第一三共 エスファ全株式を大手調剤・クオールHDに250億円で譲渡 人員、経営体制は維持
公開日時 2023/05/16 18:05
第一三共は5月16日、調剤薬局を展開するクオールホールディングスと第一三共エスファ(以下、エスファ)の全株式を譲渡する契約を締結したと発表した。同日の取締役会で決議した。第一三共が保有するエスファ株式の51%を2024年4月1日までに段階的に譲渡し、残り49%の株式譲渡実行日は別途協議して決める。譲渡価額は計250億円。エスファの従業員数は345人で、このうちMRは約200人だが、クオールHDは子会社化後の人員削減の可能性について否定し、維持する姿勢も示した。
◎人員や経営体制は維持 患者の声を製品開発に最大限活用を 新規事業にも期待感
買収の目的についてクオールHDは、「エスファと当社グループの情報やノウハウを共有することで付加価値の高い医薬品の開発や、オーソライズド・ジェネリック(AG)を中心とした顧客ニーズに応える製品を生み出すことにより、医療貢献と事業発展につなげることを目的としている」とコメント。新規事業の創出にも触れ、「今後両社事業の融合による新たなビジネスの検討を進め、医薬品の開発力や安定供給等の強化を図っていく」とし、「中核事業である保険薬局事業とともに、グループ総力を挙げた総合的な医療サービスを提供する企業として発展し、社会に貢献していく」とした。
子会社化した後のエスファの人員削減の可能性について、クオールHD広報部は本誌に対し、「全くない。維持する」と述べた。現在の経営体制も「現状を維持する」方針。傘下の調剤薬局に寄せられる患者の声を製品開発などに最大限活用してもらいたいと期待感を示した。エスファの強みであるオーソライズド・ジェネリック(AG)に関しては、「市場から強く求められている。クオールグループにかかわらず、ニーズのあるところにこれまでと同様、広く展開していく」とコメントした。
◎第一三共「企業活動の強化が必要」と判断
第一三共は今回の譲渡について、エスファのさらなる成長のためには、「企業活動の強化が必要」(第一三共広報部)と判断したと説明した。エスファとクオールの事業のシナジー効果により、顧客ニーズを踏まえた製品開発や、調剤薬局の在庫などを踏まえた生産計画・安定供給の強化につながるとした。健康関連市場へのアクセス強化など新規事業の創出も期待でき、中長期の成長につながるとの結論に至ったと説明した。
エスファの23年3月期業績は、売上高787億円(前年同期比22.3%増)、営業利益128億円(18.3%増)。取扱製品は86成分218品目で、AGはオルメサルタンやロスバスタチンなど18成分ある。「第一三共エスファ」の社名は当面変更しないが、全株式譲渡後に社名を変更する可能性もある。