AZ・堀井社長 イノベーションを通じて患者さんの人生を変える「そんなNo.1パイオニア企業」目指す
公開日時 2023/04/14 04:52
アストラゼネカの堀井貴史代表取締役社長は4月13日、就任後初の業績発表会見に臨み、「我々が2025年に向けて目指すのは、イノベーションを通じて患者さんの人生を変える、そんなNo.1パイオニア企業だ」と意欲を語った。「単に売上だけで達成できるものではない」とも述べ、同社の掲げる「人々・社会・地球の健康」の実現に向けてチャレンジしていく姿勢を表明。「社会から求められていることに対して、みんなでスピード感を持ってチャレンジできる。それが安心してできるカルチャーを作っていきたい」と語り、イノベーションが生まれるカルチャー醸成に力を入れる考えを強調した。
◎「心から思っているのは“パイオニア”という言葉」 スピード感もってチャレンジできる風土を
同社は25年のビジョンとして、「イノベーションを通じて患者さんの人生を変えるNo.1パイオニア企業」を掲げる。革新的なサイエンスのリーダーであることに加え、患者中心のビジネスモデルのパイオニア、社員から選ばれる働きがいのある職場を柱に据える。
堀井社長は、「私自身が心から思っているのは、この“パイオニア”という言葉だ」と表明。コロナ禍で同社が日本で製造できるまで新型コロナワクチンにチャレンジしたことを引き合いに、「そういったチャレンジ、社会から求められていることに対して、みんなでスピード感を持ってチャレンジできる。それが安心してできるカルチャーを作っていきたいというふうに思っている」と述べた。
そのために、「インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)を我々経営陣が率先してやっていくことで、何となく伝播していくものなのかなと思っている。そんな会社ができたら、今後社会が変化していく中で変わっていくニーズに対してもお応えできるのではないかと考えている」と述べた。特に、インクルージョンの重要性を強調し、「皆が安心して発言できる。そんなカルチャー作っていくことで、最終的には、様々なイノベーティブなアプローチで、まだ解決されてない問題を解決していける。そんな仕事が皆でできたらと考えている」と意欲を示した。
◎「i2.JP」 約320社が参加 20以上のプロジェクトが進行
柱の一つである「患者中心のビジネスモデルのパイオニア」として、ヘルスケア分野のオープンイノベーションのプラットフォームである「i2.JP」に取り組んでいることを紹介した。2020年の立ち上げ以降、約320社が参加しており、20以上のプロジェクトが走っている。
堀井社長は、「実はそんなに大きなことでなくてもいい。患者さんは普段のちょっとしたことで困っている。患者さんの家族がお困りで、そのちょっとしたお困りが改善されることで、患者さんを取り囲む生活が良くなることは本当にたくさんあると感じている。これを一個一個見つけて、色々な人が一緒に集まって解決策を出すことが大事だ」との考えを示した。「当然ながら、患者さんが困っていること(ペインポイント)は、必ずしも薬だけではない」とも述べた。具体的には、疾患の認知度が向上することで早期診断、治療につながることを例にあげ、「イノベーションは、一つのことに限らず、様々な部分で起こしていきたい。日本ならではのきめの細かさなどで発見をし、ベストプラクティスができれば、日本から発信していきたい」と意欲を見せた。
◎22年国内売上高 前年比17%増の約5300億円 恒常為替レートベースでは39%伸長
AZ日本法人の2022年(1~12月)の売上高は、前年比17%増の41億1000万ドル(約5300億円)。恒常為替レートベースでは39%伸びた。オンコロジーが7.1%、循環器・腎・代謝疾患(CVRM)が14.2%、呼吸器・免疫疾患が15.9%伸長。22年9月に新設したワクチン・免疫療法も含め、「成長ドライバーは4疾患領域全て」と強調。「我々が日本、日本の患者さん、そして社会のニーズにきちんとお答えすることができた。そしてパンデミックの中でも、安定して製品を切れ目なくお届けすることができた結果」と胸を張った。
◎22年は12の承認取得 日本は「非常に重要な市場」
特に、22年は抗がん剤・イジュド、直接経口抗凝固薬中和剤・オンデキサ、重症喘息治療薬・テゼスパイア、新型コロナ治療薬・エバシェルドの新薬4剤を含む12の承認を取得したことが貢献した。堀井社長は、「今までの歴史の中でも、本当にエポックメイキングな年だった。大変忙しかったが、本当に嬉しい忙しさを経験させていただいた1年だった」と述べた。IQVIAのデータを引き合いに販売会社ベース(卸店に対する製品販売)で18年の23位から22年に4位にまであがったことを紹介し、「様々な組織の力をつけて、直接卸さんとより大きな取引ができるようになった」と述べ、日本市場でのプレゼンスが向上していることにも自信をみせた。23年には、「5~7」の申請を見込むことも明らかにした。
同社にとって日本市場は、米国、中国に次ぐ第3の市場であることも紹介。比率としても9.3%を占めており、医薬品市場全体の日本の占有率を上回っていると説明。「アストラゼネカ(グローバル)にとって日本の市場は、昨年も非常に大きな貢献をしており、これからも非常に重要だと捉えている」と述べた。なお、グローバル全体では前年比19%増の443億5100万ドル(約5兆7000億円)。営業利益は前年比256%増の37憶5700万ドルに伸びた。