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スタチンの重大な副作用に「重症筋無力症」を追加 添付文書を改訂

公開日時 2023/07/21 04:50
厚生労働省医薬・生活衛生局は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬)を含有する医薬品の「重大な副作用」に「重症筋無力症」を追加する添付文書改訂を指示した。また、新型コロナ治療薬・ゾコーバ錠の「重大な副作用」に「アナフィラキシー」を、新規の2型糖尿病治療薬・マンジャロの「重大な副作用」に「アナフィラキシー、血管性浮腫」を、それぞれ追加することも指示した。

◎ゾコーバ 因果関係否定できない症例は1例だが「緊急承認品目として遅滞ない安全対策措置が重要」

ゾコーバに関しては、本剤とアナフィラキシーとの因果関係が否定できない症例は1例だったが、PMDAは「異物である本剤に対するアナフィラキシーの発現は潜在的リスクとして自明であり、緊急承認品目として遅滞ない安全対策措置が重要である」として、「さらなる症例集積を待たずに、使用上の注意を改訂することが適切と判断した」としている。

添付文書の改訂指示があった医薬品は次の通り。

〈HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品〉
アトルバスタチンカルシウム水和物(販売名:リピトール錠(ヴィアトリス製薬) 等)
シンバスタチン(販売名:リポバス錠(オルガノン) 等)
ピタバスタチンカルシウム水和物(販売名:リバロ錠、同OD錠(興和) 等)
プラバスタチンナトリウム(販売名:メバロチン錠、同細粒(第一三共) 等)
フルバスタチンナトリウム(販売名:ローコール錠(サンファーマ) 等
ロスバスタチンカルシウム(販売名:クレストール錠、同OD錠(アストラゼネカ) 等)
アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物(販売名:カデュエット配合錠(ヴィアトリス製薬) 等)
エゼチミブ・アトルバスタチンカルシウム水和物(販売名:アトーゼット配合錠(オルガノン) 等)
エゼチミブ・ロスバスタチンカルシウム(販売名:ロス―ゼット配合錠(オルガノン))
ピタバスタチンカルシウム水和物・エゼチミブ(販売名:リバゼブ配合錠(興和))

改訂概要:「特定の背景を有する患者に関する注意」(新記載要領)又は「慎重投与」(旧記載要領)の項に、「重症筋無力症又はその既往歴のある患者」を追記する。「重大な副作用」の項に、「重症筋無力症」を追記する。

PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「重症筋無力症」、「眼筋無力症」の国内症例の集積状況:医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は、アトルバスタチンで1例(うち死亡0例)。

改訂理由:重症筋無力症についての国内外の症例、公表文献、及び国内外のガイドラインを評価し、専門委員の意見も聴取した結果、以下の内容を踏まえ、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。 
1)国内副作用症例において、HMG-CoA還元酵素阻害薬(以下、「スタチン」)と重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められていること。
2)公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例等、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていること。
3)公表文献において、WHO個別症例安全性報告グローバルデータベース(VigiBase)において不均衡分析を行い、スタチンの重症筋無力症に関する副作用報告数がデータベース全体から予測される値より統計学的に有意に高かった(報告オッズ比[95%信頼区間] = 2.66[2.28-3.10])との報告があること。また、PMDAで実施したVigiBaseの23年5月23日時点のデータセットを用いた不均衡分析においても、同様の結果(重症筋無力症:IC025= 0.9、眼筋無力症:IC025 = 1.7)が示されたこと。
4)国内外のガイドラインで、重症筋無力症において注意を要する薬剤としてスタチンが記載されていること。

エンシトレルビル フマル酸塩(販売名:ゾコーバ錠(塩野義製薬))

改訂概要:「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を追記する。

PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「アナフィラキシー関連症例」の国内集積状況:医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は1例(うち死亡0例)。

改訂理由:アナフィラキシー関連の国内症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤とアナフィラキシーとの因果関係の否定できない症例は1例であるものの、異物である本剤に対するアナフィラキシーの発現は潜在的リスクとして自明であり、緊急承認品目として遅滞ない安全対策措置が重要であると考えたことから、さらなる症例集積を待たずに、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。

チルゼパチド(販売名:マンジャロ皮下注(日本イーライリリー))

改訂概要:「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー、血管性浮腫」を追記する。

PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「アナフィラキシー関連症例及び血管性浮腫関連症例」の集積状況:医薬品とアナフィラキシー関連症例との因果関係が否定できない国内症例は1例(うち死亡0例)、海外症例は8例(うち死亡0例)。医薬品と血管性浮腫関連症例との因果関係が否定できない症例は国内症例0例、海外症例6例(うち死亡0例)。

改訂理由:アナフィラキシー関連症例の国内及び海外症例、血管性浮腫関連症例の海外症例を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、アナフィラキシーについては、本剤との因果関係が否定できない国内及び海外症例が集積したこと、また、血管性浮腫については、本剤との因果関係が否定できない海外症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。

ミノサイクリン塩酸塩(販売名:ミノマイシン顆粒、同錠、同カプセル、同点滴静注(ファイザー) 等)

改訂概要:「重大な副作用」の項の「全身性紅斑性狼瘡(SLE)様症状の増悪」を、「ループス様症候群」へ変更する。また、長期投与例における当該事象の発現に関する注意喚起を追加する。

PMDAにおける副作用等報告データベースに登録された「ループス様症候群関連症例」の国内集積状況:医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は3例(うち死亡0例)。

改訂理由:ループス様症候群関連の国内症例のうち本剤投与後に当該事象が発現した症例及び公表文献を評価した。症例の因果関係評価及び使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、本剤とループス様症候群との因果関係の否定できない国内症例が集積したこと、及び当該事象の発現は長期投与例で多い傾向が認められたことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
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