議官は、「後発品の安定供給は、長期にわたり、別に期限がないのが本来の姿であってもいいかなというぐらいのものだ。安定的に早期に大量に供給していただくということはせめてやってほしいというのが、この当時の足跡で、そのうえにそれぞれのビジネスモデルをちゃんと確立してほしいということ」との見解を表明。「我々も相当変えていかなければならないだろうと考えている。なかなか手段が即思いつかないが、先ほどいただいたお話も含めてそこをしっかり、考えていかないといけない」と応じた。



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