自民党・創薬力強化PT 製薬産業を「基幹産業」に位置付けを 国家戦略、司令塔機能を提言へ
公開日時 2023/04/11 04:52
自民党社会保障制度調査会の「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム(橋本岳座長)」は4月10日、提言骨子案をめぐり、議論を行った。骨子案では、医薬品産業を基幹産業に位置づけ、司令塔を設置して創薬力強化に向けた国家戦略を策定する方針を打ち出した。アカデミアを含めた創薬エコシステムの育成支援や拠点整備も方向性に盛り込んだ。橋本座長は事後ブリーフで、「日本発の薬が世界で売れて経済に貢献する産業になってほしいとの期待はあるが、今はそうなっていない」と述べ、目指す姿の実現に向けて、政府が一体となってビッグピクチャーを描き、産業を叱咤激励する必要性を強調した。財政論の必要性を認めたうえで、創薬力強化の議論で財政論が先行することに改めて疑義を示した。
◎骨子案 司令塔機能の設置、創薬力強化に向けた国家戦略の策定、拠点形成の必要性も
骨子案では、目指す姿の一つとして、「日本でシーズを見つけ育てる能力(創薬力)を強化し、製薬産業を日本経済により貢献できる基幹産業とする」を掲げた。この実現に向けて、政府において製薬産業を基幹産業として位置づけることや、専門的見地に裏付けられた司令塔機能の設置、創薬力強化に向けた国家戦略の策定、拠点形成の必要性を指摘した。
この日のPTでは、社会保障そのものが厳しさを増しているものの、薬剤費から社会保障財源が捻出する予算編成そのものに問題意識を示す声も出た。「社会保障財源を確保するという問題は間近に迫っている」と危機感を露わにする声や、「保険適用の範囲を含めた財源論のあり方」について議論する必要性を指摘する声もあがり、財政論に踏み込む必要性を指摘する声も出た。
◎橋本座長 課題解決へ「業界の方々と一緒に考えていかなければいけない」
橋本座長は、「国家戦略的や司令塔と言っている一つは、研究開発をどうしていくかということ。そう考えたときに、出口として薬価なども関係してきて、最終的に財政規律をどう考えるかという話になる。私見だが、財政主導で薬のことを考えるから現状になったと思っている。もちろん(財政の話は)大きなネックになると思っているが、それに踏み込む前に、薬が大事だということを言いたいというのが創薬力強化PTそのものの趣旨だ。結果として財政論には触れないといけないと思っているが、いきなり国家戦略として考える話でないと思っている」と述べた。“国家戦略”とすることで、厚労省だけでなく、経産省や文科省など省庁横断型に戦略を立案する必要性も指摘した。
製薬業界に求められるのは、日本発の革新的新薬を創出と医薬品の安定供給実現との考えを示したうえで、「今、なかなかできていない現状がある。支援をしたり、協力していただいたりしながら、克服に向けて当然ながら、業界の方々と一緒に考えていかなければいけない」と述べた。
◎創薬エコシステム、治験環境の整備、医療情報の利活用基盤整備も
骨子案は、「課題」、「目指す姿」、「具体的施策の方向性」から構成。現状認識として、「日本起源の医薬品の減少、世界市場に占めるシェアの減少、輸入超過」、「希少疾病、小児分野等を中心としたドラッグ・ロスの発生」、「高額医薬品による公的医療保険制度の持続可能性への懸念」などの課題認識を示した。
そのうえで、目指す姿として「日本でシーズを見つけ育てる能力(創薬力)を強化し、製薬産業を日本経済により貢献できる基幹産業とする」、「公的医療保険制度を守りつつ、国民が適切な負担でより多くの医薬品が安心して使用できるようにする」を描いた。創薬力強化をめぐる具体的な方向性としては、「医薬品にかかわる国家的戦略の確率と実行体制の整備」、「アカデミアにおいて創薬につながるシーズの研究開発を行う仕組みを含む創薬エコシステムの支援と一気通貫的な強化、そのための拠点整備」を盛り込んだ。
「治験環境の改善、保険者との連携の検討、国際的な連携の推進」、「医療情報の一次利用・二次利用を通じた同意取得の枠組みおよび、情報基盤の検討」、「日本企業の海外展開、および海外企業の国内参入の支援」など、環境整備の必要性も指摘した。このほか、「日本市場の魅力向上に資する薬価制度」として、新薬の特許期間中の価格維持や中間年改定のあり方の見直し、長期収載品などを列挙した。
◎骨子案への異論出ず 5月にも岸田首相に提言へ
この日の議論では骨子案に対する異論は出ず、ガバナンス強化の必要性を指摘する声や、中間年改定の見直しなどを明記する必要性を指摘する声などもあがった。創薬力強化PTでは今後、製薬・医薬品卸の団体や創薬ベンチャー、ベンチャーキャピタルから課題認識などについてヒアリングを行う予定。骨太方針への反映を目指し、自民党総務会での検討を経て、5月にも岸田首相に提言する方針。